黒井と彼女の契約5
「どうして辞めるのよ、八葉」
高校の廊下で、八葉は呼び止められて足を止めた。振り返ると、バスケットボール部の先輩が、戸惑ったような表情で立っていた。
「貴女、仲の良い友達が沢山いるじゃない。人一倍頑張ってきたじゃない。マネージャーとしてでも良い。残って欲しいわ」
八葉は、呼吸が止まった。バスケットボール部で過ごした思い出が脳裏に蘇ってくる。しかし、八葉にとってそれはもう過去のことだった。
この学校の、強豪でもない小さなバスケットボール部に、マネージャーなんて必要ないことを八葉は知っていた。
「私は、良いんです。膝が壊れて、もう全部、終わったことだから」
「終わったって……皆、貴女と一緒にいたいって、そう思ってるのよ?」
「迷惑は、かけれないから。きっと、気を使わせるだけです」
「本当に、そんな風に思ってるの?」
バスケットボール部の先輩は、戸惑うような表情だった。
「私は貴女のこと、歳は違うけれど、友達だと思ってたわ。けど、違うの?」
彼女は、縋るような視線を向ける。
八葉は戸惑った。言葉が、出てこなかった。彼女の発言を、なんてありがたい言葉だろうと思っているのに、返事ができない。
返事をすれば、相手に負担をかけるだろうと、思い込んでいたから。
「わかったわ。私も、貴女のことを忘れる」
彼女は、八葉に背を向けて去って行った。
その背中に、八葉は手を伸ばしかけて、やめた。
気を使わせてしまうのは、事実だと思ったからだ。
いつからだったろう。他人に気を使うばかりで、自分の本心を隠すようになったのは。穏やかな表情を取り繕って、適度な距離を保つようになったのは。
それは大人になるということだったのかもしれない。けれども、寂しいことでもあると八葉は思うのだ。
それは、何年も前に、現実世界で起こった出来事だった。
++++
「いやあ、凄かった」
闘技場の外で、シアンは興奮した調子でそう言っていた。
「何度も聞いたよ」
一緒に観戦に来ていたリルムが、苦笑交じりに言う。
二人は港町の対人ギルド、プルートゥーのメンバーだった。首都の覇者スピリタスはどんな強者揃いなのだろうと、足を伸ばして見学に来たのだった。
そこで見たのは、歌世と言う素早さ特化の騎士だった。彼女はシアンが見たこともない速度で動き回り、敵を次々と瞬殺していった。
あれほどの速度で動き回るキャラクターを扱うプレイヤーに、シアンは賞賛の念を惜しまない。
「良いことがわかったよ。鎧と盾を捨てて素早さを高めれば、効率良く対人戦をこなせるんだ!」
「ああ、また……。シアン、影響されやすいのがあんたの悪い癖だよ。あんたのキャラ、タンカータイプじゃん」
「これから素早さを上げれば良いんだよ。丁度、麦藁帽子と両手剣のエンチャントが成功しちゃったから、扱いに困ってるんだ。スピードタイプにシフトチェンジするなら、それも活かせる」
「うちにはマジックガードを使えるほどレベルの高い魔術師もいないのよー? 素直に鎧を着て、陣形を整えることを考えなよ」
「憧れるだけなら勝手でしょ。リルムは現実主義的過ぎるよ」
「シアンは夢想家だわ。けど、そのほうがレベルを上げるには良いかもしれないわね」
無意識に、上から見た物言いをする。リルムのそんな所が、シアンはたまに引っかかる。
その時、シアンは、闘技場の参加者受付窓口で立ち尽くしている男を見つけた。
彼は受付のノンプレイヤーキャラに話しかけて、困っているようだ。
「どうしたの? もう参加受付は終わったよ?」
シアンが声をかけると、男は困りきった表情で振り向いた。布の服を着ていることから、初心者なのかもしれないとシアンは思う。
「そうなんですか? もう、戦いを見れないんでしょうか?」
