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悪役令嬢はしゃべりません  作者: 由畝 啓
第一部 悪役令嬢はしゃべりません
121/563

20. 武闘大会 3


水球が消え、オースティンは剣を下げたが呆然としていた。自分の身に起こったことが信じられないらしい。しかし、すぐに我に返ると慌ててオルガの前に戻った。オルガは何ヵ所か衣服が切れていたが、肌にはかすり傷一つ負っていない。その様に、むしろオースティンは爽やかな気持ちになった。


「これほどの方が市井に眠っているとは思わなかった。今回の試合はとても勉強になった」


礼を述べると、オルガは面白そうに目を細める。


「こちらこそ。まだ若いのに優秀な方だとお見受けした。その年齢であれほどまで剣と魔術を使いこなせるのであれば、将来有望だろう。今後のご活躍を祈念している」


二人はしっかりと握手を交わし、試合会場を去る。通路に戻ったオースティンは、そこに立つダンヒル隊長を見て苦笑を浮かべた。


「隊長。すみません、負けてしまいました」

「いや、お前はよくやったよ」


励ますようにダンヒルはオースティンの肩を叩く。その後ろにはイーデンも立っていた。オースティンが黙礼すると、イーデンは頷いてくれる。


「あのオルガとかいう傭兵は、できれば二番隊に引き抜きたいくらいの腕前だな」

「それなら本人だけじゃなくてクラーク公爵令嬢に交渉しなきゃならないぞ」


イーデンの独り言にダンヒルが答える。イーデンは意外なことを聞いたというように片眉を上げた。


「護衛をしているのか?」

「ああ、そうらしい」

「珍しいな」


珍しい、というのは明らかにオルガではなくリリアナのことを指している。通常、貴族の護衛が傭兵であることはない。特に高位貴族であれば尚更、騎士を護衛として雇い入れるものだ。腕前は勿論のこと、彼らは出自を非常に気に掛ける。平民であったとしても王立騎士団の騎士であれば護衛として雇うこともあり得るが、基本的には爵位持ちの家に生まれた騎士を求める。


「だいぶ変わり者なんだろうな。俺もあんまり話したことはないが」


イーデンに答えたダンヒルは物言いたげな視線をオースティンに向けた。この中でリリアナと最も関わりがあるのはオースティンだ。だが、オースティンもリリアナとはそれほど深く話したことはない。そもそも彼女と会話をする場合は必ずライリーが傍にいるし、そういう時のリリアナは筆談しかできないという引け目故か積極的に会話に加わろうとはしないからだ。

だが、王太子の婚約者候補であり、そして現在ライリー本人が婚約者として扱っていることを踏まえても、下手なことは口にできない。少し考えてオースティンは無難な答えを返した。


「非常に頭の良い人ですよ。殿下から意見を求められた時に答えているのを見たことがありますが、俺でも予想だにしない回答が用意されていることもあります」

「――お前だって結構、頭良いのになあ」

「彼女と話していると、自分が随分と頭の悪い人間に思えますからね」


オースティンの言葉に、ダンヒルは嫌そうな顔になる。ダンヒルもカルヴァート辺境伯の嫡男だが、その性格上あまり勉強は得意ではない。うえ、と呟いたが、すぐに「ああ、そういえば」と何かを思い出したように声を上げた。


「お前の試合が終われば会いたいって方がいらしてたぞ」

「え? 俺にですか」

「ああ」


全く心当たりがない。不思議そうな顔のオースティンに、ダンヒルは頷くと客人が居るという部屋を口にする。その部屋は高位貴族しか入室が許可されていない特別室だった。思い当たる相手が居たのか、オースティンは頷くと二人に頭を下げる。


「それでは、失礼します。隊長、副隊長、ご健闘をお祈りしています」

「ああ、任せとけ」


ダンヒルはにやりと笑う。彼もイーデンもまだ試合は残っている。遅かれ早かれオルガに当たることになるだろう。騎士団以外での番狂わせ(ダークホース)は傭兵オルガだけだ。つまり、上位三人はダンヒルとイーデン、そしてオルガで占められる可能性が高い。

予想外の頂上決戦に心を躍らせながらも、オースティンは自分に会いたいという客人の待つ部屋へ足早に向かう。彼の予想が正しければ、その客人と会うのは実に一年振りだ。懐かしさに気が急いたオースティンは、あっという間に廊下を走り抜けて扉の前に立っていた。

扉を叩くと、中から「入れ」と声が聞こえる。オースティンは扉を開けて室内に入った。


「兄上!」

「久しぶりだな、オースティン。息災そうでなによりだ」


オースティンを待っていたのは、予想通りの人物だった。ユリシーズ・パット・エアルドレッドはエアルドレッド公爵の前妻エイダの息子だ。オースティンよりも十五歳ほど年上であり、普段は領地に籠って領地経営と研究に明け暮れている。父親であるエアルドレッド公爵を少し優しい風貌にした雰囲気の彼は、穏やかな表情でオースティンを出迎えた。


