メインイベントはいかに
六、メインイベントはいかに
絶叫コースターを楽しんだ三人と、目を瞑りじっと耐えた一人は、次のアトラクションへと向かって行った。日曜日ということもあり、遊園地は家族連れやカップルで混雑していた。どのアトラクションも待ち時間が出るほどだ。そして、人気のあるアトラクションは、どうしても待ち時間が長くなってしまう。博仁たちは、出来るだけ効率よく、人気のアトラクションを回る算段をしながら、遊園地を満喫していた。
そして、四つ目のアトラクションを乗り終えたとき、真奈美が皆に向かって言った。
「私、お化け屋敷に行きたいなあ」
由紀はその言葉を聞いて、ついに来た、と思った。本日のメインイベントである。
すかさず、由紀が相槌をする。
「私も行ってみたいな、お化け屋敷」
すると、博仁が由紀に尋ねた。
「お前たち、お化け屋敷なんて、好きなのか?」
由紀が答えた。
「怖いもの見たさというか…。ああいうのも絶叫コースターと一緒で、ドキドキして面白いじゃない?」
すると、ずっと黙っていた航が、重い口を開いた。
「俺は絶対に反対。お化け屋敷なんて、それこそどこが楽しいんだかわかんないよ」
隣にいた博仁が、意地悪く航に言った。
「お前、お化けが怖いんだろう?」
航がどもりながら反論する。
「そ、そんなことないよ」
博仁がさらに突っ込む。
「どーだか。お化けを見てキャーキャー言うんじゃないのか?」
航が怒ったように反論する。
「そんなことないって。じゃあ、いいよ。行こうよ、お化け屋敷」
由紀が言った。
「じゃあ、決まりね。そしたら行きましょう」
こうして、四人はお化け屋敷へと歩いて行った。
お化け屋敷にはペアで入ることになった。もちろん、博仁と由紀、そして航と真奈美である。先に航と真奈美が入ることになった。真奈美が航の袖を掴みながら言った。
「渡辺君、よろしくね」
航は、よし、と思いながら、二人揃って中へと進んでいった。
そして博仁と由紀の番になった。実は、由紀はこういう作り物の怖さは大丈夫な方であったのだ。なので、どんどん奥へ奥へと進むことも出来るのだが、そこは作戦。博仁に可愛らしさと女の子らしさをアピールするため、お化けを怖がって見せないといけない。由紀の演技力が試される場面である。由紀は博仁の斜め後ろから、いかにもお化けを怖がりそうな雰囲気を身に纏い、お化け屋敷の中へと進んでいった。