54. 追放された者 9
焚火を囲んでの食事は、それなりに充実したものだった。クライドとオースティンは干し肉などの保存食と交換するため、残った肉を村に持って行くらしい。残ったライリーとベラスタ、そしてエミリアは食事の後片付けをし、寝るための準備を整える。そして一段落着いたところで、ライリーはどこか遠慮がちなベラスタに声を掛けられた。
「あのさ、ちょっと良いかな」
「ベラスタ? ああ、何かな」
ライリーは穏やかに答える。他の誰にも聞かれたくないことらしく、ベラスタは少し離れた場所で、と言い出した。勿論問題はないと、ライリーは立ち上がるとベラスタと共に天幕がある場所から離れる。
木々の合間に身を潜めるようにして、ライリーは立ち止まるとベラスタを振り返った。
「どうしたのかな」
改めてベラスタに向き合ってライリーは尋ねるが、ベラスタは言い澱む。珍しいこともあるものだとライリーが思いながらも根気強く黙ってベラスタが話し出すのを待っていると、少ししてベラスタは意を決したように口を開いた。
「その、リリアナちゃんのことだけど」
普段から兄ベン・ドラコがリリアナのことを親しく呼んでいるせいで、ベラスタもどうしてもその呼び名が口に出てしまう。そしてリリアナも、そんなベラスタを咎めない。そもそもベラスタがリリアナの名を呼ぶことがあまりないのだが、リリアナ自身、大して気にした様子がなかった。
ライリーの眉がピクリと動く。リリアナはそれほど他人と親しく付き合わない。そのため、リリアナのことを“リリアナちゃん”と呼ぶ人物はそれこそベン・ドラコくらいなものだ。勿論、ベン・ドラコとリリアナが魔術に関して意気投合し、切磋琢磨する間柄だとライリーは知っている。だからベン・ドラコがリリアナのことを親しく呼ぶことは気にならないのだが、ベラスタに関してはどうしても心が狭くなってしまう。
しかし今はその点について咎める時ではないと、ライリーは苛とした気持ちを無理矢理抑え込み、ベラスタに続きを促した。
「サーシャが、どうかしたのかな」
「執務室で殿下とオースティンと、それからオレを転移させたのは彼女で間違いないと思うんだけどさ」
「ああ」
ベラスタの言葉に、ライリーは頷く。その点は、ライリーもベラスタと同じ意見だった。だが、どうやらベラスタには他に何か言いたいことがあるらしい。それもオースティンやクライド、エミリアには伝えられないと思っているようだ。
それが何か分からず、ライリーはベラスタの様子を窺う。
一方のベラスタも、酷く緊張していた。以前のベラスタであれば、大して気にもせず気軽に気が付いたことを口にしていただろう。だが魔力に関することは非常に重要であり、他人が気軽に口にして良いものではないと、ベン・ドラコにはきつく言い含められていた。立太子の儀でエミリアに会った時、迂闊にも彼女の適性が光魔術にあることを言おうとした後、ベンは不味いと思ったのか、ベラスタへの教育を厳しいものにした。
「本当はオレが言う話じゃないと思うんだけど、彼女の魔力がなんていうか――ちょっと妙? というか」
「妙? どういう風に?」
勇気を出してようやく告げたベラスタの言葉に、ライリーは一瞬喉を掴まれた気分になった。口が渇く。嫌な緊張感が、体に走り抜けた。
元々、リリアナの魔力量は多い。だが人間の体が耐えられる魔力量には上限がある。それを越えてしまえば、命を落とす。その可能性をベン・ドラコに示唆された時のことは、つい先日のことのように覚えていた。だからライリーはリリアナが生き長らえられるよう、対策を打って欲しいとベン・ドラコに持ちかけた。だが、ベン・ドラコが作った魔道具も結局は焼け石に水のような状態で、リリアナの魔力が異常増幅している根本的な原因を取り除くことはできていない。
