ナンデ•ヤネンとドナイ・シタン
テーマは「ジャンク屋」でした。
窓の外に流れる光は、流星ではなく、宇宙船。
「解体屋ってぇやつかい? 景気はどうだい」
小さなステーションの中の小さなバー。ビールと共に摘まむのはフィッシュアンドチップス。
ドナイ・シタンは眼鏡の奥の梟のような瞳をくるりと動かす。少し、不満げに。
「解体屋なんて言わないでくんな。ジャンクショップってんだ」
「なんだよ、解体屋と違うのか? くず鉄屋か」
「屑じゃねぇよ。ちゃんと使える部品を取り出して売ってるんだ」
「昔の人工衛星かなんかの部品だろ」
ナンデ・ヤネンはポテトを摘まむ。ドナイは魚のフライを摘まむ。二人はビールで口を潤す。
「地球の周りにゃいっぱい打ち捨てられたヤツがあるからな。しかも、解体するには補助金が出るのさ」
「なんだい。元手タダみたいな話かよ」
「まぁな。しかも、ボルトだのバネだのの、やたらデカイやつが沢山あってよ。そいつが売れるんだ」
「何に使うんだ? そんなもん」
「此処だけの話――」
ドナイは身を乗り出す。丸い瞳がくるりと光る。獲物を定めた、梟のように。
「宇宙船の改造に使うらしいぜ」
「違法改造かよ?」
ナンデも身を乗り出し、声をひそめる。
ドナイはしたり顔で頷く。
窓の外を流れる光は、個人用の小さな宇宙船。そのうちの幾つかは、改造された宇宙船だろう。と、二人は暗い窓を見ながら、ビールを飲む。
「昔は使い古しの人工衛星は、地球に落っことして燃やしちまったもんだがな」
「全く、最高水準の技術と資源を使い捨てだったってんだから、勿体ねぇ」
昔、衛星の末路は、大気圏を燃えて流れる星屑の運命。
今は、改造宇宙船。
ナンデ・ヤネンは、ポテトを摘まむ。ドナイ・シタンは、魚のフライを摘まむ。
窓の外を流れる光は、流星ではなく、宇宙船。
ウカはお休みでした(笑)。
読み返して、こんなの書いたっけ? と、自分でも思った作品。
宇宙ステーションの外は大気がないから流れ星見ないよねぇ……と、漠然と思ってました。