23. 双璧の後始末 9
同時刻、王都のエアルドレッド公爵邸の一室に一人の男が入って来た。扉に鍵をかけた彼は衣装棚から黒いローブを取り出す。着込んでフードを目深に被れば、途端に酷く陰気な雰囲気になった。彼はほっと一息吐く。そして小さな袋から一匹の鼠を取り出すと、卓上に放り出した。鼠は金色の輪に囚われぐったりとしている。
「芸の細かいことだ」
単なる呪術で造られた鼠だが、一見しただけでは普通の鼠にしか見えない。動きも全てが本物そっくりで、それが間諜の類であるとは普通気が付かないだろう。
棚の上にあった水差しからコップに水を注ぎ、一気に水を煽る。喉を潤した彼は神経質に蝋燭の位置を調節し、鞄から取り出した香を焚いた。少しすれば部屋中に優しく落ち着いた香りが漂い始める。異国から訪れる商人から定期的に購入する香は、男の気に入りだった。
「全く、頼まれでもしなければわざわざ王都くんだりまで来ないというのに」
小さくぼやくが彼の顔はそれほど不服そうでもなかった。仕方のないことだと諦めているかのようにも見える。
両手を擦りながら彼は椅子に座る。ようやく腰を据えて鼠を解析することができると、楽し気な笑みを漏らした。唇が綺麗な弧を描いていることを自覚しないまま、彼は呪術陣を広げる。一般的な陣を彼なりに改良したもので、出来は自信があった。詠唱しながら魔力を陣に流し、解析を進めていく。
「――ん? これは」
訝し気に眉根を寄せていたが、しばらくすると彼は目を見開いた。
次々と空中に浮かんでは消えていく金色の文字を必死に追い、手元を見ないまま全ての術式を紙に書き留めていく。
「待て、一体いくつの術式を重ねているんだ? しかも相反する術式まで組み込んでいるのに効果が打ち消されないように――ああ、なるほど、ここの術式を省略して別の術式を代入しているのか。いや待てよ、この術式は見たことがないが一体何の効果を狙って――」
単なる間諜のための鼠ではないのかと、仕組まれた術式を書き留めながら一人ぼやく。盗み聞くだけであればそれほど複雑な術式は必要ないし、複数の術式を重ね掛けする必要もない。彼の前にある鼠は単なる盗聴の目的ではなく、厳重な防御の結界を潜り抜け危険を回避し、必要な情報を持ち帰り、更には術者が接触すればその場の音声をそのまま術者に送ることが出来るように作られていた。
「この術式で何かを魔力に変換しているから、動力源たる魔導石が小さいのか。だが何を魔力に変換しているのかが分からんぞ、そこが一番重要だというのに」
自動の魔道具も、存在しなくはない。だが術者から離れて勝手に動くようにするためには魔導石が必要だ。離れている時間が長くなればなるほど、魔導石も大きくなる。そして魔導石に込められた魔力が枯渇すれば、その魔道具は動かなくなる。もし大きな魔導石を使いたくないのであれば、術者が定期的に遠方から魔力を送り込まなければならない。しかし、魔力を送り込む時には第三者に術者の存在が知られる危険性が増す。そのため、長時間術者から離れて動き続ける魔道具を作ることは不可能だと言われていた。
「この術者と一度話してみたいが――。一体何者だろうか」
間諜を王宮に忍び込ませる術者である。もしくは、そのような依頼を受ける術者だ。碌な人間ではないだろう。だが能力は男が知る限りで一、二を争うほどだった。その才能を国のために生かせば、スリベグランディア王国は一層繁栄するだろう。惜しい人材だと、男は口をへの字に曲げる。
しかし今は術者を惜しんでいる場合ではない。早々に解析を終わらせて、探知の術を掛ける必要がある。その後に鼠を放せば、鼠の飼い主が誰か自然と分かるという仕掛けだ。
だが、その瞬間――男は違和感を覚えて手を止める。
「――――っ!?」
