表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

眺めているだけじゃあ

二、眺めているだけじゃあ

 二学期が始まって数日経った、ある日の放課後のこと。航と博仁はいつものように部活に精を出していた。新人戦まではおよそ一か月。練習にも熱が入る。航たちと同様、真奈美も新人戦に向けて練習に汗を流していた。


 そんな中、一人文化部の由紀だけが、三人とは違う放課後を過ごしていた。その日、由紀は特にすることがなく、教室の窓からぼんやりとグランドを眺めていた。グランドでは陸上部、野球部、サッカー部が各々熱心に練習している。


 その中に、陸上部の博仁の姿を見つけた。短パン姿の博仁は、教室で見るよりも一段と凛々しく見える。どうやら短距離スタートの練習をしているようだ。


 由紀が博仁のことを意識するようになって、既に二か月は過ぎようとしていた。何事にも積極的な由紀が、博仁への恋だけはオクテになってしまっていた。自分から博仁に声を掛けることが出来ないのだ。


 思えばこの夏もいろいろなことがあったが、それらは全て博仁の方から声を掛けてくれたものであった。プールもそう、博仁の誕生日会もそう。盆踊りもそう。


 そして、このまま博仁のことを見ているだけでも充分だ、と思う気持ちと、もっと博仁と仲良くなりたい、と思う気持ちとの狭間で、由紀の心は揺れていた。

 「だめだなあ、私」

 由紀が独り言を呟いた。眼下では、博仁が親友の航と何やら話をしているようである。いつも仲の良い博仁と航。由紀は航のことが羨ましくもあり、妬ましくもあった。博仁の隣に私がいることが出来たら…。由紀は深くため息をついた。


 しばらくすると、校内に下校のチャイムが鳴り響いた。

 「さてと、そろそろ帰るかな」

 そう言うと由紀は荷物をまとめて、学校を後にした。


 学校からの帰り道は、大抵一人だった。時々一緒に帰る友達がいるが、いつもは部活があるのでもっと遅い時間になる。由紀は、歩きながら先日の真奈美の言葉を反芻していた。


 『何かいい作戦を考えないとね』


 作戦と言われても、何も思い浮かばない由紀にとって、頼りにしているのは親友の真奈美である。真奈美ならきっといい作戦を考えてくれるに違いない。今は真奈美の言葉に期待しよう。由紀はそう思い直し、一人家路へと着いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