「ああ、戦いを見るだけなら簡単だよ。入るだけなら無料だ」
シアンが微笑んで言うと、男はまるで子供のように無邪気な笑みを見せた。
「本当ですか?」
「ホントホント。お姉さんについてきなさい」
そう言って、シアンは先頭を歩き始めた。その後に、リルムと男が続く。
シアンは闘技場の中に入り、観客席へ向かう階段を上がっていった。そして、開けた空の下に出た時、熱狂的に叫ぶ観客達の中にシアン達はいた。
闘技場の席は全て埋まり、立ち見の観客達も多い。その一人一人が、熱狂的な歓声をあげている。
「す、凄い声ですね」
男は、戸惑うように言う。
「今日はお祭り騒ぎだからね。ほら、あのキャラを見てみな」
そう言って、シアンはリングを指差す。丁度、歌世が戦っている所だった。
歌世に向かって敵が剣を振るう。それを圧倒的な速度で掻い潜り、彼女の短剣は相手の喉下を切り裂いていた。そして、彼女は敵の遥か後方に着地する。
「凄い、明らかに素早さが違う……」
「動きの正確さもだ。あんな的確に急所を狙えるもんじゃない。あれは、かなり熟練のプレイヤーだよ」
「僕も、素早さタイプの騎士を作ってみようかな……」
「そうだね。最初に作るキャラは素早さタイプが良いかもしれない。回復アイテムをあんまり使わないからお金が溜まる。ただ、素早さを上げすぎると反応が敏感になりすぎて扱いの難しいキャラになっちゃうけれど」
素早さを高めすぎたキャラは、反応が敏感になる。だから、反射神経を必要とされるステータス振りと言えた。
「あと、タンカータイプも将来的に作ってみると良い」
「タンカータイプ、ですか?」
「耐久力と、移動用の素早さに振ったタイプのキャラだよ。野良パーティーの皆に頼られるのはこっちのタイプだ。装備を整えたら、作ってみたらどうかな」
男は、表情を緩めた。
「考えてみます。まずは、あの人みたいに格好良い素早さタイプのキャラを作ろうと思います」
タンカータイプも格好良いんだけれどな。シアンは心の中でそう思ったが、初心者相手に長々と説明するのも躊躇われた。
「よかよか。最初はなんでもやってみるのが良いよ。ただ、貯金はしっかりして、いつでも路線変更できるように備えるようにね」
「わかりました!」
素直で可愛らしい男だ、とシアンは思う。
「じゃあ、私達はこれで行くよ。ギルド会議があるんだ」
「あの……」
男が、躊躇いがちにシアンを呼び止める。
怪訝に思いながらも、シアンは立ち止まった。
「僕、グリムって言います。また会ったら、色々教えてくれませんか?」
「うん、良いよ。同じ騎士みたいだから、教えられることもあると思う。次に会ったらなんでも聞いてくれ」
そう言って、シアンは手を振ると、その場を去った。
「安請け合いしたわねえ」
リルムは、苦笑交じりに言う。
「この広い世界で住む町も違うんだぜ。もう会うこともあるまいさ。私は小柄だから、人ごみの中じゃ埋もれちゃうしね」
「あら、酷い。二度と会えないこと前提であんなことを言ったんだ」
「いや、すれ違うことぐらいはあるかもしれない。なんつったっけ、あの子」
「えーっと……グリルとか、そんな名前だったと思うけど」
「まあ、そのグリルと会うことがあったら、それこそ運命だ。色々教えてやるさ」
「首都と港町よー。そんな偶然あるかしら」
リルムは、呆れたように言う。
「あったら、プロポーズでもしちゃうわ。運命的じゃない」
冗談交じりに言ったものの、もう二度と会うことはあるまいと考えていたので、シアンはすぐに彼の名前を忘れた。
++++
歌世は順調に準々決勝まで駒を進めていた。
控え室で、リヴィアの横に控えた環が、苦笑顔を浮かべる。
「もう、スピリタスの面目は丸潰れだねえ、リヴィア」
