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悪魔との契約  作者: 鷹崎鮪
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悪魔との契約

暗いな。


無気力に、彼はそう吐き捨てた。


窓越しの空は、灰色の天井をつくるように、覆っていた。晴れていれば、今頃、太陽は南中している時刻だが、あの空からは、太陽の存在も伝わらない。


そんな時……


「 ──── ‥n◯◯町で町全体を覆うほどの大規模な火災が起きました ───」


えっ‥‥?


はっきりと聞こえた。周りの音より、繊細に、はっきり耳のなかに伝わってきた。


朝食をとっている手が止まる。


そして、テレビの中継は、消防隊によって消火された無惨な跡が映っていた。


瓦礫が一面を覆い、建物は崩れ、コンクリートまでも黒々と染めあげていた。


無残にも残された町は、跡形もなく、以前どうなっていたのかも分からない状態に……。空と焼けた町、全てが灰色に染まっていた。


「えっ………?」


食器を投げ捨て、フロアに広がる、障害物を蹴飛ばしながらテレビへと駆け寄る。


そして、画面に目立つ形で、、、


[死者○○○人]


町はほとんど全滅だった。


「…………………」


身体中を何かが駆け巡る。そして、その何かは激しく、荒々しく、僕の中を削っていく。


そんなことって……そんな……


テレビに映されているのは、無表情な灰色の町だけだった。


彼は、次々と襲いかかる何かに耐えきれなくなり、あらゆるものを吐き捨てていく。そして、彼は再度自分の無力さを知った。


「うっ……ぐっっ………父さん……………母さん…………………僕が立派になるまで…………育ててくれたのに、僕は………僕は……………何もしてあげられなかった…………」


自分の中の芯が、ポキリと小さな音を立てたように、折れた気がした。


そして彼は、ひとしきり泣いた後、長い間、ただ呆然と立ち尽くしていた。


そして、俺は人間を喰らった。



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