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契約


誤字脱字、気になる方は教えて下さい、一応見直しはしているのですが書いてる本人はわからない事も多いので…


え?別小説の誤字直せ?…前向きに頑張ります。


暖かい、この暖かさはなんだろうか…ベッド?いや、違うな…


「おい。」


暗い、まるで水の中の様に体が動かない、意識が、体が動くことを拒否している様な、そんな感じだ。


「おい、起きろ。」



だが、それも仕方がない、なにせ俺は昨日…



「…ふん!」

「ぐあ!?」


急速に意識がはっきりとして、俺は自分がベッドの上にいる事と昨日会った赤竜の人間形態が俺の腹に尻尾を叩きつけたのだと認識する。

意識がはっきりとし彼女を目にした瞬間体は戦闘態勢を取ろうとするが体がうまく動かない、なんとか距離をとって立とうとするが膝から崩れ顔を床に叩きつける事となった。


「ふむ…やはりか、貴様は少々無理をしすぎたな、魔力は枯渇しその年にしては鍛えられた体も私の一撃を耐える前からボロボロだった様だ。」


そういうと彼女は俺を抱えいきなり口付けをしてきた。


「!?」

「うふぉふな(動くな)」


口に痛みが走り血の匂いが鼻に抜けると突然俺の体は焼け付く様な痛みに襲われる。


「うっ!がぁああ!?」


魔力が内から無尽蔵に湧き出しそれが体の隅々まで駆け巡る。血流が加速し鼓動も早くなる。そして何より、熱い!


「感謝しろよ?私の血液を飲んだ人間は限りなく不死に近い生命力を得る。今回はその代わりに勝手に契約をさせて貰ったがな。」


一体、何をいってるんだこの痴女ドラゴン!卵があるっていうことは普通に考えて番いもいるんじゃねえのか!?


「案ずるな、はじめての接吻だ。…甘酸っぱいと聞いていたが朝食と血の味しかせんな…残念だ。」


ナチュラルに考えを読むとかドラゴンのファーストキスとか色々突っ込みたいことはあるが…俺は体に起きた凄まじい変化が収まり、体を内から焼き尽くす様な熱が未だ引かない状態で彼女に問う。


「何故…助けた?」

「ふむ…そうだな、貴様には知る権利がある。ならば教えん道理は無いだろう。」


そういって彼女は魔力を感じさせる羊皮紙を取り出した。そこには俺には読めない言語で書かれた契約内容の様なものがあった。


「さっき私が言った事を、いやそれよりも昨日私が言った事を覚えているか?」

「昨日…」


俺は未だに引かない熱にふらつきながらもどうにか立ち上がり昨日の記憶を思い出す。…復讐心はあるが彼女を殺して死んでは意味がない、竜教団を壊滅させ、そして彼女を倒さねばならない、今ここで襲いかかりたい気持ちをぐっとこらえて思索の海に潜る。



「ああ、確か…修行をつけてくれるとかなんとか…あと…契約?か。」

「そうだ。そんな今にも倒れそうな顔色だがなかなか頭が回っている様で何よりだ。そう、私は貴様を私を殺せるかもしれ無いと思えるレベルまで育てる。そう決めた。」


彼女が手招きをするので渋々席に着く。

見回せば見回すほどただのログハウスだが…


「なんでそんな事を?」

「ふふっ…こう長く生きていると死に時を見定めるのも難しくてな。まぁ、あと数百年は生きるつもりだが自決というのも芸がない、戦って死んでこそ竜の誉れよ。」


彼女はどこから持ってきたのかわからないコーヒーを啜る。


「んう…苦いな。」

「…知らずに飲んだのかよ。」


こんな間抜けが父を殺したとか、俺の仇だとか…なんだか悲しくなってきた。


「まあ、それに貴様の父は怒り狂った私を数時間釘付けにした猛者、貴様も努力すればそうなれる素質は十分にある。」


再び真剣な顔になって彼女はいう。


「自己満足的な理由もある。私の短気で平和な暮らしを失った貴様や貴様の父の対する罪滅ぼしだ。元来私は人間というものを好んでいてな。挑む者には全身全霊で返り討ちにするが貴様らを根絶やしにしようなど思った事もない…ただ、今回ばかりはそんな理性も残さず吹き飛んでしまったがな。」