その後、リリアナが魔力暴走に似た状態に陥り、体調不良になったという話は聞いていないが、いつ体調を崩すか分からない状態だった。それを知っている人物はライリーとオースティン、そしてベン・ドラコの三人だけだ。当然、彼らは他言するような人間ではない。
緊張を押し隠して平然と尋ねるライリーを、ベラスタは上目遣いで一瞥し直ぐに気まずそうに視線を逸らす。
「いや、オレの気のせいかもしれないんだけど――魔力がさ、ちょっと変な風になってるんだよな。最初会った時――確か一年前? 立太子の儀の時に見た時はちょっとした違和感だけだったんだけど、最後に執務室で見た時、やっぱり勘違いじゃなかった気がして」
「ベラスタ、悪いがもう少しはっきりと言ってくれないか。何が分かったんだ?」
ライリーは逸る気持ちを抑えてベラスタに尋ねた。ベラスタは小さく息を吐く。そして意を決したように、口を開いた。
「元々、あの人の魔力って何に適性が一番高かったか、知ってる?」
「――風、だ」
ベラスタの問いに、一瞬躊躇ったライリーは正直に答える。婚約者候補だった時に、その程度の情報は公爵家から知らされていた。
そしてベラスタは「やっぱり」と頷く。しかし次に顔を上げた時、彼の表情は険しくなっていた。
「オレもそう思う。少なくとも、一年前の立太子の儀の時はまだ風の魔力だなって分かった。でも――何でか理由は分からないけど、執務室で一番強く感じたのは闇の魔力だった」
「――闇?」
ライリーは瞠目する。しかしベラスタは真剣な表情で、冗談を言っているようには見えない。
「そう。といっても全部闇だったわけじゃないぞ、風の魔力もあるにはあったんだ。それだけでも十分量は多かったけど、でも闇の力の方が風を上回ってた。闇の魔力持ちなんて滅多にいないけど、でも光魔術の適性が高い人よりは多少多い。だからオレも見たことはあるけど、その誰よりも強くて、それで――禍々しい感じだった」
よくあれで体調が悪くならないものだと思うよ、とベラスタはどこか疲れたように呟いて肩を落とす。
ライリーは言葉も出なかった。しかし彼の脳内は目まぐるしく回転している。
一年前は風の魔力が強かったが、今はそうではなく闇の魔力が強くなっている、という事実。
そして最近になって、魔王の封印が解け始めていることが分かった。
この二つを結び付けて考えてしまうのはあまりにも軽率だろうかと自問自答しながらも、どうしてもライリーの脳裏ではその二つに何らかの関係があるのではないかと思えて仕方がない。
「あとさ」
ベラスタはそんなライリーの様子には気が付かない様子で、更に言葉を重ねる。
リリアナに闇の魔力があるということが、一番口にすることを躊躇う内容だった。本来であれば兄ベンの言う通り、他言するような内容ではない。しかし、今の状況を考えれば黙っている方が問題になるのではないかと思えてならなかった。
政略や謀略に興味もなく人の悪意に疎いベラスタであっても、ライリーたちの会話を聞けばある程度のことは分かる。フランクリン・スリベグラード大公が王位に就けばスリベグランディア王国の未来は暗いことも、その大公を支持している貴族たちの謀略にライリーだけでなくオースティンやベラスタが巻き込まれてしまったことも、そしてその中の重要な位置にリリアナが居ることも、何となくではあるが理解した。
そしてベラスタは、そのリリアナが恐らく隠していたのだろう秘密に気が付いてしまっている。
オースティンやクライドはリリアナが大公派に寝返ったと信じていて、良い印象を抱いていない。一方、ライリーはリリアナが自分を裏切っていないと信じていた。だから、ベラスタはただ一人、ライリーにだけ自分の気が付いた真実を告げることにした。
ライリーは難しい表情で考え込んでいたが、ベラスタの控え目な言葉に首を傾げる。
「他にもなにか?」
「うん。これも、だいぶ昔のことだからオレの勘違いかもしれないんだけど」
