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#28 ヴァンピィの秘策1

 トラップマスター・タイガーマスク。

 近接戦闘を得意とするバトルスタイルながら、設置系のトラップで相手の動きを制限し、真綿で首を締める様に少しづつ少しづつ敵を追い込んでいく。

 ツイッターなどはやっておらず、その正体は不明。

 そんな謎に包まれたプレイヤーがダブルスランキングにいる、と夜宵も噂くらいは聞いたことがあった。

 噂は間違っていなかった。その強敵を前にして、夜宵はタイガーマスクこと虎衛門の強さを肌で感じ取っていた。


「これでトドメっすよ!」


 大河忍者の三本爪がジャック・ザ・ヴァンパイアを襲う。

 ジャックは何とか剣でそれをいなしつつ後退するも、足元でガラスの割れる耳障りな音が響いた。

 また、撒菱を踏んでしまった。

 ジャックの隣に浮かぶ人魂に刻まれている数字は2。そして今、撒菱を踏んだことでさらにカウントが進む。

 いよいよ数字は1まで減った。

 それを見て琥珀は上機嫌に言葉を投げつける。


「しぶといっすね。でも追い詰めたっすよヴァンピィ! あと一回でも撒き菱を踏めばアンタは終わりっす!」

「私は」


 夜宵は歯を食いしばる。

 ここで負けるわけにはいかない。自分が負ければ、ヒナは虎衛門とたまごやきの二人を相手にしなければならなくなる。

 負けられない。ヒナの相棒として、彼の役に立ちたい。

 そして彼と一緒に優勝したい。


「私は、負けない」


 絶体絶命の崖っぷちに立たされながらも、夜宵の瞳はまだ闘志を宿していた。

 そして彼女の頭脳は冷静に今の状況を分析する。

 大河忍者の特性(スキル)を思い出す。

 頭部特性(ヘッドスキル)魔鬼火死(まきびし)。虎の被り物をした口から光線を吐き出し、地面にガラス製の撒菱をばら撒く能力。

 右腕特性(ライトスキル)葬送爪牙(そうそうそうが)。三本爪による攻撃を行う。

 脚部特性(レッグスキル)怪踏乱打(かいとうらんだ)。Lボタンを連打し続ける間、行動速度が上がり続ける。虎衛門の持つ連射コントローラーはこの能力を最大限に引き出していた。

 そこまで考えて夜宵は気付く。


(まだ左腕特性(レフトスキル)を使ってない?)


 そんな彼女の思考を見透かしたように、琥珀は言った。


「そろそろパワーゲージも溜まってきたっすね」


 マドールはそれぞれパワーゲージを持っており、試合開始時にはゼロパーセントのそれは、試合中にコマンド操作をするごとにゲージが溜まっていく。

 ゲージが百パーセントまで溜まると、マドールの必殺技である切札特性(ジョーカースキル)を使うことができる。

 また百パーセントに満たなくても、他のスキルの発動条件に関わってくることもある。

 琥珀は連射コントローラーを使っている分、その自動連射だけでも勝手にパワーゲージが溜まっていくのだ。


 夜宵はステータス画面で相手の特性(スキル)を確認する。

 今まで左腕特性(レフトスキル)を使わなかったということは、発動条件を満たしていなかったということだろう。

 そして特性(スキル)説明を読んで夜宵は納得した。

 大河忍者の左腕特性(レフトスキル)、それは。


「パワーゲージが五十パーセント以上の時、左腕特性(レフトスキル)は発動可能となるっす。さあ、これを見て驚くがいいっす! 忍法! 隔霊魅(かくれみ)の術!」


 琥珀がそう宣言すると同時に、虎の被り物を被った忍者の姿が次第に透明になり空気に溶けていく。

 これが大河忍者の左腕特性(レフトスキル)。己の姿を完全に消してしまう。

 地面を蹴る足音が響いた。

 大河忍者の姿は見えない。だがその足音だけを頼りに夜宵は判断し、攻撃のタイミングを読み切って剣を振るう。

 その剣が相手の爪を受け止めた手応え、そして衝突音が響く。

 なんとか今の一撃は凌いだが、姿の見えない相手とこれ以上まともに戦えるわけもない。

 ジャックは大河忍者に背を向け、森の中を駆けだした。


「ふん、逃がさないっすよ」


 遅れて琥珀の操る忍者がその後を追う。

 夜宵は森林フィールドを改めて見下ろした。

 これまでの戦いで地面には大量の撒菱が転がっている。

 透明なガラス製とはいえ、よく目を凝らせばそれは十分視認できた。

 集中して操作すれば、なんとか撒菱を踏まないように移動できる程度には。

 そして夜宵は、これまで大河忍者と戦った場所、より多くの撒菱が落ちている道を選んで逃げ続けた。

 だがその後ろから姿なき追跡者が迫る。

 例え透明になっても、足音から大体の距離は把握できる。

 相手はもうすぐジャックに追いついてくる。

 なんせ脚部特性(レッグスキル)怪踏乱打(かいとうらんだ)によって相手の移動速度はこちらの数倍まで加速しているのだ。

 この程度の距離など、すぐに追いついてしまうだろう。

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