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俺とゾンビと荒廃した世界と。  作者: 猪ノ花 恵
第2章・退勤編 中学校Part
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巨大な蜘蛛

 舞台の上に現れた巨大な蜘蛛は、体を震わして咆哮した。


 グオォォォォォーーーーー!


 地震の如く、館内は揺れる。

 風圧が巨蜘蛛を中心に広がり、俺も呑まれてしまう。


『体が……動かないッ。』


 巨蜘蛛が怖い訳ではないのに、体が言う事を聞かない。

 何も出来ない中、巨大な蜘蛛の体を見上げる事しかできない。


 薄暗い館内。

 暗闇でも光る黒い蜘蛛の瞳から、視線を外せないでいる。


『逃げ、逃げよう……これは勝てないッ。』


 ゆったりと、舞台の上から片足を前に出してくる巨蜘蛛。

 その一歩は大きく、俺との距離をすぐに狭めるだろう。


「うぅ……逃げ……ろ……」


 足元に並んだ繭の1つから、人の声がした。

 そちらを見ると、まだ意識があった男性がうわ言のように呟いていた。


 彼も分かっている筈だ。

 俺が逃げたら、置いてかれた彼らがどうなるか。

 なのに、助けにきた俺を案じてくれていた。


「助けるんだろ。」


 自分に対して、言葉が漏れる。

 自然と口は動いていた。


 巨蜘蛛はもう片方の足をゆっくりと進ませる。


 余裕のある、1歩ずつの前進。

 様子見なのか知らないが、糸を飛ばす事はなく、こちらにゆっくりと近付いてくる。


『舐めてるのか知らないが、今の内だな。』


 繭に包まれた彼らを肩に担いで、体育館の外へと放り投げていく。

 3段程度の階段が、観音開きの扉の外にあり、繭は転がっていくが、今はその事までは気に掛けていられない。

 最後に、男性が顔を出す繭を既に出していた繭の上に放り投げ、巨蜘蛛へと体を向ける。


「……大き過ぎだろ。」


 我が身を覆う、大きな影を見上げる。

 体育館の真ん中にまでやってきた巨蜘蛛は、縮こめていた8本の足を蟹の様に広げていた。


 いつの間にか、大中小の蜘蛛らも姿を表しており、巨蜘蛛の周りで、糸を垂らして空中に浮いている。

 数ある黒い瞳は確実に俺を見ており、外へと出した繭には一瞥も向けない。


『俺は逃がさないって事か。』


 巨蜘蛛と対峙しながら、感染者にする様に思考を飛ばしてみる。


 グオォォォォォーーーーー!


 またあの咆哮だ。

 今度は耳を塞いで耐える。


『右側の繭も助けたいが、マットも動かせないし、諦めるしかないのか……』


 身体能力の上がったこの身だけれど、危険信号が諦めるべきだと訴えていた。

 流石に、こんな化物相手に、まして他の蜘蛛も居る中、助けきるのは無理だ。


 チラリと右側の天井に吊るされた繭を見た瞬間。

 巨蜘蛛は頭を低くして、こちらに顔を寄せてくる。

 食われるッ、そんな意識が働いて横に避けるが、巨蜘蛛の足が床に突き立てられる。


「ッ。」


 逆側に避けるも、同じく巨蜘蛛は一歩踏み出してくる。

 隙を探そうにも、手下であろう蜘蛛らが周囲で糸を垂らし、邪魔で仕方ない。


『クソッ、どうしたら……』


 巨蜘蛛はズイッと、立ち止まる俺の目の前まで口を近付ける。

 開いた口内は、明かりがないせいか、漆黒そのもの。

 真っ暗な闇でその先は見えない。


『一か八かーー』


 俺はその口の上辺りに殴りかかった。

 巨蜘蛛は油断していたのか、何か俺の匂いでも確かめていたのか、それに反応しなかった。


 拳が刺さると、その巨蜘蛛は軽く浮かび、後ろへと後退する。

 俺は巨蜘蛛の次の行動を見るまでもなく、横へと走り出す。


 ビュッ、ビュッ、ビュッ。

 蜘蛛の糸が網状に広がり、逃げる俺へと飛んでくる。

 脚力が上がっていなければ、確実に捕らえられていた。


「ハァハァ……」


 扉を無造作に閉め、両肩に繭を2つずつ担いで、校舎へと運び始める。

 正直座り込みたいが、助けた人を移動させて、この場から早く離れたい。

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