男は愕然と、信じられないものを見る目でテーブルの上を凝視した。陣の上に居る鼠が崩れる。慌てて崩壊を止めようとするが間に合わない。鼠はあっという間に砂塵に姿を変え、その砂塵はきらきらと光に変わって消失する。
「――――消滅の術式は、組み込まれていなかったはずだ」
男は掠れた声で呟く。まだ全てを解析できたわけではないが、恐らく鼠自体に消滅するような仕組みは存在していない。つまり鼠を作った術者が、遠隔から鼠を消滅させたと考えるべきである。
「魔力の残滓が消えている」
遠隔で魔術を使う時、術者と対象物の間に目に見えない細糸のような魔術の通り道ができる。どのような術者であっても、この道を消すことはできない。だから普通であれば、即座に自らの魔術をその道に流すことで術者の場所を特定できる。しかし、その特定作業が遅れてしまえば、相手に道を遮断される。そうなるともう為す術はない。
この魔術の道の太さは術者の力量によって変わる。優れた者であれば細いペンで書いた一本の線程度だし、初心者や不得手な術者が行えば街道のように広い道になることもある。細ければ細いほど辿り辛く、また遮断もしやすい。尤も細ければ良いというものでもない。本当に優れた術者は、細い道に高純度かつ高密度の魔術を流すため、術の効果も高い。しかし普通はそのような真似はできない。純度の高い魔術も密度の濃い魔術も、人が成そうと思えば限界がある。だからこそ細い道であれば魔術の効果も落ちるとされているし、男もこれまでは高純度かつ高密度の魔術など目にしたことがなかった。だが、今彼が目にしたのはまさにその“理論上はあり得るが現実的でない”魔術だった。
つまり、間諜の鼠を作った者は非常に優れた呪術士というだけでなく、王国屈指の魔導士でもあるということだ。
優秀な魔導士の片鱗に触れられた喜びと、出し抜かれた悔しさに男は唸る。彼は握った右手の拳を、テーブルの上に叩きつけた。
*****
王宮のその一角には、最近では滅多に人が寄り付かない。それにも関わらず厳重な警備が敷かれ、そして雰囲気は陰鬱だった。物音一つすらしない廊下を通り過ぎれば、そこにはたった一室しかない。その部屋は豪華絢爛な内装が施されているが、権力と財力を誇示するような内装とは裏腹に死臭で満ちていた。
広い部屋の中央に置かれた寝台には一人の男が寝ている。彼はここ数年ずっと床に就き、時折目覚めるものの、最近ではずっと意識が混濁していた。高名な医師も魔導士も彼の病を特定できず、故に治療法も分からない。ただ日に日に弱る彼の体力を保たせる他に方法はない。緩やかに死へと向かっているのは、ホレイシオ・ジェフ・スリベグラード――スリベグランディア王国の国王その人である。
だが、その日は普段と様相が違った。日々の世話をする者以外は滅多に足を踏み入れないその部屋に、数人の男が連れ立ち入って行く。その内の一人はつい先日宰相になったばかりのメラーズ伯爵であり、彼は訝し気な目を黒いローブの人物に向けていた。その後ろには不機嫌な表情の魔導省長官ニコラス・バーグソンが付いている。最後尾にはユリシーズ・パット・エアルドレッドが場違いだと言いたげな表情で歩いている。
彼らを出迎えたのはホレイシオの嫡男であるライリーだ。彼は座っていた椅子から立ち上がると、微笑を浮かべてメラーズ伯爵たちを出迎えた。
「その方が、プレイステッド卿の仰っていた魔導士殿かな?」
「はい、エアルドレッド公爵閣下が身元を保証してくださるとのことです」
メラーズ伯爵は表向きは丁寧に告げる。
