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悪役令嬢はしゃべりません  作者: 由畝 啓
第一部 悪役令嬢はしゃべりません
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20. 武闘大会 2


武闘大会の二日目は魔導部門と魔導剣技部門が開催される。案の定、魔導部門は派手な術が多かったが、魔導省の魔導士がほぼ占めていたため多少盛り上がりに欠けた。一方、魔導剣技部門には王立騎士団二番隊の騎士も数人出場しているが、他領の騎士団に所属する者や傭兵も含まれている。そのため大多数の観客にとって本命は魔導剣技部門だ。魔導士よりも更に人数が少ない魔導剣士同士の戦いを一目みたいと思う者も多い。一日目も観客席は満員だったが、二日目は円形闘技場に入り切れない観客が通路に押し掛ける事態になった。


円形闘技場の観客席の下には通路や部屋が幾つも連なっていて、その通路には出場を待つ者たちが待機している。その中にオースティン・エアルドレッドは一人立っていた。王太子の生誕祭の日に史上最大規模の魔物襲撃(スタンピード)があってから一年、彼は王立騎士団二番隊に所属し魔導騎士として着実に経験を積んでいる。どうやら魔導騎士としての才能があったらしく、オースティンは二番隊の中でも優秀な部類に入っていた。今回の武闘大会では他部門とは違い魔導剣技部門の選抜試験はなかった。そのため、二番隊に所属する他の騎士たちとも初めて一騎打ちすることになる。毎日の訓練では手合わせをして貰っているが、自分の実力を図るのに武闘大会ほど良い機会はない。その上、隊長のダンヒル・カルヴァートや副隊長のイーデンが本気を出したところは見たことがなかった。魔物襲撃(スタンピード)の時は彼らも本気を出していたのだろうが、あの時のオースティンは必死だったため他の騎士たちの戦い振りを見る余裕は全くなかった。今度こそ間近で彼らの本気を見ることが出来るのだと思えば気も逸る。


「オースティン」

「隊長」


名前を呼ばれて顔を上げれば、二番隊隊長のダンヒル・カルヴァートが近づいて来るところだった。王族と皇族が観覧しているため騎士の正装を纏っている。隊長であることを示すためにデザインもオースティンたちのものとは違う。青と白で統一された装束は派手だが、腰にぶら下げた愛剣は普段から彼が好んで使っている簡素なものだった。簡素ではあるものの、特注品でありダンヒルが使う魔術との相性は非常に良い。オースティンもダンヒルの助言に従い、自身の魔術に合う剣を職人に作って貰った。他の隊に所属している騎士たちが支給される剣よりも遥かに高価だが、実際に使うと差は歴然としている。一度使えば二度と普通の剣は使えないとダンヒルが笑って言っていたが、まさにその通りだとオースティンは実感していた。


「緊張してるか」

「はい、多少は」

「多少か。そりゃいい」


素直に頷いたオースティンにダンヒルは笑みを浮かべる。どうやら気遣ってくれたらしいとオースティンは頬を緩めた。そして周囲を見渡して「そういえば」と口を開く。


「イーデン副隊長はいらしていないんですか?」

「ああ、まだ来ないと思うぜ。直前まで出たくなさそうな顔してたし」


ダンヒルの言葉にオースティンは苦笑する。イーデンは一年前の魔物襲撃(スタンピード)で受けた傷から完全には回復していない。そのせいもあって、武闘大会への出場に乗り気ではなかった。その上、元々人と戦うのが嫌で二番隊に所属した変わり種である。他の騎士たちは皆、魔導剣士としての実力を生かすことにこそ喜びを覚えるのだが、イーデンは人を傷つけるのがどうにも好きになれないから二番隊に入ったのだと言って憚らない。尤も、必要とあらば躊躇わず剣を振るえるからこそ二番隊の副隊長を務めているのだが、そんな彼が必要もなく人と戦う場に出ようとするわけはなかった。


