悲恋
━━休日の午前10時
陽の光をうけ、徐々に暖かくなるこの時間帯。徒歩数分で着く距離には、公園があり人がいない日はないのではと思うぐらい毎日誰かしらいる。
道に平行して植えられている街路樹は、夏の青々さはなくなったものの、秋の華やかな赤色へと準備をしている。
この場所は静かでのんびりとしていて、とても居心地が良いため、幅広い層に人気である。もちろん、猫や犬、野生の生物も例外ではない。彼らも人間と同じようなものだ。
午前中の涼しい風が頬をそっと撫でる。この辺は自然豊かで、空気が澄んでいる。澄んだ空気の中、これからの予定を決めるべく、木が頭上を覆うほどの木の下に位置するベンチに腰かけた。
「ふぅ....」
一息つくと気持ち的に動きたくなくなる。彼女は隣にすっと腰かけ一息つくなり、
「なんか落ち着くね~」
休みをご満悦してるようで何より何より。身体を伸ばし、深呼吸し始めた彼女は、一人だったら間違いなく寝そうなほどのんびりしている。
とか考えてるうちに自分もだんだん眠くなってしまった。まぶたが強制的に閉じようとする ────
* * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「・・・んあ??」
肩に違和感が....
目を開けて違和感のあるほうを見ると、彼女が焦ったというような顔つきで肩を揺すっている。時計を確認してみると、2:48を示していた。そのまま1,2分携帯を眺め、やっとのことで我に返った。
「どうしてずっと寝てるの!!」
「ごめん.....てか、そっちだって気持ちよさそうにさ」
起きるとすぐ、お互いが寝ていたことについての言い争いになった。これに関しては、もうどっちが良い悪いは無いかなと思えた。気分よく寝れたことだし結果オーライってことで......予定はかなり狂ったが.........。
「でもさ、今日は俺のミスってことにしよう、、、。だから、今日は君の行きたいとこに行こう!」
「え?いいの??」
驚いた顔で言ってくるのを相づちで返した。もちろん、これには裏がある。実のところ、彼女の好きな物、好きなことを事前に知っておく。つまり、当初の目的を自然な形で果たせたわけだ。
「じゃあ、のんびりはしてられないね!」
と、嬉々として喜んでいたのも束の間、強引にも手を引っ張って
「行こう!」と言った。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
━━あの時、彼女は喜んでいたのだろうか。あれは、あれは、全部が全部演技だったのだろうか。
演技だとしたら...もう....何がなんだか分からない........俺が尽くした全てが意味なんてなかったなんて.......思いたくない....。
僕は..結局...愛されてたのだろうか....。愛されてたとしても今はもう.....信じることさえできない。愛されてなかったとしたら、もう何もかも信じられなくなる.....。
”好き”とか”愛してる”とかは曖昧だ。本当に相手が思っているのか分からない...感じることは出来たとしても、本当に好きかなんて確証はどこにもない。
どれくらい好きか、その好きは本当の好きなのか、それとも、上辺付き合いの好きなのか、それは、”悪魔”にしか分からないのかもしれない。
僕はあんなにも楽しかったのに...僕だけ楽しんでいたのだろうか....それは....それは.....なんて残酷なことだろうか......
━━”愛情”なんて目に見えないものを
易々と信じてはいけない━━
こうして、男は”愛情”というものを失くした。