表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢はしゃべりません  作者: 由畝 啓
第一部 悪役令嬢はしゃべりません
200/563

30. 遊戯の前触れ 8


贅沢なほど蝋燭を使った室内には、三人の男が座っていた。質は良いが落ち着いた服装の男はメラーズ伯爵、贅を凝らした派手な身なりの年嵩の男はスコーン侯爵、そしてその二人よりも豪奢な一人掛け用の椅子に腰を下ろしている若い男はフランクリン・スリベグラード大公だった。

三人を前にして、報告を持って来た部下は気の毒なほど蒼褪め冷や汗を流している。不快感を露わにしているのはスコーン侯爵だけだったが、メラーズ伯爵は冷徹な光をその双眸に浮かべ、そして大公は呆れ顔を隠していなかった。


「ただでさえケニス辺境伯家の青二才とクラーク公爵家の若造が王宮と騎士団を引っ搔き回していたというのに、更には近衛騎士にもだと? 一体何をしているのだ」

「――ま、誠に申し訳なく……」


スコーン侯爵に責め立てられた男は気の毒に小刻みに震えている。命が目の前の権力者たちに握られていると思えば、不興を買うことは死刑宣告にも等しいのだろう。

メラーズ伯爵もまた侯爵と同じように齎された報告に苛立っていたらしく、固い口調で「謝罪で済むと思っているとは、嘆かわしい」と不平を口にした。


「“立太子の儀”まで時間もない。そのため王太子に相応しくないと知らしめることが重要なのだ。それにも関わらず、差し向けた刺客も間諜も悉く近衛騎士に防がれるとは何事か」

「は、いえ、万全を期していると――」

「万全? 万全を期して、大切な人手を捕らわれたとでも言うのか? 手緩い仕事のようにしか思えないが」


しどろもどろに答える男だが、メラーズ伯爵は容赦がない。この場に居る者は皆、王太子ライリーの求心力をどうにかして削りたいと目論んでいた。

以前は、ライリーを積極的に支持する貴族はそれほど多くなかった。英雄と呼ばれた先代国王の威光が強烈だったこともあり、どうしてもライリーは取るに足らない王子に見えたのだ。

実際、当時はライリーを優しく真面目だと評する貴族が多かった。だが、それは裏を返せば決断力に弱く融通が利かないということでもある。そして当時のライリーは、小賢しくないものの全てにおいて無難にこなしこれといった特技もない子供に見えていたのだ。悪政は強いないだろうが、賢王にもならない。王家の家系図には残るが歴史書でも埋もれるような、そんな国王になるだろうと予想されていた。


だが、今は違う。年を重ねたライリーは優しさはそのままに、冷静に状況を把握して国を導く君主へと近づいていた。そのせいかエアルドレッド公爵家を筆頭にアルカシア派はライリーを支持すると表明し、先代当主を失ったクラーク公爵家やケニス辺境伯といった面々も王太子派となっている。

大公派としては由々しき事態だ。

そのため、警告も兼ねて王太子や側近候補に刺客を送り込んだりしているのだが、なかなかこれと言った成果は上がらない。それどころか差し向けた者たちが悉く近衛騎士たちの反撃に遭い、命を落としたり投獄されたりしている。

指示を出しているメラーズ伯爵は勿論、大公にも捜査の手が伸びないよう手は打ってあるものの、万が一を考えれば捕まること自体があってはならない事だ。その上、刺客や間諜が見つかる度に王太子周辺の警備は厳しくなっていく。最近では、手持ちの駒では王太子に近づくことすら難しくなっていた。


「――もう良い。お前は下がれ」


メラーズ伯爵が冷たく言い放つと、男は一礼して慌てたように部屋を出る。扉が閉まったところで、伯爵は手元にあった鈴を鳴らした。途端に屋根裏から人影が音もなく降り立つ。そちらを一瞥すらせず、伯爵は短く指示を出した。


