表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

新人戦

十、新人戦

 そして秋の新人戦がやって来た。航はこの大会、いつも以上に気合が入っていた。初めて優勝が狙える位置にいるからだ。真奈美との恋も大切だが、今はそれ以上に部活に精を出していた。


 博仁は、というと、こちらもいつも以上に練習に熱がこもっていた。博仁の専門である二百メートル走は、この地区だけでもライバルが多く、博仁は入賞争いかどうかと言ったところだった。それでも過去最高の順位を獲得するべく、毎日懸命に汗を流していた。


 そして大会当日、いつものように航が一人グランドでウォーミングアップをしていると、少し遅れて博仁たちがやって来た。博仁が航に声を掛ける。

 「おはよう。相変わらず航は早いな」

 航が返事をする。

 「おはよう。お前だっていつもより早いじゃんか」

 博仁が持っていた荷物を、航の横に置きながら言った。

 「そりゃ三年生がいなくなって、初めての大会だからな。気合も入るってもんさ」

 航が黙々とウォーミングアップを続けながら言った。

 「今日は、櫻木と永井は応援に来ないのかな」

 博仁が答える。

 「二人揃ってくるって言っていたぞ。なんだ、お前永井に来て欲しいって頼まなかったのか?」

 航が照れくさそうに言った。

 「話す機会が無くてさ…。言いそびれたんだ。そっか、来てくれるのか」

 博仁が呆れた口ぶりで言った。

 「なんだ、情けない奴だなあ。せっかくの晴れ舞台なのに、応援を頼まないなんて」

 航が聞き返す。

 「晴れ舞台ってなんだよ?」

 博仁が言った。

 「この大会で優勝するってことだよ」

 航が言いごもる。

 「優勝なんて…。俺には無理だよ」

 博仁が航の肩を叩き、そして言った。

 「そんなこと言って。密かに狙っているんだろ?優勝」


 すると、航が小さく頷いた。優勝なんて無理だ、と思いながらも、この大会が絶好のチャンスであることを、航自身が自覚していた。逆に言えば、今日優勝できないようなら、この先も優勝できない可能性が高いということになる。欲のない航でも、このチャンスだけはモノにしたい。その気持ちを博仁は見抜いていたのだ。


 博仁が言った。

 「永井に格好いいところを見せないとな。お互い頑張ろうぜ」

 「うん」

 航は力強く頷いた。そして、入念にウォーミングアップを続けたのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