「構わないよ」
他言はしないからとライリーに促され、ベラスタは過去の記憶を辿った。
「五年前だっけ、王都の近くで最大規模の魔物襲撃が起こったことがあっただろ。あの時さ、オレとタニアと、それからペトラの三人で森に居たんだ」
「森?」
「そう、もう本当に瘴気の真っ只中だよ」
突然変わった話題にライリーは一瞬戸惑ったが、すぐにベラスタが言った災害を思い出して頷く。
その時はライリーの生誕祭を開いていた。リリアナが幻術を使い行方を晦ましていた時だ。
「ペトラは兄貴と一緒に開発した魔道具で、魔物襲撃を沈静化しようとしてた。でもオレとタニアを守ったせいで、怪我して動けなくなったんだ」
本当にあの時は駄目かと思った、と言うベラスタの顔色はわずかに青い。平気そうな態度ではあるが、多少なりとも当時の記憶はベラスタの心に傷を残している様子だった。
そして話を聞くライリーも、思わず顔を顰めそうになる。瘴気の中で怪我を負うということは、即ち死を意味する。そして説明が足りない中でも、瘴気と怪我、という二つの単語から、ベラスタたちが魔物に襲われたのだということも容易く想像できた。
「そこにさ、ローブ着た人が突然現れて、オレたちを王都の屋敷まで飛ばしてくれた」
「飛ばした?」
「そう。その時はオレ、何も思わなかったんだけど。魔物を倒してペトラに治癒魔術を掛けてくれて、それから転移の術を使ってオレたちを逃してくれた」
だからペトラは勿論、ベラスタやタニアも助かったのだと付け加える。そして、ベラスタの話を聞くライリーの表情は強張っていた。しかしベラスタは話すことに夢中で、ライリーの変化には気が付かない。
「その時のオレって世間知らずでさ、まあ今もそうなんだけど、兄貴とかペトラが転移の術使ってたから、それが当然なんだって思ってた。だからそのローブの人も、兄貴とかペトラより多少腕は立つかもしれないけど、まあそこら辺に居る魔導士の一人なんだろうって思って」
そりゃ感謝はしたけど、というベラスタに、ライリーは様々な意味で言葉を失っていた。
ペトラ・ミューリュライネンでさえ大怪我を負う魔物を前に健闘し、治癒魔術と転移の術を軽々と使う相手が一般的であるわけがない。ベン・ドラコやペトラ・ミューリュライネンという天才が周囲に居るとはいっても、ベラスタの常識は世間の非常識だった。
そして同時に、ライリーはこの先ベラスタが告げるであろう話を簡単に予測できた。あまりにも突拍子もないことだと人は言うかもしれない。しかし、あまりにも状況証拠が揃いすぎていた。
――――リリアナはあの日、幻術で姿を晦ましていたのだ。
ライリーは知らず、体の脇に下ろした両手を握りしめる。
「でもその後、魔導省に入ってソーンさんにも色々教えて貰って、もしかしてとんでもない魔導士だったんじゃないかって思ったんだ。ただその時はまだ確信が持てなかったんだけど」
だが、ベラスタはずっと違和感を覚えていた。
「一年前、立太子の儀で会った時に、魔力の質が似てるなとは思ったんだ。でもちょっと違うかなって思った。オレたちを助けてくれたローブの人の魔力は確かに風の適性が高かったけど、純度が高かったから。でも、立太子の儀の時に見たリリアナちゃんの魔力は、ローブの人よりも魔力量が増えてて、粘度が上がってる感じがした。色も少し暗めになってたし」
だから立太子の儀の時に、ベラスタは思わずリリアナを凝視した。その結果ベン・ドラコたちに置いて行かれそうになったことも、鮮明に覚えている。
しかし当時は気のせいだと思った。魔力の質が似ている人は居ないことはない。リリアナもベラスタたちを見て顔色を変えなかったから、全く無関係の人間だとその時は考えた。
「でもさ、もし年々闇の魔力が増えてるんだとしたら、多分リリアナちゃんがオレたちを助けてくれた張本人で間違いないと思う。オレがこっちに飛ばされた時の転移の術に使われてた術式が、少し変わってはいたけど、五年前のと基本骨格は同じだったんだ」
