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俺とゾンビと荒廃した世界と。  作者: 猪ノ花 恵
第2章・退勤編 中学校Part
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体育館の主

 壁に衝突し、気を失う中型の蜘蛛。

 モップの柄によって、頭胸部を凹ませる大きな蜘蛛。

 革靴で踏み潰した小蜘蛛達。

 体育館の2階、細い通路は死屍累々と化す。


「ハァハァ。」


 やがて、動ける蜘蛛は減り、残った蜘蛛達はこちらを警戒しながらも、体育館内の暗がりへと姿を消していった。


『……これなら、助けていっても大丈夫そうだな。』


 手摺りに足を乗せ、2つ目の吊られた繭、その天井からぶら下がる細い糸を下へと引っ張る。

 時間がかかりながらも、1階のマットの上にドスンと落とす。


 最初の大群が嘘の様に、それから蜘蛛に邪魔される事はなく、最後の吊られた繭にまでやってきた。


「ヤツが……」


 細い通路の入口、端にある繭。

 それに近付いた瞬間、小さく嗄れた声が耳に届く。


「ヤツが……くる……そのまえに……にげ……」


 声の主を探すと、繭の小さな隙間から、男性の顔が見えた。

 微かに意識がある様で、焦点の合わない薄目を開けて、こちらに呟いている。


『あの蜘蛛達……の事では無さそうだな。』


 限界である男性が、残り僅かな気力で漏らす言葉からして、その何かの危険性は高く感じる。

 蜘蛛らも脅威ではあるが、あれ以上だと俺でも対抗できない可能性がある。

 けれど、このまま引く事は出来ない。

 何かが来る可能性はあるだろうが、先に彼らを助けるのを優先しなければ。


 繭の糸を引き千切り、左側通路の最後の繭を下へと落とす。

 ふぅ、と軽く息を吐き、すぐに1階へ降りる為、階段へ向かう。


 ズゥン。


 階段の半分辺り。

 そこで重低音の地響きが館内に広がる。

 また蜘蛛が現れたかと、急ぎ階段を下りて、館内の様子を窺うが何も居ない。


『気のせいか?』


 ズゥン。


 いや、やはり足音の様に、何かが近付いてきている。

 焦る気持ちを抑え、1階のマットの上にある繭をずらし、右側へと移動させる。


「嘘だろ……」


 マットの移動が終わり、先に助けた繭を手前左端にある扉に集めたタイミングだった。


 奴と目が合った。


 グオォォォォォーーーーー!


 その鳴き声は風圧を生み、思わず後退る。

 体育館の舞台上に、巨大な蜘蛛が鎮座していた。

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