協力
すこしグロイ部分もあるので苦手な人もいるんじゃないかなぁっと思います。
第二話「協力」
沼から戻ってきた紗江と一緒に車を止めた場所に戻った。「さてと、これからする事いっぱいあるの。ぐずぐずしてられないわよ」バックシートに積んであった袋を取り出した。「それなんだよ、今から何するつもりだよ?」「いいから、あなたは見ててくれればいいの」そして僕らは再び遺体がある沼地に戻った。僕は悪臭のもとから少し離れた場所から紗江を眺めていた。それは異様な光景だったが、僕の目は釘付けとなり離す事ができなかった。紗江は遺体の口を開けペンチで歯を抜いていた、そしてそれを袋に詰めた。僕は紗江に聞こえるような声で「何やってんだよ!何で歯を抜く必要があるんだよ!」すると紗江がビニールの手袋に血がついてる手で手招きした。「大きな声ださないでよ、歯を抜いたのは治療の記録を調べられてほしくないからよ。」そう言って見せてくれた袋の中には歯の他に針金が入っていた。「その針金は?」「歯並びを矯正するための器具。記録からでも身元が分かるから歯を抜く必要があるの。」「だからってこんなむごい事・・・いっそ焼くとか沼に沈めるとか・・・」「焼くわよ、最後はね。でもねあらゆる可能性を考えて完璧にしたいの。焼いた後も骨は粉々にしないとね。顔の骨の形からでも粘土みたいな物で復元できるらしいから。」そう笑顔で話す紗江に僕は恐怖を感じた。「狂ってる・・・・」「いいえ違うわ、これはれっきとした実験なのよ!何回も言わせないで。すばらしいと思わない?実験ができる私も、その詳細を見ているあなたも。」遺体を見る紗江の表情は恍惚としていた。「その人は一体誰なんだよ?」「さぁ?被験者の事はよく知らないわ。適当に選んだから。それにこの実験とは関係ないと思うしね。」僕は唾をゴクリと飲み込み、言った。「自首しろよ。こんな事間違ってるって、きっと病気なんだよ。なっ?きっとそうだよ。」紗江は信じられないという顔で僕を見た。「私の話し聞いてた?自首してどうするの、せっかくの実験がパアじゃない。」「自首しないなら僕が警察にすべて話す。」僕は紗江の目をじっと見た。見つめ合っていたが、ふいに紗江が笑った。「何で笑うんだよ、いいのかよ?警察に言っても。」「どうかしら?あなたが警察に話すとは思えないけど。」「どうゆう意味だよ、話してやるよ。」「そう、それじゃあどうぞ。」紗江は分かっていた。僕が紗江の事を話せないのを。僕自身もきっと警察には言わないだろうっと思っていた。紗江を刑務所に、犯罪者にする事なんてとてもじゃないけど出来ない。あの笑顔が悲しみの顔に変わるのを僕は耐えられない。ならば僕は紗江に協力するしかないのだ。三日月が映る濁った沼を眺めながら僕は悟った。