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ワラッパ

テーマは「(いかだ)」でした。


 桜の花びらが川面を一面に埋め尽くすことを、花筏(はないかだ)と言う。


 風に揺れて不規則に舞い落ちる花びらが、一つ、また一つ、水面に浮かぶ。吹き寄せられた薄紅の欠片は緩やかに流れ、次第に大きな塊となっていく。

 花で作った筏の上には、豆粒くらいのワラッパがいる。花びらが水を吸って沈むまで、ワラッパは花筏に乗って遊んでいる。ワラッパは小さく、とんでもなく素早い為に、人の目には殆ど見えない。

 川面に落ちた花から花へ。正に目にも止まらぬ早業で飛び移っては、どちらが早いか競うのだ。ワラッパの春の運動会である。

 並木道に沿って流れる小川に、今年も花筏が出来た。舞い散る桜の下で、ワラッパ達は風の竜にせがむ。

「かぜのかみさまかぜのかみさま、もっとおはなをこっちにおくれ」

「かぜのかみさまかぜのかみさま、もっとおはなをかわにおくれ」

 風の竜は花びらが飛びすぎてしまわぬように、そっと口笛を吹く。竜の口笛は春風となって、小川の上を吹き抜け、桜を散らした。ワラッパ達はさわさわと歓声を上げ、我先にと花びらの上を跳ね回る。

 そこへ、小川の主である水の竜が顔を出した。水面を彩る出来たての花筏を、鰐のような大きな口で吸い込んでしまう。ワラッパ達は自分も吸い込まれてしまわぬように、さわさわと奇声を上げながら逃げ惑う。

 そうしてまた、風の竜にもっとおくれとせがむのだ。

 春の日射しが一際眩しい真昼に、川面が跳ねるように輝くのは、ワラッパ達の仕業である。




おわり。


なんか知らんが可愛いものシリーズ第二弾。


花びらが水面に浮いて集まっているものを花筏というそうです。他にハナイカダという名の植物もありますが、作中では前者の方を採用してます。

ワラッパは私の創作ですので、似たような妖怪とか妖精とかが文献にあったとしても一切関係ございません。


どうでもいい話ですが、ワラッパ、ワラッパと書いてると、「カッパラッパカッパラッタトッテチッテタ」という謎の言葉を思い出します。



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