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俺とゾンビと荒廃した世界と。  作者: 猪ノ花 恵
第2章・退勤編 中学校Part
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出発の朝

 今朝は夢を見なかった。

 浅い眠りの中、腰辺りで震えるスマートフォンを感じて、上半身を起こした。


 ランタンの光も消えた暗いオフィス。

 冷たい床に、毛布の無い状態。

 肌寒さを覚え、上着の前を閉める。


『うぅ……さむ。』


 まだ震える、上着の右ポケットに入ったスマートフォンを止める。

 寝ぼけ眼を擦りながら、少し離れた隣で須川(すがわ)さんが寝ているのを確認する。


『時間通りに起きれた様だな。』


 スマートフォンをポケットから取り出し、画面を起動する。

 光量にパチパチと瞬きしながら、表示された時刻を確認する。


『6時半……すぐに日が昇ってくるな。』


 連日の移動で、疲れは多少あった。

 けれど、いつもの出勤時間に近いせいか、身体はすんなりと起きてくれた。


『嫌な慣れだな。』


 立ち上がり、両手を上に伸ばして、硬くなった体をほぐす。

 なんとなく、窓の近くへ歩き、日がまだ沈んでいる暗い町並みを見渡す。

 街頭の明かりは、歩行者の居ない道を照らし、普段なら数台の車が走る道路は静まり返る。


「さてと、行くか。」


 須川さんに配慮して、小さな声で決意を固める。

 朝飯の代わりは、昨日残したコンビニエンスストアのおにぎりとペットボトルのお茶がある。

 歩きながら握りを頬張り、お茶をゴクゴクと流し込む。

 焼鮭の塩気が目を覚まし、乾いた喉をお茶で潤す。


 人気の無い雑居ビルの階段を下まで降りて、ビルの外へと出る。

 目的地の小野町(おのまち)中学校までは、道路沿いを少し歩く程度の距離。

 今は暗くて見えにくいが、昨日の夕方は校舎が見えていた程。

 その校舎で取り残された学生らを想像し、無事である事を祈る。


『急がないとな。』


 近場のスーパーや商店で持って行ける食品は無いか探しつつ、その中学校へと向かった。

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