ナンデ•ヤネンとアホチャ・ウカ
テーマは「赤い電車」でした。
銀河ステーションに新しく赤い車両がやってきた。
「火星行きが増便するらしいな」
ナンデ・ヤネンは相棒のアホチャ・ウカと、年に一本しかないイトカワ経由火星行きを待つ間、待合室でのんびりとあたりめを焼いていた。
「火星かぁ。いいなぁ」
アホチャ・ウカは、網の上で丸まっていくあたりめを箸で押さえつつ、呟いた。二人は火星行きに乗るものの、途中の小惑星帯で降りてしまうのだ。採掘場の仕事は危険だが、時給が良いから辞められない。
「火星行って、火星焼き食いてぇな」
「たこ焼きとおんなじだろ」
「同じじゃねぇよぉ。出汁がちがうんだぞぉ」
アホチャ・ウカがのんびり言い返すと、ナンデ・ヤネンがすかさず切り返す。
「んじゃ、明石焼きだ」
「ちげぇよぉ。もっとトロっとしてんだぞぉ」
「お前食ったことあんのかよ?」
「うん。ここの売店でも売ってる」
「火星まで行く必要ねぇじゃねぇか」
ナンデ・ヤネンにそう言われると、アホチャ・ウカも、それもそうかな。と、納得しかけた。
一つ向こうのホームに、ピカピカの赤い電車が入って来るのが待合室からも見える。ナンデ・ヤネンは焼けたあたりめを半分に裂いて、アホチャ・ウカに渡した。ウカは思い出したようにあたりめを受け取り、はたとヤネンの顔を見つめた。
「やっぱり違うよぉ。現地で食べる火星焼きが良いよぉ」
「遅せーよ!」
おわる。
この二人の名前が気に入ってます。
赤い電車といえば京急なのですが、銀河鉄道にしてみました。
イトカワはあの小惑星なのか、その名に因んだ駅名なのか。深く考えておりません(笑)。