「あの男を始末しろ」

「御意」


短く答えた影は再び姿を消す。深く溜息を吐いた伯爵は、その瞳から剣呑な光を消した。そしてずっと無言を貫いていた大公に視線を向ける。


「閣下。部下の不始末、誠に申し訳ございません。新たな策を考えたく」

「まあ良い」


大公は薄く笑みを浮かべた。酷薄な表情だが、元々の顔立ちが整っているせいか酷く妖艶に見える。

メラーズ伯爵は大公の発言の意図を読めず眉根を寄せた。大公はテーブルから葡萄酒の注がれたグラスを手に取り、香りを楽しむように鼻先で揺らしながら言葉を続けた。


「大禍の一族に依頼すれば、それほど時間もかからんだろう。それに()()でも俺の甥だからな。少しくらい夢を見させてやっても良いだろうよ」

「つまり、諸国の来賓に王太子殿下の地盤が揺るぎないものであると、そう認識されても構わないと仰るのですか?」

「たとえそう認識されたとしても、死者には国を任せられんだろう? 兄上に関しては、そちらが済んでから対処すれば良い」


薄く笑った大公は葡萄酒を飲む。つまり彼は、たとえ“立太子の儀”でその地位が確固たるものであると国内外に示したところで、死んでしまえば無意味だと言っているのだ。そして邪魔な王太子を排除した後に国王を殺害するなり、廃位し療養に追いやるなりすれば良いという考えだ。

大公の意図を汲み取ったメラーズ伯爵は静かに笑みを零した。


「仰る通りにございます。それでは王太子殿下には、一夜限りの夢を見て頂くことにいたしましょう」


“立太子の儀”は恙なく終わらせてやれば良い。だがその後王太子に降りかかる不幸がどの程度のものなのかは、誰も分からない。


「大禍の一族への依頼はお前たちに任せるぞ」

「御意」


大公の言葉に、メラーズ伯爵だけでなくスコーン侯爵も神妙な面持ちで首を垂れる。侯爵と伯爵は一瞬、互いを一瞥した。二人の視線が空中で交差するが、葡萄酒を嗜む大公は気が付かない。


一通りの話し合いを終えてスコーン侯爵とフランクリン・スリベグラード大公がそれぞれの屋敷に戻って行った後、メラーズ伯爵は苦々しく一人溜息を吐いていた。


「全く、能のない連中が妙な色気を出すから始末に困る」


そもそもスコーン侯爵や大公が口を出すから、無駄に王太子へ刺客を差し向けることとなったのだ。その結果、王太子の身辺警護が厳重になっているのだから本末転倒である。


「軽々しく一族を使えば良いなどと――何も知らん口が、良く言うわ」


大禍の一族――その存在を知らない高位貴族は居ない。特に先王の時代に起こった政変を経験している貴族は、一度は耳にしたことのある暗殺集団だった。

メラーズ伯爵は元々外交官であったこともあり、一族についてはある程度理解していた。即ち、大禍の一族の大元を辿れば必ずユナティアン皇国の皇族に辿り着く。一族を便利に使うのであれば良いが、下手に使いすぎれば皇国の間諜を身の内に自ら招き入れてしまうことになり兼ねない。


「劇薬も使いすぎれば身を滅ぼすというのに――まったく、己の欲にかまけて国を蔑ろにしては、手に入るはずだった権力も名声も富も、全て灰燼に帰すことに気が付いていないらしい」


メラーズ伯爵から見れば、スコーン侯爵や大公は同じ穴の狢だ。私利私欲に惑わされて物事の本質を見抜いていない。その点、今は亡きクラーク公爵は伯爵にとって信頼に足る相手だった。

