21、親友
「「ごめん」」
離れていく2つの足音。
博とシン。
いや、待って!!
行かないで!!
彩乃は愛しい人の名前を無意識に呼んだ。
ーっ…!!
………………
起き上がったら、布団の上だった。
こんなこと前にもあったよなー、と思う。シンが刺客と戦ったあと。
倒れてしまった私を寝かせてくれた。
つ、と頬を涙が伝う。
だけど、あの時とは違う。
シンがここにいないし、涙もでなかった。
そのことに、涙があふれる。
「、シ、ンー…」
無意識に、
呼んだのはシンの名。
今ここにいて欲しいの、あなたに。
博のことは、
好きだった、、
でも今は、、
シンの事がすきなの、、
忘れてた記憶、全部、思い出したの。
シンとは初めてあったわけじゃなかったんだ。
いままで、私はシンに守られてたんだ…
何もしらずに、のうのうと生きてた私を
シンは助けてくれてた。
守役としても、悪魔としても。
いままでのことを思い出して、しらずしらず涙がこみあげる。
「彩乃…?」
声を押し殺して泣いていると、声をかけられる。
「起きたの、体、だいじょぶ?」
眠そうな未子。
みると布団をかぶって隣で丸まっていた。
いままで、ついていてくれたのだろうか。
「っうん、なん、とか」
少し、体が重いけれど、それは毒の後遺症だろう。
「泣いてたの‥?」
目をこする彩乃に近づく未子。
「…シンは」
「シンくんは、まだ帰ってきてないよ」
そうだ、彩乃の毒を抜く、という引き換えの条件でシンは微々のもとにいった。
「シ、ンは、もう…、帰ってこない、の。
私のせいで、微々って子のもとにいっちゃったよぉ、、!!」
もう会えないかもしれない、
やだよ、そんなの…っ
「彩乃、、」
ぐ、と涙を拭く。
未子にはちゃんといわなくちゃ。気づいたんだもん。
、、今更なんていわれてしまうかもしれないけれど。
「未子、私‥シンのこと好きだよ」
「‥知ってたよ」
「え」
まさか知ってた、だなんて。
自分でさえも気づかなかったのに。
さすが親友とでもいうべきか‥
「え、、そ、そう、なの?」
彩乃はあまりのことに動揺。
「大親友の彩乃のことだよ。わかるにきまってるじゃんか」
「未子、」
「彩乃、素直じゃないし、鈍感だからし。それに始めにあったとき、彩乃、、笑ってたから。」
彩乃が、あんなふうに笑えるなんて思わなかった。笑わせてくれるようなシンくんに、出会えてよかったね。
「で、ライバルとしてシンくんの事好きっていったら彩乃が、素直になるかなって思ったからいったんだよ。」
「〜っ!」
だから、あんな事いったんだ(汗
未子ってば意外に頭脳派なのね、、
「困らせてたらごめんね」
未子はそういってあやまる。
「そんな事ないよ!でも、‥未子とシンが腕、組んでたとき、なんだか嫌だっておもったの。。」
そういうと未子はあははっ、と声を立てて笑う。
「彩乃、そんなこと思ってたんだ」
「笑わないでよ〜」
彩乃は顔を赤く染めて手で覆う。
「あは、は」
笑いあったあと、未子は真剣な顔をした。
「未子?」
「‥っもう会えないなんて、そんなこと許さないからね」
未子はそんなことをいう。
けど、シンはじゃあな、と別れを告げたのだ。
またあえるなんていわなかった。
だから、もう‥
「会いにこないなら自分から会いに行けばいいの!」
未子は彩乃の手を握る。
その手は温かくて、勇気を与えてくれるような手で‥
そんな未子が、心強くて
「‥うん」
彩乃は頷いた。
「…彩乃、博と会った?」
いきなりの未子の質問だったが、こくっと頷く彩乃。
でも、なんで未子が知ってるのか、という目を向ける。
「彩乃を、あたしのところまで運んできてくれたから。
それに…博はまた来るっていってた」
「博、が…」
それは正直嫌だと思ってしまう。
剣を交じあわせなかったものの、命を狙われた。
抱きしめられたものの、毒を体にいれられた。
、かと思ったら、未子のもとまで彩乃を運んできた。
‥その真意がわからなくて怖い。
「博とは、何か話せた?」
「何も。でも、ごめんっていって‥刀、向けられた」
「刀!?」
その単語に未子は驚いて目を見開く。
「博が彩乃に刀をむけたの!?どうして‥!」
「理由は、よくわかんないけど、ごめんっていわれた。」
そういって俯いた彩乃を未子は抱きしめる。
「彩乃、、辛かったね」
ごめんね、彩乃のつらいときについていけなくて、、
ぎゅっと腕に力を込めた。
離さない。
絶対、、
―‥守るから。
シンくんがつくってくれた彩乃の笑顔、壊させなんてしないよ。




