予報
テーマは「予報」でした。
予報が外れて、今日は塩が降った。
「なんだよ、砂糖じゃないのかよ」
僕たちは慌てて塩対策の防護服に着替え、外の砂糖瓶と塩瓶を取り替える。砂糖と塩を間違えては大変だ。
「順番で言ったら、今日は『さしすせそ』の『さ』だろ」
しおうさぎの着ぐるみの中からチーフのダミ声が聞こえる。防護服はわかりやすいよう、それぞれ、ゆるキャラのデザインが採用されている。勿論、政府指定の公式防護服だ。
塩が降る日はしおうさぎ。
わかりやすい。
重力の小さいこの地では、塩も砂糖もゆっくりと降り積もる。厚く立ち込める雲から舞い落ちる結晶が、街を白銀色に染める。
「最近予報が外れますね」
「異常気象だよ、異常気象」
チーフの長い耳が、苛ついたように小刻みに動く。
確かに最近の天気はおかしい。この前は『あ』の日だったのに、飴ではなく、チョコが降ってきた。
「一個ズレてんだ」
隣の店の店長が、僕たちの会話に首を突っ込む。
「『さ』の日に塩。『か』の日にキビ。」
「ああ……そういえば」
僕が頷くと、店長は「だろう!」と、首を縦に振った。しおうさぎの長い耳が前後に激しく揺れる。
「じゃあ、飴の日にチョコが降ったのはなんでだよ?」
チーフが食ってかかる。しかし顔は相変わらずニコニコしたしおうさぎ。
「チョコはチョコでも板チョコだったじゃねぇか。だから『い』だよ」
「なぁるほど~」
「一個ズレたからって、なんだってんだ」
「何が降るか予測がつくじゃねぇか」
あ~あ。また始まったよ。チーフと店長は犬猿の仲なんだよなぁ。
今日はしおうさぎだけど。
おわる。
SFなのか、ファンタジーなのか、自分でもよくわかってません(笑)。
少し(S)不思議(F)というやつでしょうか。
「しおうさぎ」という語呂が好きでした。