残り少ない葡萄酒を全てグラスに注ぎ、伯爵は窓辺に近寄る。窓の外に輝く月を見やり目を細め、伯爵は苦く独り言を漏らした。


「――惜しいお方を亡くした」


その言葉を聞く者は、いなかった。



*****



“立太子の儀”を半月後に控えた日の夜、マルヴィナ・タナー侯爵令嬢は怒り心頭だった。


「何で! 何で私が参加できないのよ!」

「お嬢様は既に隣国に嫁がれることが決まっております。此度の“立太子の儀”に参列はする必要がないと侯爵様のお考えにございます」

「私は同意していないわ! 私はこの国の王太子妃になるべき女なのよ!?」


近々開催される“立太子の儀”の噂をマルヴィナが知ったのは、侍女たちの雑談だった。どうやら侯爵である兄ショーンはマルヴィナを“立太子の儀”に参加させるつもりなど一切なく、そして茶会の存在を知れば参加したいと妹が駄々をこねることを見越して情報を伏せていたらしい。だが普段から外で他家の使用人たちと会っては情報交換をする侍女たちの口までは塞ぐことができなかった。そもそも彼の常識として使用人は“人間”として換算されていないのだが、そのせいでマルヴィナは現在癇癪を起こしている。

そして早々にマルヴィナ付きの侍女が匙を投げたため、屋敷を取り仕切っている家令が冷ややかな面差しでマルヴィナを見下ろしている。普段は癇癪を起こせば侍女たちが思い通りにしてくれるというのに、家令は全く怯まない。その事に更に苛立ちを煽られながら、マルヴィナはきつく家令を睨みつけた。


「お嬢様は隣国に嫁がれることが決まっております。王太子妃になるなど世迷い事を仰れば謀反を疑われ極刑に処せられる可能性もあります。軽率なご発言はお慎みください」


体裁だけは敬語を保っているが、発言の内容はマルヴィナにとって厳しい以上のものだった。

意に沿わない隣国貴族への輿入れ、そして犯罪者になるつもりかという糾弾は、王太子妃になることを夢見続けていたマルヴィナの矜持を酷く傷つけた。


「もういいわ、お前の顔なんて見たくもない! 出て行ってちょうだい!」


叫びながら手近にあった燭台を投げつける。執事は一歩も動かなかったが、当たることはなかった。


「それでは御前失礼致します。侯爵様の御許可があるまでお部屋からお出になりませんよう」

「知ったことではないわ!」


マルヴィナの金切り声には答えず、家令は部屋を出て行く。閉じられた扉に向けてクッションを投げつけたマルヴィナは、苛々と親指の爪を噛みながら部屋の中を歩き回っていた。


「なんで――なんでこんな事になってるのよ」


本当ならば“立太子の儀”にライリーと共に出るのはマルヴィナのはずだった。王太子妃として彼の隣に立つのはリリアナ・アレクサンドラ・クラークではなく自分のはずで、輝かしい未来を手に入れるのも自分のはずだった。

確かに家格に公爵と侯爵という差はあるが、マルヴィナはリリアナと違って社交に秀で人脈も広い。服飾に関しても洗練された感覚を持っていると自負しているし、王太子妃になった暁には社交界の流行を牽引する自信もあった。宮廷文学や詩といった芸術的な方面にも親しんでいる。()()、政治的だったり歴史的だったりする話題には苦手意識があるが、王太子と王太子妃は互いの苦手分野を補い合えば良いのだ。


だが現実はマルヴィナの夢とは程遠い。彼女は兄ショーンが勝手に決めた隣国の――どこの馬の骨ともつかない貴族に嫁ぐことが決まっている。相手は皇国の伯爵であることもマルヴィナの気に障った。皇族であるならともかく、伯爵とは一体何事か。ショーンは伯爵が商売に長じており我が国とも良い関係を築けると嬉しそうにしていたが、マルヴィナには耐えられなかった。


――全てはあの女(リリアナ)のせいだ。


マルヴィナの思考はそこへ帰結する。リリアナがマルヴィナを蹴落としたのは間違いがない。何故なら彼女はライリーの婚約者にのうのうと収まったのだから。


考えれば考えるほど腹が立つ、そう思っていたマルヴィナは、窓の方から物音がしたことに気が付いた。首を傾げて窓を開けバルコニーに出る。彼女の部屋は二階にあるため警戒心はなかった。

そしてマルヴィナは、バルコニーの隅に佇む人影に気が付いて目を丸くした。普段から高飛車に振る舞っている彼女でも、突如自分の部屋近くに見知らぬ人物が現われたら恐ろしい。しかし恐怖もすぎると声が出なくなるものらしく、マルヴィナは震える吐息を漏らすだけで一言も発することはできなかった。しばらくマルヴィナと侵入者は微動だにせず見つめ合う。


