こうしてまたひとつ
漏れそう
ザ、ッザザーーー
すーばーらしーいあーさがきた♪っと
サークル顔合わせの翌日。
時刻は11時、本日も快晴也!ベッドから降り立つと顔を洗い、キッチンへ向かう。
さぁてと朝ごはんでも作ろうかな!
「あたし目玉焼き」
「はいよ」
ジューーー……………ん?
「何故貴様がそこにいる」
「ベッドがひとつしかなかったからよ」
既視感
「質問が悪かった。なんでおれの部屋にいる」
「昨日焼肉が終わって、きみが私になんの断りもなしにソッコー帰った後、晶の家で飲んで帰れなくなったから?」
「なんで、家に帰るのにあなたの許可がいるんですか?というか田中先輩のおうちにそのままお泊まりすればよかったのでは?」
「こっちの方が居心地よかったから」
さいですか。
あれ?鍵は?
「鍵かけてたと思うんですけど」
「ドアの郵便受けのとこ。鍵入ってるかなって思って腕突っ込んでたら入ってた。」
え?あの隠し場所、万国共通なの?発見した時おれは閃きの天才かもしれないとまで思ったのに…
「きみ、ズボラそうだしね。」
「そのきみってやつ、ネタかなんかですか?」
「私の鉄板なの」
君さんがきみってか、しょうもな。
目玉焼き潰してやろうかな?
黄身だけになんつって!
「どうぞ」
「うむ、ご苦労」
テーブルに2人分の朝食を並べて床に座る。やっとこいつもベットから出てきやがった。
「」
「どした?」
「いいえ、別に….いただきます。」
そゆこと。
「あんたはバイトしないの?」
朝食の片付けをしていると、ベットに戻り、タオルケットにくるまっているミノムシから尋ねられた。
「仕送りというか当分の貯金があるんでいまは考えてません。」
「いいねぇ、羨ましい。私は今日も居酒屋でバイト。焼肉屋に行く途中であったんだけど、あれよ。」
いやどれよ。こっちは子牛さんプレイしてたから覚えてねぇよ。
「楽しそうでいいじゃないですか、いろんな人と出会えて。」
おれもバイト始めようかな…この大学じゃ友達できなさそうだし、
すると、小さく、
「いいことだけとは限らないよ」
ぼそっと喋るな。聞こえんわ。こっちは皿洗ってんだぞ。
「うちから近いんですね」
適当に話を合わせる。なぜかって?上官に2度同じことを言わせてみろ。悪・即・斬だ。
あってたっけ?
「だからこれからもくるから」
は?「は?」
突拍子もない返答に思わず唖然とする。
「『は?』ってなによ。こんなにカワイイ先輩がお家に泊まりに来るのよ。嬉しいでしょ」
こいつ素で言ってるんだったらイカレだな。
どうもこの人、少し様子がおかしい。
だが、おれが知ったこっちゃない。
さすがに我慢の限界だ。そして思わず
「もう一度言いますけど、いままどおり田中先輩のお家にお泊まりしたらどうですか」
「なにそれ。どういう意味。」
「別に」
どうやら、というかやっぱりウィークポイントだったようだ。
彼女はさっきまでのおちゃらけた態度とは打って変わり、今は、ベッドに腰掛けてすごい形相でこちらを見て、いや睨んでいた。
「晶から聞いたワケ?いつの間に?」
「田中先輩からはなにも聞いてないですよ。もちろん、黒澤先輩からも」
「へぇ…じゃあ、誰があんたにそんな告げ口をしたわけ?」
「今度は答え方が悪かったですね。誰からも聞いてないですよ。おれがそう思っただけです。」
淡々と答える。皿を洗いながら。
「真剣に質問してるんだけど?手を止めたら?」
案の定でした。ちょうど洗い終わったからいいけど。
「本当ですよ。きっと咲さんも気づいたんじゃないですか?あのテーブルに座れば誰だってそう考えますよ。」
「じゃあ質問を変えるけど、さっきの皮肉は?」
「皮肉というと?」
「いままでどおりってところよ。あんた意味わかってんの?」
「それ、答える必要ありますか?というか皮肉の意味を聞きたがるなんて、特殊性癖すぎるでしょ。そんなんだから」
おっと、これ以上はおとなげ、もとい可愛げがないかな。俺まだ十代のお子様だし、
沈黙。
すると彼女に動きがあった。急にスッと立ち上がり、昨日の夕方には、持ち合わせていなかった大きな荷物を持つと
「あんたに友達がいない理由がわかったわ」
「そうですか、それは是非ご教授願いたいですね。」
「絶対教えてやんない」
そう言い残して、彼女は去っていった。
こうしてまたひとつ貴重な機会を逃した。
夜のトイレって何歳になっても怖いよね