ローブを目深に被った男の顔は見えないが、彼は胸に手を当てて優雅に一礼した。王太子を相手にするには不遜と取られかねないほど略式ではあるものの、一応は礼儀に適った態度だ。非公式という場でもあるため、誰も咎めない。元よりライリーはそれほど気にした様子がなかった。それよりも問題は、彼が王太子と国王を前にしてもフードを目深に被ったまま顔を見せない点である。脱帽することが礼儀であるにも関わらず、男はフードを外す素振りすら見せなかった。メラーズ伯爵が眉根を寄せる。
「魔導士殿、陛下と殿下の御前ですぞ。礼儀に則り脱帽いただきたい」
だが魔導士はフードを脱ぐどころか、皮肉に唇を歪めて肩を竦めた。
「フードを取れば更に御不快な思いをさせるだけですので、ご容赦願えますか」
辛うじて丁寧語だが、これもまた不敬と許容の狭間だ。否、普通であれば不敬と謗られる。実際にメラーズ伯爵とバーグソンははっきりと不快を露わにした。
特にバーグソンは元々目の前に居る魔導士に良い印象を抱いていない。以前自分が診察した国王を再度診察すべきだとしてプレイステッド卿に送り込まれた魔導士は、言うなればバーグソンの名声を汚す可能性のある輩である。
目の上のたん瘤だった副長官のベン・ドラコを降格させた上で謹慎処分とし、更には自分の弱味を握っていたクラーク公爵が死亡した今、ようやくバーグソンは己の天下を満喫しようとしていた。それにも関わらず、今ここで正体不明の怪しい男に国王を治癒させるわけにはいかない。魔導士と名乗る珍妙な男が治癒させられる病を、魔導省長官たるバーグソンが治癒させられなかったとなれば、貴族や民はバーグソンに失望するだろう。そうなると最早我が世の春を謳歌することはできない。彼は名声も権力も失い、下手をすれば財産も失いかねない。
だからこそ、バーグソンは魔導省に属さない魔導士が新たに派遣されると聞いた時、身元が不確かな魔導士を国王に近づけるわけにはいかないと主張して同行する権利をもぎ取った。フィンチ侯爵が宰相となっていれば却下された可能性が高いが、幸運にも新しい宰相はメラーズ伯爵である。ある程度交流があったため、了承の返事を取り付けるのは容易かった。
「名も明かさぬ上にフードも取らぬ、ですと? いかなプレイステッド卿のご推薦と言えども身勝手すぎるその振る舞い、目に余りますぞ」
丁寧でありながらメラーズ伯爵は厳しく咎める。バーグソンも追従してか深く頷き、責めるような眼差しを魔導士に向けていた。さすがにこれはまずいかと、傍観を決め込んでいたユリシーズが口を開こうとする。しかしそれよりも先にライリーが口を挟んだ。
「メラーズ伯爵、貴方の忠義には甚く感謝いたしますが、この場では不問と致しましょう。プレイステッド卿のご推薦でありエアルドレッド公爵が身元を保証なさると言うのでしたら、私はそれを咎めるつもりはありません。今ここでそれを論じるよりも、早々に陛下の容体をご確認頂きたい」
メラーズ伯爵は一瞬言葉に詰まったが、すぐに首を垂れ「殿下の仰せのままに」と引き下がる。バーグソンは不満気だったがさすがに文句は言わず、その斜め後ろに立つユリシーズは感謝に満ちた視線をライリーに向けた。一方、当人である魔導士は楽しそうな気配を滲ませたまま立っている。ライリーは微苦笑を漏らし、魔導士に顔を向けた。
「しかし魔導士殿と呼ぶのはいささか不便ですので、できれば呼び名を教えて頂けないだろうか」
「それでしたら私のことはチャドとお呼びください」
「チャド――ですか」
「ええ」
意味深に魔導士の男は頷く。ライリーは一瞬目を瞠ったが、すぐに頷いて了承の意を示した。
「分かりました。それではチャド殿、宜しくお願いします」
「承知いたしました」
ライリーに促され、魔導士は国王の眠る寝台に近づいた。用意していた魔道具や呪術陣を取り出し準備を整える。ライリーやメラーズ伯爵、そしてユリシーズは興味津々に男の行動を注視していた。バーグソンは不快そうな、しかし詰まらなさそうな表情で立ち尽くしている。文句を言おうにも王太子が容認しているから何も言えず何も出来ないのが歯痒い様子だ。