「今回も、出る出ないでだいぶ隊長と揉めていらっしゃいましたしね」

「あいつが出ないなんて言ったら、二番隊は俺とお前以外、全員が不参加だったぞ。怪我が完治してないとはいえ、訓練では俺以外太刀打ちできない程度(レベル)まで回復してるしな」


魔物襲撃(スタンピード)から一年、イーデンの回復力は目を疑うものがあった。体調が安定すると同時に日常生活へ戻るための訓練を重ね、半年後には剣を持って二番隊の騎士たちと軽い手合わせをするほどまで回復した。八ヶ月ほど経過した時には怪我した足を魔術で補助して実戦の勘を取り戻し、今では十分魔物討伐に出られるほどまで回復している。それでも本人にとっては足りないようで、「本調子じゃねえ」と良くぼやいていた。

その様子を見たダンヒルやケニス辺境伯の親戚である七番隊隊長ブレンドン・ケアリーは、刺客が放った死に直結する猛毒すらも乗り越えたケニス辺境伯を引き合いに出し、イーデンと辺境伯のどちらがより“人間を辞めているか”言い合っている。


「――確かに、副隊長が出場しないとなれば俺も出なかったかもしれませんけど」

「じゃあ俺だけかよ」


そんなわけには行くかと、ダンヒルは苦い顔だ。武闘大会と銘打っているものの、その実は王立騎士団の騎士たちに発破をかけることも目的の一つだ。ユナティアン皇国とは現在も表面上は友好関係を保っているものの、辺境では時折小競り合いや国境侵犯が続いている。不穏な空気が漂っていることは否定できず、その中で王立騎士団含め各地の騎士団の士気を高めることは非常に重要だった。そして、ユナティアン皇国から外遊のため訪れている皇族にスリベグランディア王国騎士団の優秀さを見せつけ、侵攻を思い留まらせる思惑もある。

一般の騎士たちには決して教えられない裏事情だが、ダンヒルはこっそりとイーデンに裏事情を説明した。だからイーデンは時間ぎりぎりになろうが試合には出て来るはずだ。


「出るからには本気出せって言っといたしな、まあ大丈夫だろ」

「俺、隊長と副隊長が本気出して戦うところを一度で良いから見てみたいと思ってたんですよ」

「そんな大したことはしないぞ」


オースティンの言葉を聞いたダンヒルはにやりと笑う。首を傾げたオースティンに、ダンヒルは一歩近づいて耳元に小声で囁いた。


「全力を皇子たちに見せる必要はねえってことだ」

「ああ、なるほど。ですが、そこまで上手く行きますか? 今回は傭兵や他領の騎士団も出場しているでしょう」

「俺たち二番隊の実力を舐めんなよ。といっても、お前は二番隊(おれたち)しか知らないか。負けることは許されないが、完膚なきまで叩きのめす必要もない」


ダンヒルの説明を聞いたオースティンは頷いた。確かに二番隊の実力を敵となるかもしれない隣国に知らしめる必要はない。だが、だからといって傭兵たちに劣るような者が王立騎士団に所属していると思われてもならない。塩梅が難しいが、少なくともダンヒルやイーデンには出来ることなのだろう。

だが、果たして自分にできるのか――そう思って眉間に皺を寄せたオースティンを見て、ダンヒルは小さく笑った。安心させるように後輩の肩を叩く。


「安心しろ、お前にそこまでは求めない。お前は伸びしろがあるからな。今回は全力で戦え」

「はい」

「試合でお前と会えるのを楽しみにしてるぜ」


楽し気なダンヒルの言葉に、オースティンの強張った表情が緩む。ダンヒルとイーデンは勝ち進むだろう。二人と対戦できるのか、そもそも二人と戦う前の試合を勝ち抜けるのか、実戦経験がそこまで多くはないオースティンには分からない。