やがて、マルヴィナの恐怖心は薄れて来た。代わりに挨拶一つない無礼な相手に腹が立って来る。


「貴方ねぇ、」


マルヴィナは文句を言ってやろうと口を開いたが、暗闇からふらりと一歩出て来た相手を見て思わず言葉を飲み込んだ。相手はマルヴィナよりも多少年上に見えるが、年齢不詳の美しい少年だった。漆黒の瞳に濃紺の髪を持つ少年は漆黒の衣装に身を包んでいる。


「初めまして、()()()()()()()殿()()

「――なんですって?」


思わぬ言葉にマルヴィナは完全に毒気を抜かれた。これまでマルヴィナ以外の誰も、彼女のことを“王太子の婚約者に相応しい”と言ったことはなかった。婚約者候補だった頃に実兄だけは“何を捨て置いても婚約者になれ”と言っていたが、相応しいとは一言も口にしてくれなかった。

どれほど自分が王太子妃になるべきだと思っていても、今の状況ではマルヴィナが王太子妃になるべきだと仄めかしてくれる人は全くいない。それにも関わらず、夜中の侵入者はマルヴィナのことを“未来の王太子妃”と呼んだ。


「貴方、何を言っているの?」

「俺はただ思っていることだけを。この国の王太子妃に相応しいのは貴方以外に居ない」


穏やかに囁かれる言葉は甘い毒のように、マルヴィナの脳裏に沁み込んでいった。

マルヴィナは間近に迫った美しい顔に見入る。不思議に光る黒い瞳に魅入られながら、彼女は徐々に体が震えるのを感じた。体を震わせる正体は歓喜だ。マルヴィナは口角を上げて「そうよ」と答えた。


「そう、私こそが王太子妃に相応しいの。お兄様ですらご理解なさっていないというのに、貴方には分かるのね? 単なる不作法者ではないということかしら」

「お褒めに預かり恐縮です、王太子妃殿下」


穏やかに優しく囁かれ、マルヴィナの頬は紅潮した。そして次の瞬間、彼女の脳裏に玉座の間で多くの貴族に(かしず)かれる自分の姿が浮かぶ。


「貴方はこのような場所で燻って良い方ではない。本来居るべき場所に貴方が立てるよう、俺にお手伝いさせて頂けないでしょうか」

「あ、貴方のような子供に何ができるというの」


慌ててマルヴィナは少年から一歩離れた。少年の言葉に心がときめくことは事実だ。だが、正確な年齢は分からないとはいえ、目の前に居る少年はマルヴィナとそれほど変わらないように見える。夜中に二階のバルコニーへ音もなく現れるのだから普通の少年でないことは確かだろうが、だからといって彼に特別な何かが出来るとは思えなかった。

しかしマルヴィナに問われた少年は動じることもなく、自信に満ちた不敵な笑みを浮かべる。


「これでも色々な場所に伝手がありまして。実は貴方が王太子妃になるべきという貴族も居るのです。彼らの力を借りれば不可能はありませんよ」

「その貴族たちはどこの誰?」

「残念ながら、まだ名を出したくないと言われておりますのでご容赦ください。彼らにも生活がありますから、クラーク公爵家の不興は買いたくないのでしょう」


その言葉に、マルヴィナは最後の警戒を解いた。


「不敬な人たちね」


不服そうに文句を口にするが、貴族が一体どのような思考回路をしているのかマルヴィナも知っている。たとえマルヴィナが王太子妃に相応しいと考えていても、保身のために声高に主張することはできないのだろう。しかし、だからこそ少年の発言には信憑性があった。その上、口が堅そうなところも評価できる。