「歌世を相手にするのよ。それぐらいの結果は想定済みです」
リヴィアは出来るだけ、淡々とした口調でそう答えた。
しかし、旧友である環には、リヴィアの内心はお見通しのようだ。
「ウキウキしてるじゃない。デートの前の女の子みたい」
図星を指されて、リヴィアは苦い顔になる。
「女の子って歳でもないわ。しかも相手も女よ。デートって例えは不適切だわ」
「貴女はそういうところ、生真面目だよね」
環は、とぼけた調子で言う。
「例の、歌世に呼び出されたメンバーの様子はどう?」
リヴィアの淡々とした言葉に、環は顔から笑みを消す。
「怯えてるわ、皆。名指しで呼び出されたのも、公衆の面前で惨敗したのも、よほど堪えたのね」
「そ。立場が逆転してしまうと、人間弱いものね」
リヴィアは、淡々と言った。怒りもなく、失望もなく、あるのはただ後悔だ。事態が進行するまで何も気がつけなかったのは自分の不手際だ、という思いがリヴィアの中にはある。
「また、ギルド解散するーとか言い出さないでよ? 貴女がブレーキ役になれる人だからこそ、こういう時もやっていけるんだから」
「しかしね、野良パーティーに行くような人達は、幹部に一任してたわ。その幹部まで"ハズレリスト"作りに関わっているとは思わなかった。どう考えても、私の能力不足よ」
「けれども、修正できるのが貴女の強みじゃないかな。悪いけれど、貴女の代わりをできる人間なんてギルドの中にはいないわよ。私も含めて、貴女に頼っている状態なんだから」
「……後進の育成と世代交代の促進は急務だなあ。私も、そのうち就職するんだから」
「放り投げたいだけでしょ」
「……そう言われたら、やり辛いな」
「知ってる」
環は何がおかしいのか、愉快げに微笑んだ。
その時、一際強い歓声が観客席から響いてきた。
「ちょっと、見てきてくれる?」
「了解」
環はそう言って、観客席へ繋がる階段へ駆けて行く。そしてしばらくして戻って来ると、戸惑ったような表情でこう口にしていた。
「ヤツハちゃんが、リングに立ってる」
「は?」
リヴィアは、思わず目を丸くして、そう言うしかなかった。
++++
ヤツハは戸惑っていた。
どうして自分が闘技場のリングに立っているのかがまずわからなかった。さっきまで自分は、観客席に座って戦いを見ていたはずではないか。
それがどうしてか、今、歌世の目の前に自分はいる。
ヤツハは混乱するしかない。
歌世は頭を抱えて、苦笑いを顔に浮かべていた。
「まったく、あの管理者ヅラした人工知能。本当好き勝手法則を捻じ曲げるわね。対戦相手まで変えるとは」
「対戦相手を、変える?」
「アリサの仕業よ。私の相手は、貴女になったわけ。私が負ければ、引退を取りやめると思ってるんでしょうね」
歌世の言葉に、ヤツハは思わず唾を飲み込んでいた。
「……歌世さんは、負けたら引退を取りやめるんですか?」
ヤツハは、気がつくとそう訊ねていた。馬鹿げた問いだと思った。別れの言葉は交わしたのだ。黙って見送るのが大人だとも思った。
けれども、ヤツハは訊ねてしまっていた。
結局は、未練を捨てきれていなかったのだろう。
歌世の隣に自分がいる。その環境は、心地良かった。その憧れの感情は、恋心にすら似ていたかもしれない。
歌世は、微笑んだ。
「……取りやめるって言ったら、どうする?」
ヤツハは、黙り込んだ。
「怖い顔してるよ、ヤツハ。いつも穏やかにニコニコ笑っているのに、その仮面が脱げている」
歌世は、苦笑顔で言う。
確かに、穏やかな表情を作れていないと言う自覚はあった。それは、自分自身でも珍しいことのように思えた。
ファンファーレが鳴る。
動かねば、ヤツハは歌世に一瞬で斬り殺されるだけだろう。それで、全ては終わりだ。
