朝の習慣を理由に婚約破棄されてしまいましたが、今はとても楽しい日々を過ごせています!
私は昔から毎朝小さめホットケーキを食べていたのだけれど、婚約者である彼ローゼンはその習慣を嫌っているようで、ある日自宅でホットケーキを食べているところを目撃されてしまったために睨まれてしまった。
「お前、ホットケーキを食べるなどあり得んぞ」
「え」
「朝にホットケーキなどおかしいだろう! お前はどうしてそんなにも愚かなんだ!」
しかも、ただ睨まれただけでは終わらず。
「幻滅した! よって、お前との婚約は破棄とする!」
突如関係を叩き壊されてしまった。
「朝にホットケーキを食べる女と結婚なんぞ、絶対にせん! あり得ん! 理解不能の極み!」
彼はそこまで一気に言い切ると、どかどかと敢えて大きな足音を鳴らしながら去っていった。
◆
突然の婚約破棄から十日。
思わぬ情報が耳に飛び込んできた。
……ローゼンが亡くなったという情報。
婚約は破棄となり、もう他人となった私たちなので、私からかける言葉はもう何もない。たとえ彼が命を落としたとしても、だ。彼がどうなったとしても他人となった私には何か言葉をかける義務はないし、逆に、発言する権利もきっともうそれほどないのだろう。
ちなみに、彼は、自宅で命を落としてしまったそうだ。
ローゼンの母親は異国の食べ物である納豆が好きだった。それで毎朝納豆を食べていたそうなのだが、その日も彼女は納豆を食べていたそう。だが、納豆を乗せたパンを食べる直前にうっかり落としてしまったそうで、床が納豆まみれになってしまったそうだ。
そしてそこに何も知らないローゼンが通りかかる。
ねばねば、ぬちゃぬちゃ……床がそんな状態になっているなど夢にも思っていなかったローゼンは、納豆を踏み足を滑らせ転倒し、その拍子にテーブルの角で頭を打ってしまい意識不明に。
で、そのまま亡くなってしまったのだそうだ。
◆
ローゼンに婚約破棄された日から今日でちょうど二年になる。
先日私はホットケーキが大好きな青年と結婚式を挙げた。
それによって正式な夫婦となって。
今は二人一つの家に住み毎朝小さめのホットケーキを食べながら穏やかに暮らしている。
好きな食べ物が同じである人との暮らしはとても楽しい。
◆終わり◆