「お久しぶりです。兄上もお元気そうで良かったです」


兄を前にすると、オースティンの口調も年相応なものに変わる。嬉しそうな表情の弟を見てにっこりと笑ったユリシーズは、オースティンに座るように促した。ついでに部屋の戸口に立っていた護衛二人に、一旦外に出ておくよう言いつける。一瞬渋った表情を浮かべた護衛だが、大人しくユリシーズの指示に従って部屋を出た。


「兄弟の水入らずの時間に、部外者がいるとちょっとね」


ユリシーズは苦笑して肩を竦めた。彼は堅苦しいことが嫌いだ。だから領地では滅多に護衛を付けていない。彼に付けられた執事が護衛も兼ねているからだ。だからこそ、その執事以外の者が護衛に付いていることが珍しい。オースティンは目を瞬かせたが、ユリシーズは答える気がない様子だった。


「お前の試合を見ていたよ。随分と強くなったようだね」

「はい。まだまだ実力不足ですが」

「今のお前の年齢では十分すぎるほどだと思うのだけれど」


きょとんと不思議そうにユリシーズは首を傾げる。オースティンは頷いた。


「一応、見習いの中では俺が一番強いと思います。でも、二番隊に配属されたので――魔導騎士としてはまだまだです」

「頑張ってるね」


ユリシーズは心底嬉しいというように相好を崩した。


「殿下の近衛になるのがお前の夢だものね」

「はい」


オースティンがライリーの近衛騎士になりたいと思って小さい頃から努力していたことを、家族は皆知っている。そして、それが無駄だと言われたこともない。父は「頑張ってみなさい」と必要な教育を施してくれたし、兄は穏やかにオースティンの話を聞いては助言を惜しみなく与えてくれた。二番隊に配属されてからはオースティンに余裕がなく手紙を送る頻度も減ったが、それまでは定期的に近況を報告していた。ずっとそれが当然のことだと思っていたが、他の貴族家令息たちとの交流が増えるにつれ、高位貴族の家族としては稀なのだと気が付いた。そして、その状況が正しく父母と兄が努力の末作り上げたものなのだと知ったのは最近のことだ。

軽く近況報告をして、ユリシーズが今は植物の研究に嵌っていることが分かったところで、オースティンは疑問に思っていたことを口にした。


「それにしても、兄上が王都に出て来られるなんて珍しいですね。何かあったんですか?」

「ああ、僕も不思議なんだけどね。父上に呼ばれたんだよ」

「父上に?」


予想外の回答を聞いたオースティンは目を瞬かせる。首を傾げて考えるも、全く理由は思い付かない。


「父上がなぜ、兄上をお呼びになったのでしょう。ローランド皇子殿下とイーディス皇女殿下がいらっしゃるから――ではないですよね」

「うん、違うと思うよ。なにせ、王都には来ても王宮には上がらないようにとのお達しだからね。ついでにこれも」


言いながら、ユリシーズは右腕を見せた。そこにはブレスレットが嵌っている。兄が装飾具を身に着けていることが珍しくて首を傾げていると、ユリシーズは笑いながら「防御の魔道具だよ」と教えてくれた。


「魔道具?」

「そう。必ずこれを付けておくようにと父上に言われたんだ。それから、公爵家の影も付けてる。ああ、そうだ。お前の分もあるんだよ、魔道具渡しておくね」


随分と念入りなことだ。オースティンは絶句したが、差し出された魔道具を慌てて受け取った。ユリシーズと揃いのブレスレットだ。どちらの腕に付けても良いということなので、右利きのオースティンは左腕に付ける。


「それでは――ヒューは?」

「ヒューは今、領地にいるよ。それも父上の指示なんだ」


ユリシーズと長く共にいる執事の居場所を尋ねると、ユリシーズはあっさりと答えた。普段領地に引きこもっているユリシーズが、社交界シーズンに王都を訪れる時は必ずヒューが同行している。ますます妙だとオースティンは眉根を寄せた。

エアルドレッド公爵が天才と呼ばれていることは、二人とも良く知っている。それだけではない。若かりし頃は、魔の三百年を終わらせた三傑の一人である賢者の再来とまで言われたそうだ。確かにこれまで一度たりともチェスで勝てたこともないし、父が予測したことはたいていがその通りになっている。同じ情報を見聞きしても、なぜか父親の方が多くのことを理解している。だからこそ、ユリシーズがヒューを領地に置いて王都に来ることになったのも、エアルドレッド公爵に何らかの思惑があるのだろうと想像がついた。