衆人環視の中で、魔導士は着々と術式を展開し始める。金色の光がその場に満ち、様々な文様や文字が現われては消えて行く。その光が消えた時、ライリーたちははっと現実に引き戻された。あまりにも幻想的な空間で夢うつつになっていた。
「解析が終了しました」
魔導士の言葉にライリーが一歩踏み出す。
「何か、分かりましたか?」
「ええ、意外と簡単でしたよ」
四年前から幾度となく医師や魔導士が診察し、何も分からないと言われ失望して来た。そのせいか、ライリーもメラーズ伯爵も、そしてユリシーズでさえ魔導士のあっさりとした返答を一瞬聞き逃しそうになった。
「――は? か、簡単――とは?」
メラーズ伯爵が珍しく口籠りながら反復する。魔導士は軽く肩を竦めて、一瞬挑発するような視線をバーグソンに向けた。
「非常に簡単な呪術です。うるさい蠅を片手で追い払いながらでも解析できる。何故これまで分からなかったのか不思議なほどですよ」
バーグソンはぎり、と歯を食い縛った。魔導士は顔をライリーに向ける。
「呪術の種が陛下の玉体に植え付けられています。心の臓と肺に、種から生えた蔦が絡んでいました。だいぶ複雑に絡み合っていますが、まだ辛うじて同化していない。このまま進むとあと一、二年ほどで崩御なされるでしょうが、今から治療と解呪を施せば徐々に回復するでしょう」
「それは――どれくらいの期間で治癒するものでしょうか」
突然のことで驚きを隠せないライリーたちに魔導士は頷いてみせる。ようやく普段の調子を取り戻し始めたライリーが、考えながら一つの問いを口にした。
国王の体を蝕む呪術は種から生えた呪術の蔦だった。長い年月をかけて少しずつ育つその蔦は、心臓と肺に絡み養分を吸い取っている。更に時間が経てば臓器と蔦は完全に癒着し、どれほど頑張っても引き離すことはできなくなるだろう。だがまだ辛うじて治癒が間に合う段階だ。
「後遺症が出ないようにするためには、蔦を剥がす時に臓器が壊れないよう細心の注意を払う必要があります。それから体力もつけないといけません。ですから、時間をかけて少しずつ魔術と薬を使って回復させていきます。陛下の体力と気力にもよりますが、短くて一年、長くて数年かかるでしょうね」
「――そんなに、ですか」
メラーズ伯爵が呟く。魔導士のフードに隠されて見えないはずの目がキラリと光ったように見えた。彼は伯爵に顔を向ける。
「このような類の魔術は進行が遅い分、対処にも時間がかかります。廃人になっても良いのであれば一瞬で解呪しますが」
「それはお止めください」
挑発するような言葉を止めたのはライリーだった。在位期間六年のうち四年を病床で過ごし、健康だった二年間も国政の表面的なところにしか携わらなかったとはいえ、仮にも国王である。廃人になられては困るのだ。
魔導士もそれは理解していたようで「だから時間を掛けます」と答えた。
「薬は煎じた物をお持ちします。解呪の術については私が定期的に伺って行いましょう。それで宜しいでしょうか」
「ええ、勿論構いません。ただしこの部屋に入る時は必ずこちらが指定する騎士と付き添いの者を付けてください」
一人で入室し国王の容体が悪化すれば、疑われ責められるのは魔導士である。ライリーの言葉は国王の身を護る目的だけではなく、魔導士のことを慮る意味もあった。それが分かっているのか、魔導士は綺麗な礼を見せる。その礼は最初の簡略化されたものではなく、爵位を持つ者が王族に示す最上級の礼だった。メラーズ伯爵が目を瞠るが、一方でライリーは平然としている。魔導士は静かに答えた。
