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#12 周りからはどう見える?

 スイーツが美味しいと話題の喫茶店に入り、夜宵はプリンパフェを、俺はブラックコーヒーを頼み、それぞれテーブルに運ばれてくる。

 流石に夜宵も女の子、美味しそうなパフェを前に目をキラキラ輝かせてるのを見ると、来てよかったと思う。

 そんな風に思いながらコーヒーに口をつける。


 苦っ! ブラックコーヒーにっが!

 カッコつけ過ぎたかもしれん。せめてミルクとか入れるべきだった。

 いや、いっそジュースとかにすべきだったかも。なんで俺ブラックコーヒーとか頼んだの? そういうのがカッコいいと思うお年頃なの?


 それにしても、夜宵とこうして過ごしてわかったことだが、彼女はとても大人しい女の子だ。

 あのヴァンピィさんと同一人物とは思えないくらい。


「ねえ、ヒナ」


 そう思ってると夜宵は周りをチラチラと気にしながら話しかけてきた。


「ここって、多いよね」


 多い? はて、なにがだろう?

 夜宵の視線を追って俺も店内を見渡す。

 そういえば、男女の組み合わせが多いな。

 学生らしき人から社会人くらいの人まで、カップルで来てる人がとても多い。


「やっぱ多いよね、敵が」

「て、敵?」


 夜宵の言葉に耳を疑い、聞き返してしまった。

 彼女は怖いくらい真剣な瞳でこちらを見つめる。


「忘れたの? ヒナ、リア充は敵だよ。一人残らず爆破しなきゃ」


 あっ、この人、間違いなくヴァンピィさんだわ。


「私、今日は爆弾持ってきてないけど、ヒナは持ってる?」

「まるでいつもは持ち歩いてるみたいに言わないで! そして俺を同類みたいにしないで!」


 夜宵も朝に比べて緊張がほぐれてきたのか、言葉に詰まらず言えるようになってきた。

 言ってる内容は物騒極まりないが。


「リア充め、爆発しろ。リア充は全員爆破しないと」


 なんか呪詛の様にブツブツと呟き始めたぞ。


「なにも喫茶店に来てるだけでそんな目の敵にしなくても。ほら、周りから見たら俺達もリア充みたいに見えるかもだし」


 俺がそう言って宥めると、夜宵はキョトンとした顔を見せる。


「私と、ヒナが、リア充?」


 言葉を復唱し、その意味を脳が理解するまで数秒。

 あれっ、俺ひょっとして失言した?

 かああああ、と夜宵の顔が瞬時に赤くなる。

 それを見て俺は先手を打って謝った。


「ごめん! 今のナシ! 忘れて! ただいま不適切な発言があったことをお詫びいたします!」

「ひ、ヒナ! 何言ってるの? 私達がリア充なんて、そんなのリア充爆殺委員会の会員としてあるまじき発言だよ!」

「何その物騒な委員会! 俺もその委員会に入ってるの?」

「ヒナは会長だよ。でもトップの汚職が発覚なんて私は悲しい。私の手でヒナを制裁しないと」


 知らん間にトップに据えられて、知らん間に汚職したことになっていて、知らん間に制裁を受けることが決定したらしい。理不尽である。

 でも、こんな馬鹿馬鹿しいやりとりが楽しいと思った。

 ツイッターでのやりとりそのまんまのふざけた会話。

 最初こそお互いの距離感を掴みかねたけど、やっぱり相手は気心知れたヴァンピィさんだ。

 この人と絡むのは楽しくて心地いい、それは昔から変わらない。


「わかったわかった。反省してます。俺達は非リア。非リアの誇りを胸に抱え生きていきます」

「わかってくれた? 私も、ヒナも、絶対にリア充になんかなったら駄目なんだからね」


 そう念を押されたのだった。

 そんな感じで寄り道をしつつも俺達は目的のショッピングモールに到着。

 目についた洋服屋に入り、夜宵の服を見繕う。


「こ、これ、どうかな?」


 夜宵が照れた様子で試着室から出てくる。

 夏らしい黒のフリルキャミソール姿だ。


「おお、やばい! めっちゃ可愛い!」

「そ、そんな、ヒナ大袈裟過ぎる」


 俺の過剰なリアクションに夜宵が恥ずかしそうに縮こまる。

 いや、実際可愛いんだから仕方ない。

 肩紐がリボン結びになってるのとかキュートだし、露出した肩と腕が眩しい。

 今日は試着だけで、沢山の可愛い夜宵を見ることができて眼福だ。


「折角だからそれ、プレゼントするよ」


 そう提案すると夜宵は困ったように顔を背ける。


「そ、そういうのはいいよ。今日、友達と服を見に行くって言ったらお母さんが喜んで沢山お小遣いくれたし」


 そうは言っても、ここは男として格好つけたいところでもある。

 実を言えば俺だって、今日女の子とデートだって言ったら父さんが大量の軍資金をくれたのだ。


「じゃあ、一着だけ。今日の記念に一着だけでいいから俺に奢らせて。

 今着てるその服、俺も気に入ったから、次また一緒に遊ぶ時に着て欲しいなっていう願いも込めて」

「次も、また、ヒナとお出かけ?」


 熱に浮かされた様子で夜宵はそう復唱する。

 どさくさに紛れて次も出かける前提で話してしまったが、むしろそれが功を奏したようで。


「わかった、一着だけね」


 照れくさそうに俺の要求を受け入れてくれた。

 可愛いなちくしょう。

 本当に夜宵は全ての仕草が、全ての表情が可愛すぎる。

 もう脳内では可愛いしか言ってないし、語彙力が死んでるが、夜宵が可愛いのが全部悪い!

面白かったと感じていただけたら、ページ下にある☆を沢山つけてブックマークをしていただけると嬉しさで作者の執筆モチベが大幅に上がります。

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