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ゼロライン

5時13分、トンネル内で多重衝突事故が発生。大型トラックと乗用車、計5台が絡んだ大事故。

燃え盛る車両からは煙と炎が立ち昇り、負傷者が絶望的な状況で閉じ込められている。

無線からは、事故の状況が詳細に伝えられ、現場の緊迫感が増していく。



「出動準備!」

神崎 拓真は即座に指示を出す。スムーズな動きで車両への搭乗を終え、冷静にスタッフを見渡す。


「皆、焦るな。あの現場で命を守るのは俺たちの仕事だ。仲間を信じて、全員で動くぞ」


神崎の言葉にチーム全員が静かに頷く。彼の声には、指示を出すだけでなく、全員を鼓舞する力がある。

新米麻酔科医九条 葵も、神崎の冷静さに圧倒されつつも、これから自分が果たす役割を自覚し、心を決める。



車両が現場に向けて急加速する。車内では、医療スタッフたちがそれぞれの役割を確認し、動き出す。


「神崎先生、あの現場で本当に手術をするんですか?」

葵は心の中で不安を抱えながらも、神崎に尋ねる。


「もちろんだ。現場での手術こそが、命を繋ぐためには最も重要なんだ」

神崎の言葉は穏やかだが、確固たる意志が込められている。葵はその言葉に励まされ、覚悟を決める。



現場に到着すると、スタッフはすぐに駆け出す。

炎が上がる中、負傷者たちの声が響き渡る。神崎は周囲を冷静に見渡し、最も重症な患者から治療を開始するために指示を出す。


「まずは負傷者の搬送。救急隊が到着するまでに手術を始める」


神崎が素早く現場の状態を見極めると、すぐに開腹手術が必要な患者を見つけ、彼に駆け寄る。



患者の腹部にひどい裂傷があり、内臓が露出している。出血が多く、患者は意識が朦朧としている。

「内臓の損傷がひどい。特に腸に裂け目がある。まずはこの部分を修復しないと命は助からない」


神崎は素早く手を動かし、腸の裂け目を確認する。大量の出血が見られるが、神崎は冷静に止血を行いながら腸を修復していく。


「出血が止まらない…葵、止血剤を追加。あと、輸血準備してくれ。血圧が下がり始めている」


葵は慌てながらも冷静に動き、止血剤と輸血を手配する。その間、神崎は手を止めることなく、細心の注意を払いながら腸を縫合していく。



その時、現場に一人の医師が急いで駆け寄ってきた。

彼は冷静にその場に立ち、無駄なく動き始める。


「神崎先生、手伝いましょう」

その医師はすぐに手術台の脇に立ち、準備を始める。神崎は短く頷き、彼に目を向ける。


「頼む」


その医師は、神崎の信頼する同僚であり、病院の上層部から派遣された専門医、しゅう 仁志じんし。彼は高度な外科技術を持ち、神崎と同じく命を守ることに全力を注ぐプロフェッショナルだ。


「初めまして、神崎先生。私は柊 仁志です。上層部から依頼を受けて、少し現場に顔を出すことになりました。患者の状態をしっかり把握し、一緒に処置をさせてもらいます」


柊は冷静に自己紹介をする。神崎は一度、彼の目をじっと見つめてから頷いた。


「ありがとう。時間がないから、手際よくやろう」


柊は素早く手を動かし、神崎と共に作業を進める。傷口の縫合が進む中、神崎は一度だけ彼に視線を向ける。柊はどこかしら冷徹な雰囲気を持ちつつも、確実な手際で治療を進めていた。


「出血が止まった。後は腸を再接続すれば完了だ」

神崎は手術を終え、安心したように一息つく。


「さすがです、神崎先生」

柊は淡々と感想を述べながら、後の処置を引き継ぐ準備を整える。



手術が終わり、患者は無事に病院へと搬送される。神崎と柊はその後、患者の経過を見守りながら、次の準備に入る。柊は冷静に周囲を見回し、神崎に声をかける。


「次の現場にも行くのか?」


「もちろんだ。命を繋ぐために、次がある限り動き続ける」

神崎は険しい表情を見せながらも、その目には決して揺るがない信念が宿っている。


柊もまた、神崎の覚悟を感じ取る。そして、彼も同じように覚悟を決める。どんな現場でも冷静に、命を守るために動くことが自分たちの仕事であり、信念であることを心に刻む。



その後、神崎は病院内で次の指示を出し、柊と共に他のスタッフと協力して、また新たな命を救う準備を始める。

「どんな状況でも、絶対に命を守る。俺たちはそれを胸に、現場で戦い続ける」


彼らの覚悟が、次の命を救うために動き出す。


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