証人
なんでもいいので、メッセージなんか下さい。
他にも連載しているのもあるのでよかったら読んでください。
ゲームじゃない、実験だよ。彼女は笑顔で言った。それが彼女と交わした最後の会話でもあり姿でもあった。その日彼女は自殺した。罪の意識に耐えかねて自殺したと。違う、そうじゃない。生前彼女は僕にこう言った。捕まったらそれは完全じゃない、例えトリックを見破られても、犯人だという確証があっても、捕まらなければ成り立つと思うの。時候まで逃げる?毎日おびえながら暮らすしてどうするの?それって完全犯罪といえるとは思えない。じゃあどうするかって?死を選ぶしかないと思うの。動機?そんなのないよ。これは実験なの。完全犯罪が成立するっていうのを証明するためのね。僕はふとペンを置いた、外はもう夕方になっていた。朝からずっと書き続けてた僕は少し仮眠をとる事にした。二十年たった、今でも彼女の事を忘れる日はないどころか、最近はますます鮮やかに蘇ってくる。彼女の声・・仕草・・・そして最後に見たあの笑顔。第一話「証人」僕が住む町の近くにある林の中で死体が発見された。ニュースでその林が映った。警察や報道陣でいっぱいだった。警察の発表では、その死体は体のいくつかの部分が切り取られ身元が分からないよにされているという。ニュースキャスターが犯人は残忍な奴だと言った。僕は知っている。すべてを見ていたから。あの日僕は幼馴染の紗江に呼び出された。「何だよ?こんな夜中に。」「ちょっと見てもらいたいものがあるの。」僕は紗江の車に乗り込んだ。車の中で行き先を尋ねても教えてくれず、ただ微笑むだけだった。車止まった。降りて見るとそこは昔よく冒険した林だった。「ここ?何があるってんだよ。」「いいから、着いてきて。」懐中電灯片手にスタスタと歩いて行った。奥へと進むと沼があった。汚く濁っている。紗江がふと沼の側を照らした。僕は思わずしりもちをついてしまった。「大丈夫?」紗江の手につかまりなんとか起きた。「な、何だよあれ・・・」本物かどうか僕は無意識に近づいていった。その人らしきものは手足の指紋がある部分や顔は切り取られ肉が見えている状態だった。虫がたかっていておまけに悪臭がした。たえきれなくなり僕は吐いてしまった。「何するのよ!証拠ができたじゃない!」「まさか紗江、おまえ・・・」「そうよ、私がやったの。でもねこれはただの殺人じゃない、実験よ。」そういうと紗江は走って行った。頭の中が恐怖と混乱でいっぱいになった。死体から少し離れた所でしゃがんでいた。少しして紗江がスコップ片手に戻ってきた。「準備しといてよかったわ。」僕が吐いたもの土ごとスコップで沼にほうりなげた。その時、紗江の髪の毛が落ちた事に二人とも気がつかなかった。