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俺とゾンビと荒廃した世界と。  作者: 猪ノ花 恵
第2章・退勤編 中学校Part
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蜘蛛の巣からの脱出

『俺らは美味しくないぞッ。 こっちへ来るな!』


 改めて、感染者にする様に思念を蜘蛛へと飛ばしてみたが、やはり何の反応もなく、俺達2人を囲う円が縮まるだけだった。


「オレはこんなとこでーー」


 体育館の2階にある、左の壁沿いに伸びた細い通路。

 背中合わせで後ろに立つ、健人(けんと)くんが独り言を漏らしているのが聞こえる。


『これだけはしたくなかったが、仕方ないよな……』


 左手の指を全て真っ直ぐに伸ばし、腕を斜めに構えつつ、体を翻す。

 健人くんがこちらに向ける無防備な首筋へと、その左手を下ろし、手刀の要領でその肌へと衝撃を加えた。


 テレビやマンガの見様見真似。

 受け売りでしかなく、力加減なんて分からなかったが、健人くんは「ッァ!」と言葉にならない叫びを上げて、体を前に倒す。

 痛みに悶絶する彼の胴部分へ左腕を回して担ぎ、左の壁を蹴って高く跳びながら、右側にある手摺りの上に足を乗せ、1階の床へと飛び降りる。


「やっぱ、多少は痺れるか。」


 落下の衝撃が足にきて、少し動きを止める。

 腕の中の健人くんを見ると、急な落下に驚いたのか、白目をむいていた。

 蜘蛛はこちらを向き、白い何かを飛ばしてくる。

 慌てて、俺はその場から駆け出す。


 それからは、後ろを見る余裕が無くて、何が起きているか分からなかったが、蜘蛛は向きを変え迫ってきて、背後では蜘蛛の糸が飛び交っていただろう。


 ***


「ここまで来れば大丈夫だろう……」


 別棟を入ったすぐに、扉が開いた教室を見つけたので、そこにお邪魔した。

 畳が敷かれた和室の様で、廊下に感染者や蜘蛛が居ないのを確認するついでに、ネームプレートを見た。


「茶道部……の部室か。」


 室内には、簡易の冷蔵庫やポットもあり、棚にはお菓子が何種類か置かれたままだった。

 失神したままの健人くんは畳の上に寝かしており、一応首の裏が少し赤くなっているだけで済んだのも確認済み。


 蜘蛛は何故か、体育館を出ると襲ってくる気配が消えた。

 奴らにとって、あの中だけがテリトリーか、もしくはあそこに居ないといけない理由があるのか。

 とりあえず、ほっと安心する。


『健人くんの行動からして、あの繭に包まれた人間が理由か。』


 目が覚めると、再び健人くんは体育館へ戻るだろう。

 しかし、あれ程の敵のど真ん中では、食事の皿に進んで乗る餌にしか見えない。


『彼が起きる前に、どうにか策を練らないとな。』


 正直な話、俺も足の痺れが残っていたり、背後から飛んできた蜘蛛の糸が肩に当たっていたりして、少しだが体を休めたい。

 部屋の鍵を閉めて、扉を背もたれにして、少しだけ瞼を閉じた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 首トンで気絶は医学的に無理らしいです。
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