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お前は美味しいのか?-赤眼の魔女-  作者: さいとう みさき
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第九話二の門の料理

異世界召喚された小鳥遊京子と大魔導士クルムのお話です。

美味しいものが見つけられるでしょうか?


お米だぁ!

でもタイ米……

ううぅ、そろそろ白米食べたいよぉ~(京子談)


 ミリアたちは次の対戦相手となるバツナンダラ王国に向かっていた。



 対戦相手の巫女ヒルディアがいる国はゲド大陸の中でも特に海に面している場所が多い国であった。

 それ故海路による交易や海から捕れる海産物が豊富でバツナンダラの経済の要になる程でもあった。


 ほぼ一日丸々使ってミリアはクルムと一緒に飛竜にまたがり空を飛ぶ。

 京子も次の二の門の料理の内容を知るためにワシャルに連れられて一緒に飛竜で移動をしている。



 「見えてきたな、あれがバツナンダラ王国だ」



 ワシャルがそう言い見えて来たそれはまるでイタリアのように飛び出た半島で確かに周りを海で囲まれていた。

 京子はそれを見ながら大きな声でワシャルに聞く。



 「ワシャルさん、あの国ってやっぱり海産物が豊富なんですよね? ワシュキツラも海に面しているって聞きましたがうちの国も海産物って手に入るんですか?」


 「海に近い所では取れた魚など食べていると聞くが、ほとんどは塩の生産だけだな。我が国の国内ではほとんど海産物は出回っていないな。むしろバツナンダラからの輸入の方が多いほどだ」