この一年間、彼が駆り出された実戦は全て魔物襲撃(スタンピード)の制圧だった。それも、最初に加わった負け戦確定の魔物襲撃(スタンピード)よりも遥かに規模も威力も小さいものだ。魔物も知能が備わっていない、以前から出没していたものばかりだった。だからこそ、武闘大会では中小規模の魔物襲撃(スタンピード)では得られない経験が積めるはずだ。

オースティンは緊張しながらも、高まる期待に胸を弾ませた。



*****



オースティンは、順調に勝ち上がっていた。どうやら最初の段階で王立騎士団二番隊の騎士たちが対決しないように組まれているらしく、傭兵や他領の騎士との一騎打ちが続く。次の試合で勝てばとうとう同じ騎士団の騎士と戦うことができる。彼は再度、気合いを入れ直した。


「オースティン、次のお前の対戦相手、傭兵だがかなりの強敵だぞ。油断するなよ」

「はい、ありがとうございます」


二番隊の先輩騎士に言われてオースティンは真剣な表情で頷く。二番隊の騎士たちは皆気の良い者ばかりだ。魔導騎士という稀有な実力を有している彼らだが、ダンヒル隊長やイーデン副隊長を心の底から慕っている者が多いせいか、自分より若い騎士でも実力が上だと認めれば素直に尊敬してくれる。この時オースティンに声を掛けてくれた騎士も、実力はオースティンに劣るが色々と世話を焼いてくれる人だった。

オースティンは名前を呼ばれた時にすぐ出て行けるよう、通路を進んで扉の前に立つ。少しして、審判が出場者の名を呼ぶ。


「王立騎士団二番隊所属、オースティン・エアルドレッド! 傭兵オルガ!」


オルガという名が出た途端に観客席がわっと湧く。名も知れない傭兵だったが、ここまで順調に勝ち上がる中で見せつけた強さに観客たちは興奮状態だった。特に男装の麗人であることが彼らの興味を一層掻き立てているのだろう。

傭兵でありながら王立騎士団の騎士を圧倒するほどの強さ。俄かに信奉者が出来たとしても不思議はない。一方で、オースティンも少年と青年の狭間にだけ見える整った風貌の落ち着きと幼さに、本人も気付かぬうちに信奉者を増やしつつある。特に今回のような武闘大会を見に来た者たちは強者の戦いを目に焼き付けたいと思っているだけではない。見目の良い者が強さも兼ね備えているとなれば、どうしても贔屓をしたくなる。

実際に円形闘技場で闘技会が行われていた当時でさえ、優遇されていた剣闘士は腕のある者と見目の麗しい者たちだった。人の価値観というものは時代を経てもそれほど大きく変わるものではないようで、今の観客席は見事にオルガとオースティンで声援を二分している。

だが、当の選手たちは全く外野の声が聞こえていなかった。静かに相対し相手の様子を窺う。

オースティンは騎士の礼儀作法に則り、一対一の試合を行う際の礼を取った。それを見たオルガはわずかに目を瞠り、静かに微笑を浮かべる。


「ご丁寧に、感謝する。オースティン殿」

「――こちらこそ、胸をお借りできること感謝する。オルガ殿」

「この国の騎士は、傭兵相手にも礼儀を守るのか」


オルガの問いにオースティンは首を傾げた。不思議そうな目を向けるオースティンに、オルガは「いや」と曖昧に首を振った。


「大した意味はない。忘れてくれ」

「いや、気にしないで欲しい。我が国の騎士が、というよりも人によるのだと思う。だが、少なくともこの部門に出場している王立騎士団の面々は二番隊の者ばかりだ。彼らは尊敬に値する人物だと思えば、出自は問わずに礼を尽くす。俺もそうありたいと思っている」