「王宮に上がってはいけない、ということは――つまり、兄上がいらしていることを他に知られてはならない、ということでしょうか」

「あり得るね。一応、その可能性も考慮して堂々と振舞ってはないつもりなんだけど――どこまで意味があるのかは分からないよ」


確かに言われてみれば、ダンヒルはオースティンに来客を示唆しただけで、誰が来たのかは告げなかった。恐らくユリシーズが口止めしたのだろうとオースティンは推測する。

一方のユリシーズは、オースティンの態度を見て弟が何も聞いていないのだと納得した。可能性は低かったが、万が一オースティンが父から何かを()()()()()()()()()()、その話を知ることで全体像が見えるのではないかと思っていた。だが、その望みは呆気なく絶たれた。そして同時に、ユリシーズが父から直接言付かったことはまだオースティンには言えないと判断する。必要な時にプレイステッド卿へ送るように言われた手紙は未開封のまま、ユリシーズが隠し持っていた。


「――父上も、昔から言葉が足りないからねえ。困ったものだ」


ユリシーズは深い溜息を吐いた。オースティンは少し困ったように眉根を寄せたが小さく頷いた。


「俺には、とても良い父なのですが――」

「うん、努力なさったからね」


微笑を浮かべるユリシーズをオースティンは見返す。素直で真っ直ぐな性根を示すような視線を、ユリシーズは真正面から受け止めた。


「父上は――俺が生まれる前の父上は、どうでしたか」


オースティンは、自分が生まれる前のエアルドレッド公爵家を知らない。勿論、自分が後妻アビーの子でユリシーズが前妻エイダの子であること、そしてエイダが若くして儚くなったことは知っている。彼女が亡くなってから長い間、エアルドレッド公爵は新しい妻を迎えようとはしなかった。だが、やがて十二歳年下の、エイダとも親しくしていたアビーが積極的に公爵を口説き落とし――そしてとうとう、結婚して子供を二人儲けた。それがオースティンと妹だ。

だが、それだけだった。父が前妻を失った後の葛藤も、その時にユリシーズが何を感じていたのかも、オースティンは知らない。ただ、ユリシーズは年の離れた弟妹を嫌うことなく、優しく接してくれた。そしてオースティンには感謝の言葉さえ口にしてくれる。


「僕も実は良く知らないんだよ。殆ど顔も合わせなかったし」


苦笑してユリシーズは肩を竦める。オースティンにとっては意外な言葉だった。彼の知る父と兄はとても良く似ているが、穏やかに会話をしている印象が強い。二人とも頭が良く、話し方が穏やかなため誤魔化されやすいが、よくよく内容を聞けば周囲を置き去って熱く議論を重ねている。だから、ずっと仲の良い親子なのだと思っていた。


「僕の母上が早くに亡くなったのは知っているよね」

「はい」


オースティンは頷く。ユリシーズの母はエアルドレッド公爵よりも年上の姉さん女房だった。どちらかというと引きこもって研究する方が好きな公爵を、良く外に引っ張り出して連れまわしていたらしい。穏やかな公爵とは違って、良く笑い良く怒ったという。若い頃から天才と持て囃された公爵を叱りつけることが出来たのは、その時から妻だけだった。


「彼女が亡くなったのは僕がまだ小さい時で、ほとんど思い出はないんだ。だけど母が死んだのはとてもショックだった。もう戻って来ないんだと聞いて――僕は、それが父上のせいだと思ったんだ」


成長した今は、父のせいで母が死んだのではないと分かる。ユリシーズの母は自死した。その理由が何であれ、エアルドレッド公爵が母を殺したのではない。自死の理由はユリシーズも知らない。だが、エアルドレッド公爵が妻の死を自分の責任だと考えていることは知っていた。

ただ幼いユリシーズが知っている“事実”は、母親が父親に激怒して家を留守にし、帰って来た時には物言わぬ骸になっていた、それだけだった。


「だから、小さい僕は父上のことが嫌いになったんだ。でもね、僕が嫌いだと言ったら、父上が悲しむことは分かってた。使用人たちも父上のことを庇うしね、きっと言ってはいけないことなんだと思った。だけど顔を合わせたらひどいことを言ってしまう。そう思ったから、僕は父上を避けた。気が付けば、父上に会っても何を話せばよいのか分からなくなった」


そしてエアルドレッド公爵も、自分を避ける息子にどう接すれば良いのか分からなくなった。ぎこちない父と息子――それでも周囲の人は優しくユリシーズに接し、公爵は直接関わらなくとも常に息子を気に掛けていた。必ず誕生日にはその時ユリシーズが欲しいと思っていたものを用意してくれたし、興味のある分野が新たにできればいつの間にか家庭教師が招かれていた。


