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22、恋敵

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥



暗く、闇が囲う森の中、、

その一角には微々が作り上げた闇の空間があった。


「シン。」


微々は愛おしそうにシンの名を呼ぶ。

「‥」

シンは何も答えない。

微々に焦点を合わせようとしない。


「―っ」


その様子に微々は悔しそうに唇を噛む。


「微々さま。」

「何よ!」


声をかけた博に噛み付くように言葉を返す。


が、博はそれにとくになんの感情も見せず、たんたんと言葉を紡いだ。

「あの件ですが、、」

「いいわ、進めておいて。あたしは場の用意をするわ。」


そう博にいい、

「シン、ここで待っててね」

シンにはまったく違った態度で接し、微々は踵をかえして外の闇の中に消える。


それを見送ってから博は洞窟の中に入っていこうとした。


「ちょっと待てよ」

その博を立ち塞がるようにしてとめる。


「あの件ってなんだよ」


「‥彩乃の件。」


しぶるかとおもったが、案外すらりと吐いて度肝を抜かれる。


「また微々は彩乃に何かするつもりでいるのかよ!」


「そうみたいだけど?」


「っ、よく平然といられるな!?彩乃が死ぬかもしれないんだぞ!?」

勢いよくいうが、博の表情は変わらない。


「‥よくいえるよね。あのとき、彩乃の力を奪おうとしたくせに。」


あのとき、とは、きっと儀式に失敗したあの日。


自分の愚かさで儀式なんてしてしまったんだ。


迷いがあるなら、

よくないと思っていたのなら

するべきじゃなかった。


今はそんな後悔に襲われている。


「確かに、そうだよな‥」


けど。それは昔のことだから。


「‥でも、オレはもう力なんかに頼らない。彩乃を失いたくなんてないから。だから、力をうばったりなんてしない。」


そう、決めたんだ。彩乃の力を奪おうとしたあの儀式の日。


「でも、お前は彩乃に毒をいれた。殺そうとしたのはお前じゃないのか!?」


「‥っ」


そういわれて博はシンから目を逸らす。


「僕は、、彩乃を、守りたかったんだ‥」


そんな事をいう。

「守りたいだなんて、彩乃を殺すような事しておきながら、よくいえるよな。」


シンは言葉を投げつける。


「ちがう!僕は‥彩乃の力が闇の世界の力になんかなったら、彩乃を悲しませてしまうと思って、、!」


だから、殺そうとした。


理屈は、通っているのかもしれない。


彩乃を守りたいという気持ちは同じようなものなのだろう。

変わらない。

シンが思っていることと、まったく変わらない。

だけど、その答えにたどり着くまでの過程が全く違う。

行き着く答えは同じなのに。

彩乃を守りたいということは。



「なんだかお前とは反りが合わなさそうだなぁ、、」


シンは独りごちる。


「僕もそう思ってたよ。」

博は冷淡にもそんな事をいう。



「で、彩乃の件ってのは、具体的に何をするんだ。」


「僕にはよくわからない。微々さまの指示通りに動いてるだけだから。」


指示通り、に。


「だけど、僕は彩乃の力を悪用しようとするのなら、邪魔をする。そのためにここにいるんだから」



博はそういって踵をかえして洞窟の中へと松明を持って進んでいった。


多分、博なりの持論なのだろう。

だけど、シンには理解しがたかった。

‥博の理屈はよくわかんねぇな。オレは、好きな奴の近くにいて守りたいって思うのに。



だけど、守りたいと思い続けていた彩乃がいない。


しかも、彩乃の笑顔を曇らせてしまうようなこともここでするのかもしれないのだ。


シンは、あまりの矛盾や、ばかばかしさに、笑う。



息を吸い込むと、夜の冷たい空気が肺に入り込む。



空には星が。

彩乃も、この星を城からみているんだろうか、とかロマンチックなことなんて思って、目を閉じた。


‥彩乃に、会えるような気がして。



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