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幽霊屋敷(?)に迷い込んだ

初投稿!!

お化け君と心霊系が本気で無理な可知井かちい けい君の関係はどうなるのだろう・・・

*基本気まぐれで投稿します。

 (けい)は目の前にいるバケモノから目を離せなかった。目を離したら、まずいかもしれないと感じていたのだ。小さい頃から間の良さは自他ともに認めるほどピカイチだった。

 そのバケモノは畳に景を押し倒して強い力で押さえつけている。そして確実に自分を見ている。薄明りの中では逆光で顔があまり見えないが、鼻がくっつきそうな程に距離が近い。自然と呼吸が荒くなっていくのを必死に抑えて、脳をフル回転させた。

(ど、どうしよう・・・)


 景は何故だか不思議な空間に飛ばされたらしい。ふと気が付くとこの場所にいた。辺りは異様に薄暗いため、目を凝らさないといけない場所が多い。お化け屋敷のように壁は薄汚れ、床には古びた家具や物が散乱している。明かりはあるがぼんやりとしていて、その上まばらに設置されているためあまりにも心もとない。廊下は狭く、動くときしんだ音がした。そっと入った和式の部屋の黒ずんだ畳の上に置かれた、ちゃぶ台と呼ばれるそれの上には黒っぽい液体が入った湯呑が置かれていて、この場所が長らく放置されていたのがうかがえた。障子といい、淡くオレンジっぽい光を放つ豆電球といい、かなり古い民家の要素が詰まっている。家だろうかとも思ったが、窓がないので外の様子もわからない。風の音や外部の音が聞こえないのでもしかしたらここは地下なのかもしれない。そもそも地上というものが存在しているのか、ここが異世界なのか、出口があるのか分からない。人がいるのだろうか、いたるところからきしんだ音が響いている。どこにいるのかわからないが普通の人ではない気配を景は感じていた。

(ここはなんなんだ・・・すごい怖い。動きたくない・・・)

 しかし、長い間この部屋にいるのも危ない。音が自分のいる場所に近づいている気がする。今自分がどこにいるかはわからないが、移動しなくては自分の身が危ない。見つかるのも時間の問題だろう。景は少し畳の上を移動して、姿勢を低くし、音に意識を集中させた。

(・・・っ!!)

 素早い移動音とともにとてつもなく近いところで襖を開ける音がした。この部屋ではない。音からして、隣の部屋かそのまた隣の部屋に何かがいる。ソレは自分が移動したことで生じた軋む音に敏感に反応し、走ってきたのだ。いま景がいる部屋は廊下にも他の部屋にも行くことができる。つまりどのルートからでもこの部屋に入ってくることができる。逆に言えば、景の方も逃げ場はあるのだ。しかし、些細な音に尋常でないほどに反応するのだ。襖を開ける音で間違いなくバレる。

 体が情けないほどに震える。呼吸が速くなっていく。この薄暗いオレンジ色に部屋を照らす豆電球にひどく不安をあおられた。

(もしヤツがこの明るい部屋に来たらすぐに見つかってしまう。暗い部屋で身を隠せる押入れとかを探さないと・・・でも、今動いても音で見つかってしまう)

 突然豆電球が点滅した。接触不良だろう、それに伴って小さく『チカっチカっ』と音が鳴った。

 まずい、と思ったのと、後ろの襖が開いたのは同時だった。

 そして、驚く暇もなく、たたきつけられるように畳に押し付けられている。力がとても強いため、押さえつけられた手首や首が痛い。気管が圧迫されて息苦しいが、一応呼吸ができる最低限のラインまで手加減しているようだ。しかし手首は容赦ないほどに押さえつけており、逃がす気が全くない。

「グッ・・・・・ッ」

 痛みと衝撃で固く閉じた目をゆっくり開くと、思わずひゅっと息をのんだ。真っ暗な瞳がこちらを見ている。顔をぐっと近づけて、顔を覗き込んでいる。

「・・・」

 相手は声も発しない。逆光で顔が見えないため、この化け物が人間なのかわからない。しかし、すごい馬鹿力だ。押さえつけられた手首から手にかけて血が少しずつ通わなくなっている。きっと今は手が真っ赤だろう。しかし、声を出したりもがいたりするほどの余裕もない。情けなくも目に涙が浮かんでくる。相手がびくともしないのが恐ろしくてたまらなかった。

「・・・ぁ」

「・・・ッ」

 何か喋った。かすれ声でとても小さい。かなり低い男の声だ。意識したくないのに、全神経がバケモノに集中してしまっている。

「みぃつけた」

 心底楽しそうに不気味に声を震わせながら男は言った。そして全身が総毛だち、涙を浮かべてぶるぶる震える景の片方の足首をつかみ、さらに奥の部屋へ引きずっていった。


 景は捕まれている足首の痛さによって恐怖で気を失うことすら出来ずに引きずられ続け、今までとは少し違う部屋についた。

(ここは・・・寝室?)

 薄暗い寝室の中をずんずんとバケモノは布団まで引きずっていき、ようやくつかんでいた足首を離した。

 景が今いる布団は白く、状態が良さそうだ。寂れ、古ぼけた寝室の中でひときわい質感を放っている。

 恐怖と意味の分からなさにとうとうパニック状態になりかけている景の隣で腰を下ろしたバケモノは、景をじっと見つめた。相変わらず顔ははっきりとは見えないものの、かなり若そうに見える。またガタイのよさげな体には古くてボロい和服を身にまとっている。

(もしかして幽霊・・・?)

 現状が全く理解できずに景が長時間そのバケモノと見つめあった後、そのバケモノはとうとう声を発した。

「寝たら?」

「・・・え?」

 かすれているが、しかし先ほどよりはっきりとした声で景に語りかけた。

 そして、景が動けずにいると、そのバケモノは小さく息を吐いて、ゆっくり立ち上がった。そしてのっそりと寝室を出ていった。景はただ茫然とするしかなかった。

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