「僕と父上が話す切っ掛けを作ってくれたのが、オースティン、お前なんだよ」


ユリシーズは照れたように笑う。

公爵が後妻を迎えた時、ユリシーズは十歳だった。年頃に差し掛かっていた彼は、新しい母親に戸惑うしかなかった。母親というよりも、むしろ年の離れた姉のような存在だった。そんな“母親”と何を話せば良いのか、どう接すれば良いのかも分からなかった。そして五年後、オースティンが生まれた。そこで初めて、ユリシーズは父と新しい母に声を掛ける切っ掛けを見つけた。

弟は可愛かった。人懐こくて、父母よりもユリシーズの後を追いかけるようになった。父はオースティンをとても可愛がったし、そして恐る恐る話し掛けて来るユリシーズにも同じように愛情を注いでくれた。

仲の良い家族になるのに、それほど時間は掛からなかった。食事を共にする時間を極力作り、そしてユリシーズはいつの間にかオースティンのことだけでなく、自分が興味あることや調べたことを話すようになっていた。父と話して知識を増やしたり、様々な価値観を学んだりすることは楽しかった。


稀代の天才と言われた父のようになれるとは思わない。だが、ユリシーズはいつしか父の背中に追いつきたいと思うようになった。偉大な父親を持ってもユリシーズが卑屈にならなかったのは、いつも目を輝かせて彼の話を面白いと聞いてくれるオースティンが居たからだ。兄に懐いた弟は、やがて困りごとがあるとユリシーズに相談するようになっていた。三大公爵である父が忙しいと分かっていたからだろうが、それでも弟に頼られることは嬉しかった。オースティンがライリーの近衛騎士になりたいと目標を見つけ努力しているのを見ると、一層その成長が楽しみになった。


「だからね、そんなお前がこうして立派に育っているのを見ると、僕も父上も嬉しくなるんだ」


オースティンは照れたように笑う。

父のエアルドレッド公爵とも会話はしている。だが、ユリシーズが言う通り彼は言葉が足りないところがある。そのため、小さいころから時々オースティンは父親が自分をどう思っているのか不安になることがあった。その度にユリシーズは父親が何を思い考えているのか、分かる範囲でオースティンに教える。父と似た性格のユリシーズの言葉は、オースティンにとって信頼に値するものだった。


「――それなら一層、期待に沿えるように頑張りたいです」

「期待に沿おうとしなくても、お前が思うがまま生きてくれることが一番嬉しいことなんだよ」


だから気負う必要はない、とユリシーズは言い添える。


「必要があれば僕も父上も、いくらでもお前を助けたいと思っているからね。だから、いつでも頼るんだよ。何でも自分一人で解決しようとは思わないことだ」

「分かりました。でもそれなら、兄上も何かあれば俺に頼ってください。まだ出来ることは少ないですが、もう俺も子供ではありません」


今までなら、オースティンはただ頷くだけだった。だが、もう子供ではない――そんな気持ちを込めて言葉を繋ぐ。ユリシーズは驚いたように目を丸くしたが、すぐに破顔して頷いた。


「ああ、勿論だ」


まだユリシーズにとってオースティンは子供だ。頼るには不安が大きいし、庇護対象でもある。だが頭から拒否されなかったことが、オースティンは嬉しかった。頬を僅かに紅潮させて目を輝かせる。

その様を優しく見つめ、ユリシーズは壁に掛けられた時計を見た。


「そろそろ時間かな。決勝戦と準決勝戦は、お前の隊長と副隊長が出るんだろう? ぜひ見ないといけないな」

「はい、お二人はとても強いので楽しみです」

「ああ、僕も楽しみだよ」


オースティンとユリシーズは立ち上がる。ユリシーズは別で観覧するからと言ってオースティンを部屋から送り出した。颯爽と立ち去る弟の後姿を見送り、ユリシーズは小さく息を吐く。


「大きくなったなあ」


しみじみと呟いて、ユリシーズもまた護衛を引き連れ部屋を出た。オースティンには試合を見ると告げたが、本気で観戦する気はない。円形闘技場に来たのは、ただ弟と会って話をするためだ。普段は王立騎士団の兵舎で寝起きしている弟に会うためには王宮に行かなければならないが、それは父に禁じられている。意図は分からないが、だからといって言いつけを破っても良い結果にはならない。そう考えるほどには、ユリシーズにとってエアルドレッド公爵の言葉は絶対だった。


「訊いても教えてはくれないだろうけど」


“何かあった時にプレイステッド卿に渡すように”と言われた書簡がその証拠だ。自分宛でないことが、まだ一人前だと認められていないような気がして多少悔しい。だが、プレイステッド卿に書簡を渡すという大役を仰せつかったことは素直に嬉しかった。相反する感情がせめぎ合う。しかし少なくとも父の眼鏡には適ったということだろうかと思いながら、ユリシーズは円形闘技場を後にする。

背後から、観客たちの大きな歓声が聞こえた。



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