#3 吸血鬼はコンビニでプリンを買って帰り道で転んで泣いた3
「おはようみんな! 今日も月詠以外は全員出席だな! 先生は嬉しいぞ!」
思い出した。
月詠夜宵、幻のクラスメイト。
聞くところによると彼女は一年の終わり頃から学校に来ていない、いわゆる不登校らしい。
俺は二年から彼女と同じクラスになったものの、六月になる今日まで一度も学校に来た姿を見たことがない。顔すら知らない。
俺のように今年から彼女とクラスメイトになった人間達にとって幻の存在。
そんなわけで、ついたあだ名が幻のクラスメイトというわけだ。
あの子が月詠夜宵ならば、平日の朝でありながら学校に行く様子が無かったことも納得が行く。
やがて朝のホームルームが終わり、担任教師が退出すると教室内が賑やかになる。
今朝の失態を思い出しながら、俺はスマホを操作しツイッターを見る。
そういえば、ヴァンピィさんは結局どうしてるんだろうな。
まあいつもなら寝てる時間だと思うが。
そんな風に思いながらタイムラインを確認する。
すると丁度、その当人の呟きが表示された。
『公園で弱そうなガキに絡まれてプリン潰れちまったけど、返り討ちにして泣かせてやったぜ』
めっちゃイキってるやん、この人。
正直、このツイートを見て俺の中に一つの疑念が生まれた。
さっき公園で会った少女は自身がヴァンピィであることを否定したが、プリンが潰れたという符合が気にかかる。
やっぱり、さっきのあの子――恐らくは月詠夜宵がヴァンピィさんなんじゃないのか?
俺はその真偽を確かめるために、彼にDMを送ってみる。
下手をすれば身元バレに繋がる話題なので、第三者から見えないDMの方がいいと思ってのことだ。
『どうも、弱そうなガキです。さっき転んだ時の痛みは大丈夫でしたか?』
そんなメッセージを送り少し待ってみると、返事はすぐ届いた。
『えっ! 待って、さっきのは、ひょっとして』
かなり驚いているようだ。
あの時、俺は自分のハンドルネームを名乗らなかった。彼女からすれば俺が誰だか分らなかったのだろう。
『違うぞヒナ。キミは何か勘違いしている。あるいは人違いというべきか』
すぐに取り繕うような返信が来たが、それには構わず俺は畳みかける。
『まだ本調子でないようなら、学校が終わってからお見舞いに行きますね』
『いやいや、来なくていい。何、勘違いしてるんだ? 俺は怪我とか一切してないからな!』
その返事を見て、俺は苦笑した。
この人、なんか可愛いな。本当に誤魔化すのが下手だ。
『本気で誤魔化したいなら、ヒナは俺の家を知らないだろ、って言うべきでしたね。お陰で僕は貴方の正体に確信が持てました』
これはもうヴァンピィさんが月詠夜宵で確定と思ってよいだろう。
『え、えっと、あのね、本当に、来なくていいから、平気だから』
とうとう、いつもの男言葉ではなく、素の喋り方になって俺の訪問を取り下げさせようとする。
俺はそんな彼女の反応に苦笑しながら、『放課後を楽しみにしていてください』と送るのだった。
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