楽しい日曜日
四、楽しい日曜日
そして、日曜日がやって来た。四人で遊園地へ行く日だ。もちろん、由紀の目的はお化け屋敷。博仁との仲が少しでも縮まればよいのだが…。
由紀と真奈美が待ち合わせの駅前へ行くと、そこには既に博仁と航が待っていた。由紀が小走りに近寄りながら言った。
「ごめんね。待った?」
博仁が首を振って答える。
「いや、俺たちも今来たところだから」
由紀は知っていた。博仁はどんなに早く着いても、『今来たところだから』と答えてくれる。由紀たちを気遣ってくれているのだ。こういうところにも、博仁の優しさを由紀は感じ取っていた。
博仁が言った。
「でも、永井が俺たちを遊園地に誘ってくれるなんて、ホント意外だったよ」
真奈美が答える。
「いつも向井君たちに誘ってもらってばかりだったからね。たまには私たちのほうからと思って。ねえ、由紀?」
由紀が真奈美の方を見ながら言った。
「うん、たまにはね」
すると、博仁が航の方を見ながら、意地悪そうに言った。
「でも、出来れば二人きりの方が良かったんじゃないか?なあ、航?」
航が顔を赤くして反論する。
「そんなことないよ!四人の方が楽しいし…」
博仁がさらに続ける。
「まあ、途中で二人きりになればいいことだしな」
航が少し怒ったように言った。
「博仁、いい加減怒るぞ」
博仁が謝りながら言った。
「わかった、わかったよ。そう怒るなよ」
そして、由紀が皆を促す。
「じゃあ、揃ったことだし、遊園地に向かいますか」
そう言うと、四人は駅の中へと歩いて行った。
電車の中は、とても和気あいあいとした雰囲気だった。いつもは控えめな航が、今日は何故か積極的に真奈美や由紀と話をしている。今日の誘いが真奈美の方から、というのが効いたのかもしれない。いつも以上に場を盛り上げようと、頑張っていた。
一方、由紀はマイペースで話の輪に入っていた。特段気負うこともなく、いつもの感じで博仁たちと話が出来ている。ただ、今日の目的であるお化け屋敷のことを考えると、内心はドキドキしていた。うまく博仁との距離を縮めることが出来るだろうか?博仁に避けられたりしないだろうか?由紀の心の中は、期待と不安が混じりあっていた。
そんな航や由紀を余所に、全くいつも通りなのが博仁と真奈美だ。二人とも、航や由紀の気持ちも知らずに、楽しそうに会話をしていた。
そうこうしているうちに、あっという間に電車は遊園地前までやって来ていた。