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こちらもオクテ?

一、こちらもオクテ?

 楽しかった夏休みが終わり、秋の気配と共に二学期が始まった。櫻木由紀にとって、この夏休みは大変充実したものであった。密かに恋い焦がれるクラスメートの向井博仁との距離が縮まったからだ。


 博仁とはプールにも行ったし、盆踊りにも行った。博仁の誕生日を手作りのケーキでお祝いもした。特に盆踊りのときには、初めて手を握ることも出来た。由紀がこんなにも男の子のことが気になるのは、生まれて初めてのことだ。


 博仁とは小学校のときから一緒だったが、小学校のときは特段気になることもなく、ただの同級生というだけであった。それがこの数か月間、博仁のことが気になって仕方がないくらい、博仁に恋をしてしまったのだ。そう、由紀にとって博仁は初恋なのである。


 博仁はそんな由紀の思いを、まだ知らないようだ。告白しようか。由紀はそう思ったりもしたが、やはりまだ勇気が出なかった。告白はもう少し仲良くなってから。いつもそう思いながら、博仁の背中を追っていた。


 二学期が始まったクラスは、いつもより騒がしい感じだ。そして、男の子の多くは真っ黒に日焼けしている。それはプールや海だったり、部活だったり、またその両方だったりした。博仁も例外ではなかった。真っ黒な顔つきの博仁からは、この夏が充実したものであったことを物語っている。


 そして、いつものように親友の渡辺航と何やら話をしている。私もあんな風に博仁と話が出来たらいいのにな、と少し羨ましがりながら、博仁のことを由紀は眺めていた。


 するとそこに親友の永井真奈美が近寄って来た。

 真奈美が由紀に挨拶する。

 「おはよう。なあに?朝から向井君のこと見てるの?」

 由紀が反論する。

 「見てるんじゃないの。たまたま視界に入っただけよ」

 真奈美が言い返す。

 「どうだか。そんなに好きなら思い切って告白すればいいのに」

 由紀が首を振って答える。

 「だめよ。自信ないもん」

 「そうかなあ。向井君も由紀のこと好きだと思うけどなあ」

 「向井君は部活のことで頭が一杯よ。私はただの友達」

 「そしたら渡辺君に聞いてみる?向井君のこと」

 「前に聞いた時は好きな人はいないって言ったじゃん。多分今もいないよ、きっと」

 「そんなの、分かんないじゃん。あれからだいぶ経っているし」

 「それに、私以外に好きな人がいるって言われたら、と思うとね」

 「いつもは自信満々の由紀が、恋になるとオクテになるのね」

 「真奈美だってそうでしょ?渡辺君とは上手くいってるの?」

 「渡辺君とは、まだ友達よ。これから少しずつね」

 「そんなこと言って。渡辺君はそうは思ってないよ、きっと」

 「私のことより由紀のことでしょ。これからどうするつもり?」

 「どうするって…。別に今まで通りよ」

 「じゃあ、何か作戦を考えないとね」

 「作戦って言われても…」

 「この次は私に任せて。何かいい作戦を考えるから」

 「別に作戦なんて…」


 すると、授業が始まるチャイムが鳴り響いた。真奈美が「じゃあね」といいながら自席へと戻って行く。

由紀は内心、真奈美の作戦というのに期待していた。自分からは中々積極的になれないからだ。こうして、由紀の二学期が静かに始まっていった。

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