ベラスタの話は、どうやらそれで終わりらしい。口を噤んだベラスタは真剣な顔でライリーを見上げた。
ライリーの顔色は今や真っ白だ。しかし暗がりの中では、間近に立つベラスタにもそれほど違和感は持たれない。そもそもベラスタも、全ての勇気を使い果たした気分で、ライリーの様子を気に掛ける余裕は残っていなかった。
「そうか。とても重要な情報だよ。ありがとう。でも、このことは他の誰にも言わないでくれるかな」
「当然」
全ての動揺を押し殺してライリーは穏やかに告げる。すると、ベラスタは力強く頷いた。
「本当は、他人の魔力のことは言ったらいけないって言われてたんだけど、でも殿下には言っても――いや、言わなきゃいけないんじゃないかって、思ったから言ったんだ。誰にも言わない」
ライリーは目を瞬かせる。ベラスタが言っても良いものか逡巡していたことには気が付いていた。しかし、これほどまで強い意志があるとは思っていなかった。
「何故、私になら言っても良いと思ったのかな」
「だって、」
問うたライリーに、ベラスタは静かに答えた。
「闇の魔力持ってる人が少ない理由、オレ、兄貴に聞いたことがあるんだよ。そしたら、闇の魔力って元々は魔王とか魔族が持っている力に限りなく近いものらしくてさ。人間にとってはすごく強くて、扱い辛い魔力なんだって」
それは光の魔術と似ていると、ベン・ドラコはベラスタに教えたという。
光の魔力も闇の魔力も、他の魔力より少ない量で大きな結果を出せる。しかしそれは人間が簡単に溺れることのできる力でもあった。
二つの違いは、術を行使した時に得られる結果の違いだ。光は創造や修復を、闇は破壊と消滅を司ると言われるほど、対極に位置している。
「世間では光の魔術を使える人が聖人で、闇の魔術を使える人は魔物に近いというか、危険な人間だって思われがちだけど、実はそうじゃないらしいんだ」
「――つまり?」
「闇の力に飲み込まれずに使いこなすには、自分の感情に飲み込まれずに常に己を制御する必要がある。そう言ってたんだ」
光の魔力を使える自身に酔ったとしても、その力は破滅には向かない。ただ力の大きさに圧倒され肉体と魂が滅びることはあっても、力の行使自体で自分自身や周囲が破壊されることはない。実際に、魔物襲撃を浄化する聖魔導士が扱っている魔術は光系統だが、どれほど激しい魔術を行使しても人間や動物、植物に悪影響を及ぼすことはない。ただ扱う魔力量が多いと術者に負担がかかるというだけの話だ。
一方で、闇の魔力はそうではない。闇の魔力を用いた魔術は基本的に破壊や消滅、ひいては死に繋がるものが多い。他人の精神を操る禁術も闇魔術の一種だが、それは他人の精神を破壊することによって行うものだ。そして、闇魔術の行使は他者だけでなく術者にも影響を及ぼす。たとえ体や魂が耐えきれるだけの魔力量しか使っていなかったとしても、適切な使い方をされない限り、闇魔術の効果は術者に及ぶ。そして術者もまた、体や魂をすり減らして生きていくことになる。
それを回避するためには、術者の精神的な修養が肝要だと言われていた。自分の力に溺れず、そして崇高な魂を持ち続けること――そうでなければ術者の体か魂のどちらか、もしくは両方が気付かぬうちに摩耗していくのだと、ベン・ドラコはベラスタに教えてくれた。
「見た限りだけど、彼女は普通の人と全く同じだよ。それに、魔力もうまい具合に闇と風が混合していたんだ。基本的には風の魔力が闇の魔力の外側を覆ってる感じかな。だからオレも、彼女が術を行使するまではっきりと気付けなかったんだけど」
普通にしているだけでは、そして魔術を行使しても簡単な術であれば、リリアナの体内にある闇の魔力は表出しない。風の魔力に覆い隠され、ベラスタのように敏感な者以外には決して感知できないほどに隠されている。
