#115 闇を切り裂く光
ラビット・バレットは両手に光線銃を構え、コズミック・ドラグオンと対峙する。
配信画面のコスモは楽しそうに笑いながら、コントローラーを握る。
光流もまたガンショット・コントローラーを構えてテーブルに投影された立体映像に狙いを定めた。
「左腕特性、天罰の雷!」
言葉と共にウサギガンマンが左手に持つレーザーガンから一筋の光線が吐き出された。
それは真っ直ぐにコズミック・ドラグオンへ向かっていく。
天罰の雷を受けたマドールは三~六秒間、停止状態になり操作不能になる。
この攻撃を許すわけにはいかないだろう。
そこでコスモは嬉々として言葉を吐き出す。
「左腕特性、自動発動! ブラックホールシールド!
宇宙に潜む深遠なる闇よ! 全ての光を喰らい尽くせ!」
青の竜皇が左手を突き出すと、そこに闇色の球体が生み出される。
暗黒球はすぐにドラグオンの体を隠すほどに巨大化し、重力を発生させ周囲の草木を飲み込んでいく。
ラビット・バレットの放った天罰の雷も例外ではなく、ブラックホールの重力に引き寄せられ、暗闇に吸い込まれてしまう。
そのまま光線は闇の中に消える。
しかしここまでは想定通り。光流はニヤリと笑いながら続く言葉を紡ぐ。
「そう、ブラックホールシールドは敵の攻撃に反応して自動でブラックホールを発生させます。
しかしそのブラックホールは同時に一つしか存在できません! 今なら死角への攻撃が通ります!」
「へー、面白い。死角なんてどこにあるんだ?」
期待するようにコスモは口の端を持ち上げる。
ラビット・バレットとコズミック・ドラグオンの間には巨大なブラックホールが陣取っている。
一見すれば、ドラグオンへの攻撃は全て闇色の球体に吸い込まれてしまいそうだ。
高威力の攻撃であればブラックホールを破壊することもできるが、光属性攻撃は威力に関係なく問答無用で無効化されてしまう。
そこで光流が再度ガンショット・コントローラーの引き金を引く。
「右腕特性、天罰の光!」
ラビット・バレットの右手の銃が光線を吐き出す。
それはブラックホールよりも大分右側に逸れた方角に放たれた。
これだけブラックホールから離れていれば重力に引きずり込まれることもない。
しかし同時にコズミック・ドラグオンの立ち位置からも見当外れな方向に光線は飛んでいく。
それを見てコスモは愉しげに言葉を吐き出す。
『大外れだね、手元が狂ったのかな?』
「いいえ、私の銃は絶対に狙いを外しません!」
光流はそう言い放つ。
そう、本番はこれからだ。
天罰の光は何もない空間を飛んでいく。
このまま進めば地面へと追突しそうだ。
しかしその光線の向かう先の土の上で何かが光った。
「あれは?」
怪訝そうに眉を顰めるコスモ。
そして次の瞬間、地面にぶつかった天罰の光は方向転換して、コズミック・ドラグオンの背後へ迫る。
「光線が反射を!? しまった! 水晶の魔法使いの置き土産か!」
それに気付きコスモが動揺を見せる。
そうだ。水晶の魔法使いは多層水晶壁により、十枚の鏡の壁を出現させ守りを固めていた。
その壁はグランドランス・ユニコーンに全て打ち砕かれたが、鏡の破片はこの周囲の地面に無数に転がっているのだ。
その破片に天罰の光を反射させ、相手に死角からの一撃を叩き込むのが俺達の秘策。
この日の為に光流と水零が練習した連携技だ!
「これがラビット・バレットの奥義! 天罰の反射鏡です!」
光流が威勢よくそう吐き出す。
コスモは咄嗟にコントローラーを操作し、回避を試みるが、元々パワータイプのドラグオンは回避能力が低く設定されている。
防御手段をブラックホールシールドに頼っていた奴は、背後からの一撃を躱すこともできず――
天罰の光が青き竜皇の背中を貫いた!
「くっ、やるな! ひよこちゃん!」
悔しさと嬉しさの混じった顔で、ニヤリとコスモは笑う。
対して光流も微笑みを返す。
「これでコズミック・ドラグオンは五秒間の停止状態になりました。
ここからは、ずっと私のターンですよ!」




