勇者集合。そして、さらば
勇者が旅に出て15年が経った。
勇者は選定された当時、15歳の少年であったが、周りの助けを受け、山を、谷を、川を、砦を越えるたび、魔物や魔族と戦うたびに大きく成長した。
また、四大精霊の祠でそれぞれ試練を受け、無事に試練を乗り越え、不完全ではあるものの加護を与えられた。その結果、大きく成長した。
そうして、頼りになる仲間を集めて戦い続けたことにより、人間対魔王の戦線を徐々に東へと押し返し、魔王の国へと逆侵攻をするまでに至っていた。
そんな中、王都にて四大精霊に選ばれた者たちが集まった。
「おぉ。おまえらが大精霊に選ばれた奴等か。私は水の大精霊に選ばれた水の勇者だ。よろしくなっ。」
今世でも女に生まれた私は、髪を翻しながら他の転生者に声を掛けた。
「初めまして、お嬢さん。ぼくは風の勇者ってやつだね。こんな格好だけども気にしないでよろしく。」
どういう訳か、パジャマ姿なのが気になるが、まぁいい。
「おいどんは土の勇者。よろしくでごわす。」
そもそも本当に人間なのか、身長が2メートルはあるし、体つきもムキムキのマッチョだ。オーガって聞いた方がまだ理解できるんだが。
「私は、火の勇者なのだ。よろしくお願いするのだ。」
こっちは、ガリガリだな。
「おう、よろしく。みんな素手なのはともかく、これからどうするんだ?勇者を追うにしても、逆侵攻したせいでこっからだと合流するにはかなり遠いぞ。」
それに海の開放をする必要もあるしな。
「そこなんだけどさ。お嬢さんは、水の勇者ってくらいだから船乗れるの?」
「任せろ。船の事なら前世でも現世でも右に出る者はいねえ。船も水の大精霊にもらったからあるぞ。」
「それは至れり尽くせりでごわすな。」
「なら、お嬢さんに測量してもらいたいんだよねえ。」
それは構わないが、何でなんだ?
結果として悲しい出来事が分かった。
陸地を東へと進んで行くと魔王のいる魔国に着くのだが、西の海を突破すれば、王都からおよそ100キロほどで魔国に到達するということだった。
「海が封鎖されてるとはいえ、面倒な選択をするものなのだ。」
これなら、私の目的も果たせるし、近いし、一石二鳥だな。
「よし。海を越えよう!!私の船、クイーンズ・アンズ・リライフ号に乗れっ!!」
私たちは、海を越える物資を集めて出港した。
さて、そろそろかな。
「止まれ!我々は崇高なる魔王様の海軍。私は海軍を預かる将軍である。この海を渡らせるわけにはいかぬ。」
「おぉ。イカが話している。」
どうやって話しているんだろうな。
「だが、断るっ!!そもそも、お前ら何で海を封鎖しているんだ?」
「決まっている!!魔王様の命令だからだっ!!!」
「バカ野郎っ!!!てめぇらっ!それでも、海に生きているのかっ!!海は何だ?自由だ。そうだろっ!!何にもとらわれない、それが海に生きる奴等の生き方ってもんだろうがっ!!」
「うっ。確かに。」
周りの海の魔物から声が漏れ始めている。
「俺たち、海に生きる奴らがとらわれていいのは、約束と仲間の頼みだけだっ!!!おまえら、魔王は仲間か?魔王に従うのが約束か?ただ従っているだけなら、そんなの俺たち海の人間じゃねえ!!」
「うおおおおっ!!熱いぜっ、姉ちゃん。」
「なんだ、この胸の高鳴りはっ!俺、骸骨船長だから胸骨しかないけどっ。」
「俺のエラも震えてるぜっ!!!」
魔物たちから熱い声援が聞こえる。
「お前らっ!!俺は、仲間を魔国に運んだら、自由に海を生きるっ!!!お前らも付いてこいっ!俺が自由な海の生き方を思い出させてやるっ!!!」
「姉ちゃんっ!!いや、姉御だっ!!!」
「そうだ!姉御ーーーーー!!!!」
「姉御ーーーー!!!」
「待てっ、貴様ら。」
「何だイカ野郎。何か不満か?不満があるなら、失せろ。やるってんなら相手になるぞ。」
「ちがう!!姉御じゃなくて、俺らの大将だ。船長と呼べーーーー!!!」
「「「「うおおおおおお!!!船長ーーーーーーー!!!!!」」」」
「よしっ、おまえらっ!!世界の海はあたしらのもんだっ!!まだ見ぬ世界を見に行くぞっ!!!」
「「「「おおぉおおおおおおおお!!!!」」」」
私は、他の転生者を魔国に降ろすと、海の魔物を引き連れて新大陸を目指して、航海に旅立っていった。
水の大精霊。私は友達の約束は果たしたぜっ!!!
後年。海の魔物を引き連れた人間が新大陸を見つけ、新たな貿易ルートを見つけ富を生じさせる一方で、海賊行為を行い、それを捕縛する船を撃沈することから、海の魔王と呼ばれるようになったとかならないとか・・・・
その頃の魔王城。
「魔王様っ!海軍が全て離反しましたっ!!」
「えっ、嘘?何で??」