「御意に」
*****
国王の病の原因が呪術であることを突き止めた魔導士は、ユリシーズと共にエアルドレッド公爵家の馬車に乗り込み王都の公爵邸に向かっていた。王宮の敷地を出たところで、ユリシーズが顔を上げる。その整った顔には苦笑が滲んでいた。
「アドルフ叔父上、何故チャドなどと名乗ったのです?」
「悪戯心だ。兄上の名を拝借すれば、血縁関係があるだろうと推察する者もいるだろう。実際に殿下は気付いていらしたようだぞ。なかなか見どころのあるお方だな」
アドルフと呼びかけられた魔導士は小さく笑う。チャドは今は亡き前エアルドレッド公爵ベルナルドのミドル・ネームだ。兄の名を拝借したのは完全に彼の悪戯心だった。
そして同時に、ライリーの出方を窺うためでもあった。
ユリシーズは知らないが、アドルフとライリーは今回が初対面ではない。以前に一度だけ、秘密裏に魔道具を作って欲しいと依頼を受けたことがある。彼が欲しがったのは念話と同様の働きをするブレスレットだった。驚いたが同時に魔導士として胸の高鳴る仕事だった。立場上、兄公爵だったベルナルドには話を通したし、何故かベルナルドは自分にも受信用の魔道具を融通してくれと言って来たが、他には誰にも口外していない。
その時に、アドルフは魔導士であることを誰にも言わないようライリーに頼んだ。彼は滅多に社交に出ない。人嫌いで偏屈だと噂になっていはいるが、彼が魔導士であることを知る人はごく限られていた。
そのため、今回ライリーがアドルフと知り合いであることを口にしたり表情に出したりしないかと多少疑っていたのだが、それはアドルフの杞憂でしかなかったようだ。
「エアルドレッド公爵の叔父が魔導士だと知れるとまた面倒だからな。最初から名乗るつもりはなかったよ」
確かに、とユリシーズは頷く。エアルドレッド公爵家に優秀な魔導士が居ると知れたら魔導省が黙っていないだろう。権力闘争に巻き込まれてしまうだろうことは想像に難くない。
特に今回、長官のニコラス・バーグソンは最初からアドルフを敵視していた。彼には魔術の才も呪術の適性もない。だからバーグソンは自分以外の者に国王の診察をさせたくなかったはずだ。もし彼ができなかった呪術の解析を他の誰かがしてしまえば、バーグソンが無能だと露呈してしまう。だから何かしらの妨害はして来るだろうと踏んでいたが、バーグソンは予想外に露骨だった。
アドルフは呆れを滲ませてぼやく。
「バーグソンは大して腕もないのに解析を妨害しようとしていたぞ」
「――ああ、蠅ですか」
ユリシーズは少し考え、すぐに叔父の発言を思い出した。
アドルフは解析が終わった後『うるさい蠅を片手で追い払いながらでも解析できる』と言っていた。その“蠅”がバーグソンの妨害だったのだろう。アドルフは頷いてユリシーズの言葉を肯定した。
「あの程度で長官と名乗るのもおこがましいと思うが、まあ金を積んだのと時期が良かったんだろうな。もっと若ければ表舞台に名前すら出て来なかっただろう」
ちょうどニコラス・バーグソンが魔導省に入った時期は、人手不足の時期だった。優秀な人材もそれほどおらず、だからこそバーグソン程度の能力しかなくとも人脈と金を使えば長官にまで登り詰められた。しかし若い世代には魔導士の名家ドラコ一族の嫡男が居る。ベン・ドラコと比べるとバーグソンの実力は酷く拙い。
「またあいつは妨害してくるだろうが、一々面倒だな」
アドルフはうんざりと溜息を吐いた。実力は大したことがないため簡単に撃退できる。だが、蠅が顔の周りを飛び回ると煩わしい。さてどうしてくれようかと、アドルフは馬車の外を眺めた。
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