けれども、動いたならば、何かが変わるかもしれなかった。
歌世が地面を蹴ろうとする。その瞬間、ヤツハは魔術を唱え終えていた。
土壁がヤツハの前に高々と生える。それは、歌世の姿を完全に隠していた。側面に彼女が回ろうとするのはお見通しだ。ヤツハは周囲に土壁を次々に生み出していき、それを防ぐ。
そして、自分の姿が隠れたのを見計らって、アイテムボックスから白銀に輝く杖を取り出した。魔力を高める神器、イグドラシル。これがあれば、不可能はないとすら思えた。
ヤツハは土壁を次々に生みだし、邪魔なものは消していく。そして気がつくと、リングは土壁の迷路と化していた。
歌世が土壁を蹴って飛び上がり、その上に這い上がる。
炎の嵐がそれに向かって襲い掛かった。
イグドラシルがあれば、ほぼ無詠唱で発動する低い火力の魔法でも、歌世の息の根を止めるには十分だ。
歌世は土壁の迷宮へと落ちて、炎の嵐を回避した。
思い出されるのは、高校生時代のことだ。部活の先輩の背中に、手を伸ばせなかった時のことだ。
あれで、ヤツハは色々なものを失った。友人も、居場所も。
そして今、ネットの世界で、ヤツハは新たに得て、また失おうとしている。
それは、嫌だった。
感情論であることはわかっている。それでも、嫌だったのだ。
人の身の丈ほどある巨大な氷柱が空中に浮かび上がっては落ちていく。それは無差別に、この土壁の迷宮にいる敵へと襲い掛かっていった。
++++
「あれが、攻城戦フィールドで土壁が禁止スキルにされている原因だよな」
シュバルツが、淡々とした口調で言う。
「複数人の魔術師に土壁を唱えられると、あっという間に城を封鎖できちゃうしね」
シズクも淡々とした口調で言う。
「いや、あの、詠唱速度おかしいんですけど。なんであんな次から次にスキルが……?」
リンネは目をまん丸にして、土壁の迷宮となり、巨大な氷柱が降り注ぐリングを眺めている。
「私はもう理解を諦めた。上には上がいるってことだろ」
シズクの声は、投げやりだった。
「……ヤツハさんは、歌世さんを止めたいんですね」
僕は、呟くように言っていた。
「あいつにしては上出来だよ」
シュバルツは、何故か複雑な表情でそう語っていた。
「まあ、負けるけどな」
「負けるね」
シズクも、淡々とした口調で言っている。
「それは、どうして?」
僕が訊ねた時のことだった。
土壁の上に這い上がった歌世が、明確な目標をめがけて短剣を投じていた。
++++
ヒットポイントが減ったことによって、ヤツハは背後から襲われたことを理解した。
振り向きざまに、火炎の魔術を放つ。しかし、既にそこに歌世はいない。
相手が何処にいるかわからない。その恐怖を感じながら、ヤツハは駆け始めた。
どうして相手は自分の背後を取れたのか。その問いの答えは出ない。
悔いるのは、観戦に徹するつもりだったから回復アイテムを持ってきていないことだ。今減ったヒットポイントが回復することはない。それが、ヤツハは悔しくてたまらない。
土壁の迷路の構造を組み変えながらヤツハは移動し、再び氷柱を地面に落とし始めた。
そして、ヤツハは、自分のヒットポイントがゼロになっていることに気がついた。致命傷を与えられたのだ。
アバターが倒れ、地面が近付いてくる。
そこを、すんでの所で歌世に抱きかかえられていた。
「……良く頑張ったね、ヤツハ。周囲に見えないように神器を使ったのは、ファインプレーだった」
優しい表情で、歌世は言う。
「あんたは人との間に壁を作って、本音を隠す傾向のある子だった。だから、心配な子でもあった」
ヤツハが死んだことにより、リングを覆っていた土壁も消えて行く。それらがなくなると、真っ青な青空が視界に広がった。