「良い心がけだ」


王立騎士団の騎士は爵位がない者もいる。だが、騎士団に所属している時点で庶民とは一線を画した扱いがなされる。そのため騎士の中には己の身分を笠に着て威張り散らす者もいるが、いずれにせよ傭兵や庶民が騎士に対して尊大な態度をとることはまずない。下手を打てば、勘違いした尊大な騎士に手打ちにされかねないからだ。だが、オルガと名乗った傭兵は全く気にした様子がなく、オースティンにも対等な態度を崩さなかった。勿論オースティンは気にしない。それよりも、相対しただけでオルガの強さをひしひしと全身で感じて気持ちが高揚する。早く戦いたいという心が逸る。

オルガに“胸を借りる”と言ったのは、世辞でも謙遜でもなく本心だった。


――もしかしたら、この試合が俺の最後の試合になるかもしれない。


ほぼ確信を持って、オースティンは内心で呟く。実際に剣を交えなければ確信は持てないが、これまで戦った対戦相手とは異なり、勝てるイメージを全く心に描けない。


「双方、用意は宜しいか。それでは、いざ開始!」


審判の掛け声と共にオースティンは剣を抜いた。同時に体の周りに風が巻き起こる。オースティン得意の風魔術は攻撃が得意だ。そして先制攻撃は後手に回る守備より勝る。だからこそ、オースティンは先制攻撃を仕掛けるため目くらましに自身の周囲へと風を纏った。


「【我が名に於いて命じる、風の理の元に我が剣よ、刃を風とし散らせ】」


詠唱と共に風は鋭い刃となってオルガに牙を剥く。正面から狙ったと見せかけ本命は背後だ。だが、オルガは見切っていた。


「【水の精霊曰く、守護に足る力を我は有す】」


低く紡がれた言葉と共に水の膜がオルガの周囲を覆い、オースティンが放った風魔術の攻撃を無効化する。一方のオースティンは、聞いたことのない詠唱に眉根を寄せた。短詠唱(たんえいしょう)はごくわずかに限られた者しか使えないとされている。詠唱は魔力を魔術に変換する際、術式と魔力量では足りない部分を補うためのものだ。そのため、実力が劣る者や術式が非効率なものであればあるほど長い詠唱が必要になる。短詠唱を使える者はスリベグランディア王国にはいないとされていた。ユナティアン皇国でも使える者が居るという話は聞いたことがない。

基本的に魔導剣士が使う魔術は魔導士が使う一般的な魔術よりも術式が複雑なものが多く、そのために必要な魔力量も増える。結果的に、オースティンが使っているような詠唱が基本とされていた。むしろ、その基本とされている詠唱を使ったところで魔導剣士として十分な魔術を発揮することができる者は少ない。

尤も、本来“短詠唱”と呼ばれるものはオルガが唱えた詠唱より更に短いのだが、そもそも短詠唱を聞いたこともないオースティンには判断できなかった。

ぎり、とオースティンは歯を食い縛る。相手が攻撃を始める前に、オルガの余裕を失わせ仕掛けねば勝機はないと分かった。


「【我が名に於いて命じる、風の理の元に我が剣よ、大気の渦を巻け】」


魔導騎士として戦う中で、攻撃や守護に詠唱は必須だが、自身の身体強化を行う際は詠唱を省略できるほどにならなければならないとされている。実践できる者はごく限られているが、オースティンはこの一年でその技を身に着けていた。

攻撃の詠唱と共に風魔術を足に掛け、軽く地面を蹴る。それだけでオースティンの体は宙高く飛び上がった。オルガの周囲でオースティンの放った風が螺旋状に巻き起こりながら彼女の行動を阻んでいる。その隙間にオースティンは体を滑り込ませ、間合いに入って剣を袈裟懸けに振り下ろす。しかしその剣は水の膜に阻まれた。


「く――っ!」


オースティンは小さく舌打ちしてその場から飛びずさる。案の定、一瞬前までオースティンが居た場所をオルガの持つ剣が切り裂いていた。反応が遅れたらオースティンの体には今頃大きな傷がついていたに違いない。オルガはオースティンが避けることを予想していたのか、わずかに微笑を浮かべただけだった。

