#104 エキシビションマッチスタート!
通話を切ったところで、俺は一息つく。
「お疲れ様ヒナくん。完全にアウェーで戦うかと思ってたけど、見事に味方を作ってくれたわね」
ハンドルネーム呼びに切り替えている水零のねぎらいに俺は相槌を返す。
「ああ、それよりいよいよ対戦開始だ。準備しよう」
その言葉を皮切りに、各々が持ち寄ったゲーム機、Standをテーブルにセッティングし始める。
本来はゲーム画面が表示されるスクリーンをテーブル中央に向け、そこに立体映像を映し出した。
テレビモード、携帯モードに続くこのゲーム機の第三の遊び方。それがこのスタンドモードだ。
それぞれのゲーム機の距離をもっと開けることで大規模な立体映像を楽しめるが、今回はテーブルの上という小規模な範囲で映像を投影している。
テーブルにバトルフィールドが展開され、俺達五人はそれを囲みながら作戦を再確認する。
「バトルフィールドの南端にいるのがゴールデンクイーンマドール。俺達が守るマドールだ。
そして北端の存在するこいつがゴールデンキングマドール。敵の王将であり、こいつを倒すのが俺達の目的だな」
トランプのキングとクイーンをモチーフにしたような二体のゴールデンマドールを指して俺はそう説明する。
「なんで、ゴールデンマドールのデザインが違うんでしょうね? サッカーもバスケもゴールの形は両チーム同じなのに」
「将棋だって王将と玉将の違いがあるからな。そういうもんだろ」
「な、なるほど」
俺の雑な説明に光流は釈然としない様子ながら納得してみせる。
そして作戦確認を続ける。
「ウチの先発メンバーは予定通り、俺、ヴァンピィ、水姫で行く。ひよこと虎衛門はベンチで待機だ」
自陣のゴールデンマドールのそばには三体のマドールが待機している。
赤い鱗と炎の翼を持つ西洋竜。俺のプロミネンス・ドラコ。
黒マントとタキシードに身を包んだ銀髪のイケメン吸血鬼。夜宵のジャック・ザ・ヴァンパイア。
白いローブを纏うピンク髪の魔法使いの少女。水零の水晶の魔法使い。
先発マドールのスタート地点は自軍のゴールデンマドールの近辺となる。
つまり最初は味方同士が固まっているわけだ。
そして相手の先発メンバーも確認する。
コスモ、クロリス、グランパの三人らしい。
俺は夜宵に言葉を向ける。
「バトルフィールドの東側三十パーセントは夜の時間になってる。夜のフィールドを得意とするジャック・ザ・ヴァンパイアにはここを通って、敵陣に攻め込んでもらう」
「おっけー、わかったよ」
彼女はそう言って両手を握り締めた。
「俺もプロミネンス・ドラコでヴァンピィを援護する。移動速度ではジャックには及ばないが、プロミネンス・ドラコは遠距離攻撃ができるからな。
ゴールデンキーパーの水姫はゴールデンマドールのそばに待機して、敵を迎撃してくれ」
「うん、任せて」
水零が頷くと、PC画面の中からコスモの言葉が響く。
『じゃあそろそろ準備はできたかな? 始めるぜ』
通話をオンにして、俺も言葉を返す。
「いつでもかかって来いよ。こっちはもう待ちくたびれてんだ」
その答えに、コスモはニヤリと笑って見せた。
『なら行くぜ! バトルスタートだ!』