「けど、歌世さんは、手を伸ばしても行っちゃうんでしょう……?」
思い出すのは、バスケットボール部の先輩の背中に手を伸ばしかけた時のことだ。
あの時も、ヤツハは失った。
そして、今もまた、失おうとしている。
どうしてあの時、自分は手を伸ばせなかったのだろう。そんなことを、今更思う。
失った友達や居場所のかけがえのなさを、今更思い知る。
「ああ、私は行く。だけどね、ヤツハ。きっと今に、あんたが、掴まなくちゃいけない背中が出てくる。その時、今みたいに勇気を出してほしい。他人に心を開けるヤツハになってほしい」
「心閉ざしてました? 私」
ヤツハは苦笑する。
「……穏やかな表情を作っていることが多くて、しょっちゅう本当の感情を隠す。それが私は、いつも心配だった。小屋でビンタされた時はちょっと吃驚したけれどね」
「そっか……」
まだまだ、子供扱いされていたと言うことか。ヤツハは、苦笑する。
「やめるならやめ方って言うのがあるはずでしょう?」
「私は、やめ方について歌世さんに一言告げたかった。きちんと事情を教えて欲しかった。それも聞き入れられないというなら、仕方ありません」
「ゴルトスさんにも、シュバルツにも、しっかり解散するってことを告げてください。ギルドマスターとして、やるべきことをやってください。本当のことを教えてもらえないならば、私の言いたいことは、それだけです」
「ええ。大人ですからね。みっともなく追いすがったりはしませんよ。ただ、別れるならきっちりと別れたかっただけです」
思い返してみると、小屋で交わした言葉の大半はヤツハの建前だった。それを、歌世は見透かしていたのだろう。
「だから、最後に、あんたの本音を見られて良かったと思ってる。傍にいてあげられないのは、悪いと思うけどね。残っているシンタくんには、そうやってばんばん本音を見せてあげなさい」
この人はこの世界から本当にいなくなるのだ。今更、そんなことを再実感するヤツハだった。
「どうして負けたんでしょう、私」
勝てば、違った未来もあったかもしれない。けれども、ヤツハは負けた。その敗因を、知っておきたかった。
「魔術の角度や位置だよ」
歌世は、淡々と言う。
「どうしても魔術はあんたを中心にして発動する。だから、魔術が発動した位置や角度から、あんたの位置を逆算できるんだ。あんたの手数が多ければ多いほど、私に位置を割り出すヒントを与えているようなもんだった」
「なんだ、そんなことか……悔しいなあ」
ヤツハは、両手で自分の頭を抑えた。そして、呟くように言った。
「さようなら、歌世さん」
今いる人を大事にしようと思った。
シンタや、シズクに、少しずつでも壁を作らない自分を見せてみようと思った。
いきなりは変われないかもしれない。けれども、ちょっとずつ自分を変えて行こうと、そう思った。
++++
「負けちゃいました」
苦笑交じりに言って、ヤツハが観客席に戻って来る。
「お疲れ」
シュバルツが、いつになく優しい口調で言った。
「お疲れ様」
僕も、労いを込めてその言葉を発した。
「……思ってた以上に化け物だった」
リンネが呟くように言う。
「うん、レベルが知りたい」
シズクもリンネと似たような感想だ。
「ねえ、シンタくん」
「なに?」
急に話しかけられて、僕は戸惑う。
「いつか君に、話さなければいけない話ができたのかもしれない」
「話さなければいけない話?」
どんな話だろう、と僕は思う。
「今は秘密、ね」
苦笑混じりに言って、ヤツハは席に座った。
長かった黒井と彼女の契約も、あと1話か2話で終わります。
その次の予定はまた未定です。
グリムとシアンが好きなので隙あらば出したいと思っています。