帰り道
八、帰り道
お化け屋敷のあとも、四人は遊園地を思い切り楽しんだ。特に由紀は、出来るだけ博仁に女の子らしいところを見せようと、いつも以上にはしゃいで見せた。そんな由紀を見て博仁が、「櫻木は小学生みたいだなあ」、と言ったほどだ。
航と真奈美もいつも以上にいい雰囲気で、常に二人並んでアトラクションを楽しんでいた。なので、自然と博仁と由紀も並んで歩くことが多くなり、当初の作戦通り、ダブルデートは大成功に終わった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、四人はいつもの駅前へと戻ってきた。 博仁が言った。
「じゃあ、俺は櫻木を送っていくから、航は永井を頼むな」
航が頷く。
「うん。じゃあ、また明日な。永井、行こう」
真奈美が航について言った。
「じゃあ、明日ね。由紀、バイバイ」
由紀が手を振って応える。
「じゃあね、バイバイ」
航と真奈美が家の方へと歩いていく。二人の背中が段々と小さくなっていった。博仁が由紀に言った。
「じゃあ、俺たちも帰るか」
由紀が頷く。
「うん、帰ろうっか」
家へと歩きながら、博仁が由紀に呟く。
「今日は誘ってくれてありがとな。すごく楽しかったよ」
由紀が笑いながら答える。
「私もすごく楽しかった」
「それにしても、櫻木があんなに怖がりだとは思わなかったよ。意外だった」
「そう?」
由紀が素知らぬ顔で答えた。由紀の怖がりぶりは八割方演技だったのだが、博仁にはばれていない様だ。博仁が続けた。
「特にお化け屋敷は、キャーキャー言っていたもんな」
「仕方ないでしょ。怖かったんだから」
これで少しは女の子らしさをアピールできた。今日の作戦は大成功だ。博仁がさらに続けた。
「でも、最後のは確かに怖かったな。俺も悲鳴上げちゃったし」
それでも博仁は、由紀を優しくかばってくれた。由紀はあの時の感触を、再び思い出していた。由紀が言った。
「それでも向井君、私をかばってくれたし…。かっこよかったよ」
「そうか?」
照れながら博仁が答える。
「また行こうな、遊園地」
「うん」
すると、博仁がそっと手を差し伸べてきた。由紀がその手を握る。二人は夕暮れの中、手をつないで家路へと着くのであった。