「……」


彼女の怒り、自身の子がさらわれそして間接的に生み出された彼女の娘が言うのもおぞましい実験とやらの犠牲となりあんな結晶に押し込められていたのだ。

俺も人間だ。彼女がどうして怒り狂ったのかもわかったし、竜教団が人類は竜によって支配されるべきだとかいう頭のおかしい教義を唱えているだけで竜達全員がそんな事を考えていないというのもわかる。

だが、それで彼女を許せるわけでは無いし、たしかに人の街を焼き払うのが手っ取り早いし合理的だと思うが、それで俺の家族が、知り合いが、故郷が焼き尽くされる理由にはならない、今この瞬間復讐者としての俺はわかり合うことは出来た。

だがそれは赦しだったり、哀れみにつながったりすることなくただただ理解という結果が生まれただけだった。


「理解はできた。共感もできた…だが、それでお前を許すかと聞かれれば無理だ。父は勇敢に戦い、国のために民のために尽くした。何よりその名誉ある闘争の中での名誉の死という騎士の誉れを成し遂げた。父は満足して死んだかもしれない。だがそれでも、残されたものには死者の気持ちなどわからない、いや関係ないんだよ。例えお前に理由があろうと父がその途中で死んでいい理由にはならないし死んで欲しいと思うわけもない。なんの為でもなく俺のために俺が区切りをつけるためにお前を恨んで竜教団を恨んで、報復せんと怒り狂ってるんだ。」

「そうだな、そこで私はお前を利用することにした。」


そういうと彼女はコーヒーに砂糖と牛乳をダバダバと入れた。…果たしてそれがコーヒーなのかすごく色々と言いたいが真面目な顔をしているので何か言うことがあるのだろう。


「私は竜教団という物を一切残らず消しとばしたい。幸い娘も我が子も無事だったが報いを受けさせたいのだ。だが奴らにとって竜に焼かれるなどただの褒美、天の恵みと言うやつよ、苦しみなどなく歓喜の中で死んでいくだろうな。」


彼女はとびきり邪悪な竜の様な顔をして笑う。


「だから貴様を鍛え、人間の手によって奴らには滅んでもらうことにしたのだ。」

「…俺はその代わりにお前を殺せるまでお前に挑むことが出来、お前は俺がお前を殺せる様になるまで俺を鍛える。そう言うことか…」


竜は笑う。


「そうだ。人間、いやアレン・エクィテス。貴様は邪悪な竜たる私ディスティクムの虜として、我が約定の元竜教団を滅し、そして…私を殺せる勇者となってもらう。」


高らかに、そして美しく。

その身に宿す深紅の魔力をうねらせながらその美しい髪を振り乱し宝石の様な竜眼で俺を射抜く。


俺はそれを見てそして契約を聞いて、彼女に負けず劣らずの邪悪な笑みを浮かべた。

復讐の為に報復のために復讐者を利用すると言い切ったこの狂った竜、その虜であると言うのもまた殺しがいがあると言うもの、復讐の相手が強く彼女に立ち向かった父や兄らの勇敢さを思えば思うほど彼女が最後どんなふうに殺されてくれるのか、考えるだけで活力が湧いてくる。


邪悪な笑いは共鳴し恐ろしい赤竜の住処である魔境にこだまする。


「びええええええ!」

「あ、すまん、娘が…」

「…ああ、そういえばそうだったな。」


そしてそれは一人の幼女の泣き声でピタリとやんだ。


こうして、今世では14歳の転生者は復讐のために仇に鍛えられるのを良しとし、仇は復讐者を育てるのを良しとした。あまりにいびつな師弟関係は見るものが見れば狂気の沙汰だが彼女らにとってはこの上なく素晴らしい利害の一致であった。

そしてそれは後に魔法剣士とも魔法戦士とも言われる異色の戦いを見せる異形の戦士の始まりでもあった。

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