そしてそんなマルヴィナの決意を後押しするかのように、少年は更に言葉を重ねた。


「ですが、俺はこうして動くことができます。多少、姫様のお手を煩わせてしまうことも出てしまうかと思いますが――」

「本当に無礼ね。でも良いわ、仕方ないもの。どうしてもして欲しいことがあれば幾らでも仰いなさい」

「ご寛大な御心とお言葉に感謝いたします」


姫様、と呼ばれたマルヴィナの機嫌は更に良くなる。夜中に突然押しかけて来る上に、所作も丁寧ではあるが言葉遣いが貴族らしくはない。しかし、見目麗しい少年に下にも置かぬ扱いをされると、身分はどうでも良いという心地にすらなった。平民を人とも思っていないマルヴィナではあるが、見た目の美しい青年を愛人として囲う貴婦人が居ることは知っている。その青年が爵位を持たなかったり平民であることもあった。愛人を囲うことはまだ自分には早いと理解もしているが、それでも予め親しくなっておいて悪いことはないだろう。


そんなことを夢見て頬を染める少女を前に、少年は艶やかに微笑む。しかしその双眸が暗く光っていることに、マルヴィナは気が付いていなかった



*****



タナー侯爵家の邸宅を後にしたオブシディアンは、首を回して凝った肩をほぐした。


「あー、疲れた。これ特別手当欲しいんだけど。お嬢に言ってみるか?」


タナー侯爵ショーンが“北の移民”の人身売買に関わっているらしい、という情報をリリアナに持ち込んだのはオブシディアンだった。しばらくリリアナが直接的な行動を起こさなかったから放置していたが、先日彼女はオブシディアンに“証拠を持って来てほしい”と頼んで来たのだ。

リリアナの計画はそれほど複雑ではなかったが、時間と手間がかかるものだった。


(ショーン)の警戒心が高いのであれば、(マルヴィナ)を篭絡すれば良いのではないかしら』


どう思います、とオブシディアンに尋ねるリリアナの微笑は迫力があった。

マルヴィナは兄の思惑を読み取るほど政治的な能力は高くなく、そしてショーンは妹を御しきれていない。そこに付け入る隙があると、リリアナはオブシディアンに告げた。

ショーンはマルヴィナを隣国の伯爵に嫁がせる算段のようだが、婚姻はまだ先だ。恐らくその婚姻を無駄にしないためにも、ショーンは未だ王太子妃の地位に拘っている妹を“立太子の儀”に参加させようとはしない。しかしその事実を知れば、マルヴィナは荒れて兄に反発する。


(ショーン)は妹に政治的な能力があるとは考えていません。理論的に考える頭もないと軽視しているでしょう。ですから、精々茶会や式典への出欠と、王家に対する不敬な言動の監視程度しかしていないのではないかしら。そこが弱点ですわね』


そして、もしマルヴィナが人身売買や謀反の証拠や証言を、破棄される前に持ち出してくれたらそれで良い。もし無理そうであっても、マルヴィナが証拠を侯爵邸に持ち込むことはできるに違いない。

その繋ぎを付けるようにと、オブシディアンはリリアナに頼まれていた。


「別にそういうのは慣れてるから良いけど、でも()()の相手は疲れるぜ……」


マルヴィナは明らかにオブシディアンの顔に見惚れていた。媚を売るような表情を浮かべる少女を見て、どれだけ幼くとも女は女だと、オブシディアンはげんなりした気持ちになった。しかし仕事は仕事だ。不快感を押し隠してマルヴィナに接した結果は上々だった。

この調子で()()()()()()()()、遅かれ早かれタナー侯爵邸から何らかの証拠は出て来るだろう――たとえそれが、()()()()()()()()()()()()()()()



S-2

29-8






とうとう200話だぞー!!

長くなったにも関わらず、ここまでお付き合い下さった皆さま誠にありがとうございます。ここまで膨らむとは作者も思っていなかった。


ということで、次回、乙女ゲーム開始。ヒロイン登場(?)です。

引き続きお読み頂ければ嬉しいです。ついでに楽しんで頂けると更に嬉しいです。


なお、現時点での“ゲームと現実の差異”の概略を「設定資料集」に追記しました。ご興味ある方はご覧ください。

⇒https://ncode.syosetu.com/n2904gs/4/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


第1巻~第5巻(オーバーラップ文庫)好評発売中!

書影 書影 書影 書影 書影
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