このままでは勝てないと、オースティンは悟る。自分と違ってオルガは試合の開始時点から一歩も動いていない。簡単にオースティンの攻撃を見切り無効化している。単一の魔術では勝てないと、オースティンは複合魔術に踏み切った。


「【我が名に於いて命じる、風の理の元に我が剣よ、霰の礫を飛来させよ、疾風の渦よ風の刃となれ】」


詠唱した途端、風が硬化し見えない礫となってオルガに襲い掛かる。同時に目くらましの如く疾風が渦を描いてオルガの足元から巻き起こり、鋭い切っ先は風礫と共にオルガの防御膜を突き抜け、その衣服を切り裂いた。本来であれば皮膚に達するはずだった攻撃だが、オルガはあっさりと後ろに飛び退くことで攻撃を軽減させる。


一属性の魔術であっても、一般的には一つの詠唱につき一つの効果を持つ術しか使えない。だが、鍛錬を重ねれば一つの詠唱で複数の効果を持つ術を発動させることができる。ヘガティ騎士団長は二属性の魔術を併せて複数の効果を発現させる複合魔術を使えるようだが、それは非常に高度な術だった。実際に二番隊の魔導騎士たちも、一属性の魔術で二つの効果を発現させる複合魔術から訓練を始める。

オースティンも身体強化の術を無詠唱で行えるようになってから複合魔術の訓練を開始していた。ここ最近になって、ようやく二つの効果を発現させる複合魔術をほぼ完璧に発動させることができるようになったため、今は三つの効果を発動させられるよう訓練を初めている。だが、二つの効果を発動する複合魔術も訓練以外で使うのは初めてだった。


「【我が名に於いて命じる、風の理の元に我が剣よ、空間を狭め風の槍を降らせよ】」


オースティンは剣を天に向け詠唱を重ねる。次の瞬間、身体強化したオースティンの体がその場から消えた。オルガの周囲が無音になり、風で造られた空間に彼女は閉じ込められる。身動きも取れない状況に追いやられ、頭上からは無数の槍が降り落ちて来る。普通であれば狼狽しがむしゃらにその場から逃れようとする者が多いだろう中で、彼女は全く動じなかった。それどころか、化粧気のない唇が弧を描き詠唱を紡ぐ。


「【水の精霊曰く、其が素は(すべか)らく攻むる刃を打ち破るべし】」


姿が人の目に映らぬほどの速度で天を舞ったオースティンが、風の空洞と同化してオルガに迫る。頭上から降る無数の槍をオルガが術で迎撃することは、さすがに予想していた。だからこそ、オースティンは頭上からの攻撃を目くらましに使った。

本命はオルガが剣を持つ右手側。背後から攻撃すると読まれる可能性を考慮して、オースティンは剣に風魔術を載せる。オルガの頭上から降る槍が彼女の体を貫こうとしたのと同時に、彼が握る剣の切っ先はオルガの体に到達する()()()()()


「――っ!!」


衝撃がオースティンの体を襲う。オルガの頭上から降らせた槍が一瞬にして粉々に破壊されたと認識した瞬間、柔らかい水の球が真正面に出現した。避ける余裕すらないまま、咄嗟にオースティンは剣で水球から体を守るように防御の姿勢を取る。だが、水球は剣も巻き込んで彼の体に勢いよく激突した。強化した両脚に力を入れて踏ん張るが、いつの間にか発生していた小さな水球がオースティンの足裏と地面の隙間に入り込む。


「な――っ!」


途端に踏ん張りがきかなくなり、オースティンの体は水球によって場外まで押し出される。あっという間の、そして呆気ない幕引きだった。


「勝者、傭兵オルガ!」


審判が叫ぶ。観客席からは地響きのような歓声が響いた。



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