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やりました!

七、やりました!

 お化け屋敷の中は、当然のことながら薄暗く、冷房もかなり効いているようで、半袖では寒いくらいだった。壁には血だらけの女の顔やガイコツなどが描かれていて、恐ろしさを一所懸命に演出している。


 由紀は博仁とはぐれないように、博仁のすぐ後ろをしっかりとついて行った。肝心の博仁は、というと、本当に全く大丈夫なのか、それとも虚勢を張っているのかわからないが、堂々とした足取りでお化け屋敷の中へと進んでいった。


 すると突然、壁が崩れ、中から落ち武者らしきものが由紀たちの方へと倒れてきた。

 「キャー!」

 不意を突かれた由紀は、ごく自然に悲鳴を上げ、これまたごく自然に博仁の腕にしがみついた。


 博仁は特に悲鳴も上げずに、しがみついた由紀の手をギュッと握り締めると、「大丈夫、大丈夫」といって、由紀を優しく気遣ってくれた。


 そのとき由紀は内心、やった、と思った。作戦の第一段階は大成功である。後は後半、博仁の腕の中に飛び込めればいいのだが…。


 ふと我に返った由紀は、握り締めた博仁の腕が小刻みに震えているのが分かった。実は博仁もかなり怖いのである。しかし、そんなことは少しも出さずに、由紀をかばうように進んでくれている。そんな博仁を、由紀は改めて好きになったのであった。


 博仁が言った。

 「こんなのが怖いなんて、やっぱり女の子だなあ」

 自分だって、と思いながらも由紀が反論する。

 「怖いものは怖いの。仕方ないでしょ」

 「はいはい」

 そう言うと博仁は、由紀の手を握りしめたまま、奥へと進んでいった。


 それからどれくらい時間が経ったのだろう。その後、いくつかのドッキリポイントがあったが、博仁は一度も悲鳴を上げなかった。由紀は、というと、本当に驚いたのは最初だけで、後は演技も交え「キャーキャー」と女の子らしい悲鳴を上げていた。


 そして、もうすぐ出口というその時、最後のポイントは本当に最後の最後に訪れた。出口直前に、上からお化けが降ってきたのだ。


 気を許していた由紀たちは、あまりのことに不意を突かれ、由紀は思わず博仁の胸へと飛び込んでいた。飛び込まれた博仁もこればかりは怖かったらしく、「ギャー!」という悲鳴を上げていた。しかし、博仁の腕は由紀をかばうように、やさしく由紀を抱きしめていた。


 ようやく二人が外に出ると、先に入っていた航と真奈美が待っていた。真奈美が由紀に近寄り、小さな声で尋ねた。

 「どうだった?」

 由紀が答える。

 「うん。よかったよ」

 「バッチリ?」

 「バッチリ」


そして、この日由紀は、また一段と博仁のことが好きになったのであった。

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