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俺とゾンビと荒廃した世界と。  作者: 猪ノ花 恵
第2章・退勤編 中学校Part
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沈みゆく太陽とプレイロット

 女三人寄れば姦しいとは、有名な諺だが、自分以外が女性だとその比では無かった。

 流石に、感染者が居る場では静かに後を付いてきてくれるが、休憩の時や人気の無い開けた場所に居る時は雑談に花を咲かせる。


『まぁ、それで心を落ち着かせてる一面もあるのか。』


 愛莉(あいり)ちゃんと、その母親の静香(しずか)さんが食事するのを見守りながら、片手のおにぎりに齧り付く。

 紀州南高梅の酸味が、疲れた身体に刺激を伝える。


 分譲マンションの敷地内にある公園。

 他の女性達も各々で輪を作り、木製ベンチや遊具に座り、食事をしていた。


『もう少し先を急ぎたいが……襲われた時に走れないとかだと厳しいし、これも仕方ないか。』


 大学を出てから、南東に下がってきた。

 少しずつだが、小野町(おのまち)中学校に近付いている。


 あれから、道路沿いを1時間近くも歩き続け、彼女らの歩みは目に見えて落ちてきた。

 空も、太陽が真上から斜めに傾き、地平線の下へと向かう。

 本音はもう少しの中学校へ到着したいが、襲われない俺と彼女達では立場が異なる。


『これ以上の移動は諦めるしかないな。』


 お茶のペットボトルを持ち上げ、ゴクゴクと喉へ流し込む。

 自覚はなかったが、思っていたよりも喉が渇いていたらしく、生き返った気分。


『休む前に、お店を回ったのは正解だった。』


 皆の疲弊が見え始めてから休憩を考え、スーパーやコンビニエンスストアを探し、飲食物を手に入れようとした。

 3つ目に入ったコンビニエンスストアのバックヤードで、品出し前の、箱に入っている状態のお弁当やパン、おにぎり、ドリンク等、いくつかの商品を見つけられた。

 それから、お店で頂いた事をメモして、段ボールごと運んできた。


大西(おおにし)さん、本当にありがとうございました。 この状況の中、私達の面倒まで見て頂きまして、申し訳ない限りです。」


 静香さんが頭を下げる。

 愛莉ちゃんも真似をして、コクリと頭を倒す。


「いや、気にしないでください。 わたしもちょうどお腹が空いていたので、コンビニへ向かった訳ですし。 避難所へ向かうのも、同じ目的地だからってだけですよ。」


 愛莉ちゃんが母親と再会できたので、あそこで別れても良かった。

 でも、乗り掛かった船だ。

 愛莉ちゃんの無事が確認できるまでは、面倒を見たい。


「私に出来る事は多くないですが、何かあれば、遠慮なく言ってくださいね。」


 静香さんの申し訳なさそうな表情。


「ええ、その時は頼らせてもらいますよ。」


 愛莉ちゃんの母親である、静香さん。

 一児の母とは思えない、細身のスタイルに、パッと見は怖く感じる切れ長の目だけれど、整った見た目と相まって美しく感じる。

 眼鏡をかけているせいか、美人女教師なんて言葉が浮かんだ俺は、まだまだ余裕があるらしい、


 正直、こんな状況で無ければ、冴えないサラリーマンの俺が話せる相手では無いだろう。


「もう時間も遅いですし、どこか休める場所を探したいですね……」


「そうですね。」


 静香さんの一言に、俺も同意する。

 ますます傾く日の光に、公園の外側に並ぶ木は影が広がる。

 正直な話、感染者を警戒しながらだと、中学校へ着く前に真っ暗になる。


「この辺で、寝泊まりを出来る場所があればいいんですが。」


「んー……それなら、あそこはどうでしょうか?」


 静香さんが指を向けるのは、並ぶ分譲マンションの中で、一際大きな棟。

 ここから見えている様に、距離は近い。


「引っ越しの際に資料を見た事があるのですが、津波避難ビルにも指定されているみたいで、地下に非常食を保存していたり、自家発電設備があった筈です。」


「それは、いいですね。 うん、今日は遅い時間ですし、一先ずそこを目指して、泊まれるか見に行きましょうか。」


「私もそれが良いと思います。 それでは、皆に伝えてきますね。」


 静香さんは他の女性を回っていき、説明していく。

 愛莉ちゃんは食べ終わり、両手でペットボトルのお茶を持ち上げていた。

 コクコクと少しずつ飲み終え、プハと息を吐く。


「?」


 愛莉ちゃんが、見ている俺に首を傾げる。

 笑顔で返し、俺も残っていたおにぎりを頬張る。


『暗くなれば、視界も狭くなる。 彼女らの安全の為なら、積極的に使うしかないよな……』


 俺が持つ、感染者を操れる……チカラ。

 それが彼女らにバレると、感染者と仲間だと恐れられる可能性を感じて、秘密にしている。


 ただ、街を出歩く感染者の量に対し、大人数での行軍。

 危ない場面もあり、その時なくなく『噛むなッ、この場から離れてくれ!』と心の中で命令を行ったのが一度。


『あの時、急な感染者の反転に、疑問を覚えている人が数名居た……』


 静香さんが説明を終えて、戻ってくる。

 俺は立ち上がり、愛莉ちゃんのも含め、ゴミをゴミ箱へ捨てる。

 そして、全員が食事を終えたのを確認し、静香さんが話してくれたマンションへと向かった。

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