こころのなかに
うっひょー
ガシッ
首根っこを掴まれる。
4限目の終了と共に帰路につこうとしたところを目撃され、そのまま捕獲の流れになった。
うっかり山を降りてしまい、街に出てきてしまった猪の気分。
そういえば、捕まえるまでは報道されるのに、捕まえたあと一切報道されないのはなんでだろ〜〜〜〜♪……晩飯は豚汁だな。
「また後でってあなたが言った気がするんだけど」
「だから今遭遇したじゃないですか。有言実行、初志貫徹ですよ。」
「それ使い方合ってるの?」
さぁ?しらん。
「で、まさか帰るつもりじゃないでしょうね」
「帰りますよ。まだ16時なんで」
授業もないのに3時間弱も学校では潰せない。その点、おうちに帰ればおねんねできる。そして
『ごっめーん。寝坊しちゃった!キャピ』
とメッセージのひとつでも送ればいいだろう。ま、連絡先は消したがな。
「帰るのはいいけど寝坊はダメよ」
こいつの異常な勘の良さはなんだろう。ここまで来ると第六感の存在を疑わざるを得ない。
「全身全霊を持って努力します」
「目覚ましかけなさいよ」
「うち時計ないんで」
「スマホの機能にあるでしょ」
「使い方わからないです」
「あんたネアンデルタール人なの?」
「せめて新人にしてください」
キリがないので止めていた足を再び動かし始める。立ち止まるな歩き続けろ。マナもそう言っていた。
するとどうだろう。後ろからずっと足音が聞こえてくるじゃあありませんか。
怖いなぁこわいなぁと思いながら振り返ると
「なにしてんすか」
「暇だからついて行こうかと思って」
きた道を戻る。確かあのあたりに交番が…
ガシッ
「俺猫じゃないんで、首根っこ掴まないでください」
「子猫のここを親猫が噛むのは、しつけの意味合いもあるらしいわよ」
いやぁ!調教されちゃう!!
「ついてきても何にも面白いのはないですよ」
「私あそこのクレープ食べたい」
おっと〜。ヘイパス!言葉のキャチボール。
奢ってもらった。ウマウマ
「へぇー、ここがきみんちか。まぁ普通だね。」
歩いて15分の距離なのに、今日は倍近くかかってしまった。クレープめ。
「それじゃあまた後で」
??なぜ首を傾げている??
「あがっていくけど?」
「Why」
「その顔殴りたくなるからやめなさい」
おっと俺の眠れる外国の血が。知らんけど。
純度100%とか聞いてないから多分数滴くらい入ってんだろ。果実100%ジュースもよくわからんの入ってるし
「入室料はさっき払ってあげたでしょ」
し、してやられた。こいつに慈愛の心があるわけないと知っていたのに!
「吐き出せばチャラになりますか」
「そうまでしてみられたくないものでもあるのかな??」
と俺をおちょくる姿勢に入る。
今どきの若者がエロ本など持っているわけないだろ。俺が今どきの若者とズレていることは最近思い知ったがな。
しかし、ご近所さんに部屋の前で女連れの姿はあまり見られたくはない。仕方ない。一宿一飯の恩ってやつだ。
ガチャりと鍵を開けたと同時に
「おっじゃましまーす!」
先に入られた。俺が家主なのに。
「意外と綺麗ね。きみのことだからゴミとか溜まってそうだなって思ってたんだけど」
「あながちハズレじゃないですよ。昨日がゴミの日だったんで」
「テレビにベットに冷蔵庫にテーブルがひとつって生活感皆無なんですけど」
怪訝な顔をされる。
「このゲーム機があれば事足りますからね」
「あたしもスマホゲームするけど、ゲーム機っていいきる人は初めて見たよ」
「じゃ俺もう寝るんで、テレビでもなんでも好きにしてください」
とそこまで言い切って、ベットにダイブする。これ以上コイツに貴重な睡眠時間をけずられるわけにはいかない。
「おーい」
「ぐぅ……zzz」
「さて、エロ本は」
「やめろ!」
大切な物は心の中にしまっておけ!
がんばりぼん