18、奪わないで
彩乃の、、
一番、
忘れたかった記憶。
シンが消えたあの日。
彩乃は『あの場』にいた。
起こった事を覚えていたはずなのに、
その記憶が抜け落ちていた。
だけど、博の事だけは覚えていた。
博の事を覚えていることは、
あの時の事を思い出すことがいつかあるかもしれないということなのに。
それ程までに博を思っていたんだ、、
敵わないな、、
オレなんかが彩乃の事思い続けても、意味ないのかもしれない。
でも、
彩乃の側にいたいから
せめて、護ろう。
そう、思ってたんだ。
守役になった時から。
だけど、ごめんな、最後まで守れなくて。
「いきましょう、シン」
「ごめんな、彩乃、、」
シンは彩乃を抱きしめる。
もう二度と会えないかもしれないから、、
別れの言葉を。
「…じゃあな」
……………………………
街にでなければよかった、
(街まできてきれてありがとう)
微々に言われた言葉が耳の奥で反芻する。
未子は城に戻るにも戻れなくて、でも範囲外に出ることができなくて、、
だから彩乃のもとにいくこともできずに、悔しい思いだけを抱いて鳥かごの中を立ち往生していた。
「未子。」
名を呼ばれ、はっとして振り向く。
「な…んで、、」
未子はその場にいた人物に驚かされる。
「博…!」
なんで、今、帰ってくるの?!
今までどこにいたの!?
どうして、彩乃になんの連絡もしてくれなかったの!?
聞きたい事は山ほどあった。
だけど
博の腕に抱えている彩乃を見て、絶句する。
彩乃は青白い顔をしていた。
寝息をすやすやとたてているものの、眉を潜めて苦しそうな表情をしていた。
「彩乃、、!?何があったの?!」
未子は彩乃にかけよる。
「…」
博は何も答えず、ただ
「城に帰った方がいい」
とだけ告げ、彩乃を未子の座るベンチに横たえ、きた道を戻ろうとした。
。
帰すわけにはいかない、
聞かなければいけないことなどありすぎて。
「待ってよ!!」
博を呼び止め、逃げられないように博の着物の裾を握る。
「どうして彩乃と一緒にいたの?!」
そんな言葉さえも答えてはくれない。
「‥彩乃は大丈夫。でも安静にさせて」
以前とまったく変わらない博のたんたんとした言葉にいらつきを感じる未子。
こんなヤツに彩乃を奪われたくなんてない‥!
「っ、今更でてきて彩乃のこと、奪わないでよ!」
やっと、博がいなくても笑えるようになったのに!
シンくんがいたから…っ
「彩乃はシンくんのことが好きなのっ!」
「…」
博は、未子の袖を掴んだ手を振りほどく。
未子の言葉を避けるように。
「‥また、後で会おうね」
博は一瞬哀しそうに目を伏せ、逃げるように立ち去った。
……………………………
残された未子は、苦痛を浮かべ寝ている彩乃を街の人に送ってもらい、城へかえった。
城では、彩乃が倒れたという知らせをきいた当主、彩乃の父が心配そうに彩乃を待っていた。
「寺神、彩乃は無事か?!」
「‥はい、何があったかはわからなくて、、」
未子は口を濁す。
「そうか、、」
そういい、ふ、とあたりを見渡す。
「シンは?」
当主の言葉にやっと未子もシンがいないのに気づく。
「‥街で、はぐれてしまって、、シンくんは、彩乃を追っていったんだと思います。」
「では、彩乃を襲ったのは刺客であろう…」
当主は俯き顔に影を落とす。
彩乃に外出許可を出したのを悔やむように。
だけど当主も、未子と同じよいに、微々に暗示をかけられていたのだろう。
…何があったの?
彩乃、、
早く目覚めて‥っ