 それを聞いて京子は驚く。

 せっかく海に面している所があるのにわざわざ海外から輸入をするなんて。


 「もっとも、海産物と言ってもほとんどが干物だがな」


 ワシャルは付け加えるようにそう言う。

 確かにこの世界ではまだ保冷庫の様な技術は存在しない。

 となればせっかくの海産物も保存の為には乾物か塩漬けにするしか方法はない。


 「せっかくの海の幸もそうそう簡単には使えないって事かぁ……」


 自分のいた世界では保冷技術や運送技術が進んでいたのでたとえ内陸でも新鮮な海産物が食べられる。

 しかしそれが出来ないとなれば乾物や塩漬けと言う手段に頼るしかない。

 京子は唸りながらもう一度バツナンダラと言う国を見るのだった。



 * * * * *



 「今日はもう遅いから今晩は宿を取って明日の朝いちばんで神殿に行こう」



 ワシャルはそう言って街の中にある宿屋に飛竜を降ろす。

 この世界では飛竜の交通手段も有るようで宿屋には馬小屋ならず飛竜小屋もあった。

 他にも数頭の飛竜がいて小屋に繋がれている。


 「ふう、流石に一日中飛竜に乗っているとお尻が痛くなっちゃうね?」


 「むっ? それはキョウコが乗り方が下手なんだ。飛竜に尻だけで乗るのではなく鞍から伸びる足輪に体重を乗せるのが常識だぞ?」


 言いながらクルムもミリアも飛竜を小屋につないでからこちらへ来る。

 確かにお尻を擦っているのは京子ただ一人だ。

 京子は恨めしそうにクルムに言う。


 「何よ、だったら早く教えてよ!」


 「むっ? 本当に知らなかったのか??」


 クルムはそう言ってフードをかぶり興味なさそうにミリアにくっついて行ってしまった。

 京子はため息をつきながらワシャルと共に宿屋に入ってゆく。



 既に夕方の食事時。

 宿屋の一階は食堂になっている所が多く、この宿屋も食事をする客であふれかえっていた。

 ミリアとワシャルが部屋を取り、京子たちを呼ぶ。


 「取りあえず部屋を二つ取った。ミリア様とクルム、私と小鳥遊京子で良いな?」


 「あ、はい。大丈夫です」


 言いながら二階の部屋についてゆき荷物を降ろす。

 するとクルムのお腹が鳴る。



 くぅうううぅぅぅぅ……



 「むう、お腹が空いた。ミリア様、早く何か食べよう」


 「そうですね、それでは下の食堂に行きましょうか」


 ワシャルも鎧を脱ぎ軽装になって一緒に食堂へ向かう。

 ほぼ満員の食堂はそれでも奥のテーブルが一つだけ空いていた。

 ミリアたちはそこへ腰を下ろし、食事の注文をする。


 が、クルムは先ほどからやたらとフードを深くかぶったままだ。



 「クルム、どうしたの? ずっとフードをかぶったままだけど?」


 「キョウコ、忘れたのか? 私は赤眼の魔女だ。この瞳を見られると大騒ぎになるぞ?」



 言われて京子は思い出す。

 クルムの瞳が真っ赤であることを。

 それはこの世界では不吉な表れで人々はそれを恐れている。


 「ぶぅううぅぅ、実際はクルムはこんなに可愛くていい子なのになぁ~」


 「ふふふふ、小鳥遊京子さんもそう思いますよね?」


 ミリアも笑いながらそう言う。

 と、注文した料理がやって来る。

 サラダに魚介類を豊富に使ったスープ、煮魚に焼き魚もある。


 「せっかくだからここのおすすめの料理を頼んだ。どれもこれもこの国の特産物らしい」


 「へぇ~、やっぱり海産物が多いんだ…… あれ?」


 京子は料理を見ながらある事に気付く。

 それはサラダの中にある豆類に混じって京子がよくよく知る物にとても似ている。

 思わずサラダを引っ張り、その豆類と一緒に入っている白い粒をフォークで引っ張り出す。


 まじまじとそれを見ているとワシャルが聞いてくる。


 「どうした小鳥遊京子?」


 「いえ、これってもしかしてお米ですか?」


 「オコメ??」


 京子はフォークの先に取った米粒を見せる。

 ワシャルはそれを見て「ああぁ、ライスか?」と言う。


 「この国は周りを海に囲まれているだけじゃなく豆やライスの生産も盛んなんだ。山が多く真水も多いからな」


 「ライス、お米ですね。ぱくっ!」


 京子はそう言いながらその米粒を口にする。

 日本のジャポニカ米と言うよりタイ米に近いその食感と香りは確かに白米として食べるより煮てから豆と一緒にサラダにまぶしても悪くはないだろう。


 「でもお米が手に入れば更に料理の幅が増える…… ワシャルさん、このライスって手に入らないですか?」


 「ライスか? これはこの国の特産物だから少量なら買っていけるだろう。ワシュキツラ王国だとほぼ流通していないがな」


 言いながらワシャルたちはスープや煮魚に手を伸ばす。

 京子はそれを見て自分も慌てて手を出す。

 

 この国の料理の味を知る為に。



 * * * * *



 「ここがバツナンダラ巫女宮殿……」



 翌朝ほぼ街の中央に有る神殿に京子たちはやって来ていた。

 そして驚く。

 ワシュキツラのミリアの神殿のゆうに倍はある。

 それはほとんどお城と呼んでもおかしくないくらいに。


 しかしそんな神殿にミリアは何の気遅れも無くずかずかと入って行き宮使いたちにペンダントをかかげながら言う。



 「私はワシュキツラ王国の巫女ミリアです。次の二の門の通達を携えてます。バツナンダラの巫女ヒルディアに会わせてください」



 ミリアがそう言うと宮使いたちは慌ててミリア一行を受け入れる。

 そして客間に通されしばし待たされるのだった。



 * * *



 コンコン。



 客間の扉がノックされミリアと同じような衣装を着た女性が入ってくる。

 ミリアより年上なかその容貌は美しい大人の女性であった。


 「久しぶりねミリア。まさかあなたが勝ち進んでくるとは思わなかったわ……」


 「お久しぶりです、ヒルディア。大巫女様の通達を持ってきました」


 言いながらミリアはスクロールを引き出す。

 それを受け取ったヒルディアは首からかかっているペンダントを外すとスクロールにかかげる。

 途端にスクロールが反応してひとりでに開き、宙に浮く。


 そしてまたあの妙齢の女性の像が浮かび上がる。



 「一の門を勝ち進んだ巫女たちよ、次の二の門を開催する。これより七日後天空の城にて二の門を開く。二の門は『香り良きもの』とする」



 それだけ宣言するとそのスクロールは勝手に燃え尽きてしまった。

 それを受けたこの場にいる者たちはいつの間にか跪き、頭を下げている。


 「「大巫女様、承りました」」


 そ言ってミリアもヒルディアも立ち上がる。



 「ミリア、正直あなたが勝ち進んでくるとは思わなかったわ。でも手加減はしないわよ?」


 「ヒルディア…… 分かっています、ソエの分まで私は全力でやらせていただきます」


 それだけ言ってミリアは踵を返し部屋を出て行く。

 京子は慌てて一礼だけしてミリアを追うがクルムはフードを外しヒルディアを見る。



 「お前は!? 赤眼の魔女か……」



 「大巫女選定が始まったからもう邪魔は出来ないし何も言わない。だがミリア様には私が付いている。巫女ヒルディア様、こちらだって手加減はしない」


 「赤眼の魔女がミリアについたとは言え、これは大巫女選定。いくらあなたの膨大な魔力でも料理には手出しが出来ない。我がバツナンダラ王国は豊富な海産物を抱える国、この勝負何の変哲もないミリアの国に勝ち目はないわ」


 ヒルディアはそう言うもののクルムは眉一つ動かさず踵を返す。

 そして去り際に一言いう。



 「それでも私たちは勝つ、ミリア様を大巫女様にする為に」



 それはたとえ何を犠牲にしても成し遂げなければならないクルムの悲願。

 

 ヒルディアはそんなクルムの後姿をただ見送るしか無かったのだった。

   

 

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