紅白戦
テーマは「紅白戦」でした。
赤いおまんじゅうが言いました。
「白いおまんじゅうはつまらないなぁ。だっておまんじゅうはだいたい白いからね」
白いおまんじゅうが訊き返します。
「なんで白いとつまらないんだい?」
赤いおまんじゅうは勝ち誇ったように笑います。
「白いおまんじゅうなんて、いつでもどこでも食べられるじゃないか。ありがたみがないよ」
白いおまんじゅうは不満げにふくれてみせます。もちもちの白い顔がますますふっくらもちもちになりました。
「なんだい。赤いおまんじゅうなんて、ただ食紅を混ぜただけじゃないか。その赤い色は貝殻虫をすりつぶした色なんだぞ。君は貝殻虫味のおまんじゅうだ!」
「貝殻虫なんかじゃないぞ!」
こんどは赤いおまんじゅうが膨れっ面です。ほんのり紅色の顔がますます赤く鮮やかになりました。
「この赤い色はベニコウジの色だぞ。貝殻虫味なんかしないぞ!」
ぷくぷくに膨らんだ二つのおまんじゅうは、互いににらみ合います。
「それに僕の中身はしろあんなんだぞ。白いおまんじゅうより手間がかかってるんだ」
「僕の中身だってこしあんなんだぞ。つぶあんより手間がかかるんだ」
赤いおまんじゅうが言えば、白いおまんじゅうが言い返します。二つのおまんじゅうのにらめっこは続き、おまんじゅうはぱんぱんに膨れあがりました。
その時、蒸籠の蓋が開いて、和菓子屋のおかみさんが顔を覗かせました。
「いい塩梅に膨れたねぇ。どっちも美味しそうだよ」
二つのおまんじゅうは、お互いの顔を見合せました。どっちも立派に膨らんだ、美味しそうなおまんじゅうです。
「白いおまんじゅうは美味しそうだね」
「赤いおまんじゅうも美味しそうだよ」
二つのおまんじゅうは照れくさそうに微笑みました。
どちらも美味しいことに変わりはないのです。
白いおまんじゅうと赤いおまんじゅうは、仲良く箱に詰められて引き出物になったのでした。
おわり。
なんか知らんが可愛いものシリーズ第四弾。
なにこのツンとデレ(笑)。
紅白戦、紅白、紅白、紅白まんじゅう……という連想でした。
おまんじゅうは蒸かしたてが美味しいですよね。