しかし、転移の術は高度な魔術だ。だから、隠されていた闇の魔力が見える形になり、ベラスタも気が付いた。
「そこまで制御できてるってことは、彼女の志が崇高で、欲がないってことなんだよ。その彼女が殿下たちを逃したってことは、きっと殿下を守りたかったんだと思う。オレは政治には詳しくないけど、でも、大公が王様になったらダメだってのは、リリアナちゃんも知ってるんだろ?」
それならば、リリアナがライリーを裏切るはずがない。
そう自信満々に断言するベラスタを、ライリーは呆然と眺めていた。ベラスタはそんなライリーに、にっかと笑ってみせる。
「だからさ、オレは殿下なら言っても良いかなって思ったんだ。闇の魔力があるなんて、良い印象は持てないだろ? だから、オースティンとかクライドとかに言っても悪く思われそうだから。でも、本当はそうじゃないんだって、殿下なら分かるかなって思って」
ベラスタは、リリアナに対し怒りを抱いているオースティンやクライドに上手く話せる自信もなかった。それにそもそも、このような個人情報は気軽に言いふらして良いものでもない。
だがライリーはリリアナを信じている様子だったし、何より婚約者だ。それならば言ってしまっても良いのではないかと、ベラスタは単純にそう考えただけだった。
ライリーは微笑む。上手く笑えている自信はなかった。
「――そうか。ありがとう」
辛うじて礼を言う。王太子として教育を受けて来たお陰で、声は震えなかった。それでも今、エミリアたちの元に戻る気にはなれない。
「先に戻って居てくれないか。私は少し、ここで考え事をしてから戻るよ」
「うん、わかった」
幸いにもベラスタは違和感を覚えなかったらしい。素直に頷くと、踵を返して焚火の方へと向かう。その音を聞きながら、ライリーは近くの木に背中を預けた。その場にしゃがみこみ、顔を覆う。
リリアナが隠して来たことを、凡そ知れたと思う。全てではないだろうが、それでも何となく、リリアナが何を考えたのか、理解できたような気がした。
「――――サーシャ、」
震える声で、婚約者の名を呼ぶ。
何故自分に全てを教えてくれなかったのか、頼ってくれなかったのかと嘆く声が心の内にある。同時に、頼ろうと思える存在になれなかった自分自身の不甲斐なさに悔しさが込み上げる。
それでも間違いなく今のライリーの心に溢れているのは、安堵に似た感情だった。
リリアナが本当に自分を裏切ったのだとは、思っていなかった。それでもオースティンやクライドの態度に、不安は付きまとう。毅然として立ち、自分だけは最後までリリアナを信じていると、態度だけではなく心の底から示さなければと鼓舞することは、予想外にライリーの精神を疲弊させていた。
「良かった」
だからこそ、ベラスタの話はライリーにとって闇の中に差し込む一筋の光だった。自分は間違っていないのだと、背中を強く押された気持ちだった。
まだ何一つとして解決はしていない。それどころか、リリアナの体内にあるという闇の力がどこから来たものか、考えるだけで嫌な予感に苛まされる。
しかし、自分の進むべき道が誤っていないのだと確信できるだけで、心持ちは随分と違う。これから先、何があっても迷うことはないだろう。
あとは自分がすべきことを為すだけだ。そして王国に戻った暁には、リリアナと話をする。これまでのライリーは、リリアナの心を尊重するという言葉を言い訳に、彼女の心の中に踏み込むことを恐れていた。近づきすぎて拒絶されるのが怖かった。それでも、もう今は違う。リリアナが何を考え、何を想い、何を願っていたのか。
心を開いて語り合いたいと、ライリーは強く願った。
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