17、決断
「っー!!?」
『あなたの大切な彩乃ちゃん壊してあげる』
そういって笑う微々。
「、なに…いってるんだよ」
微々は、何を考えてるんだ、、?!
はっとして水の中に落ちた手鏡を拾い上げる。
そこに映ったのは彩乃と博の姿。
彩乃は洞窟に倒れており、着物が水に濡れている。
その姿を無表情で博は見下ろしていた。
「…!?」
なんで、博が、彩乃を!?
倒れている彩乃は、苦しそうにゼェゼェと息を切らしていている。
「なんで、、」
「毒だよ。」
微々はそう告げる。
―毒、、
「博が毒をあのコにいれたの。あたしが命令したわけじゃないわ」
微々はふ、と溜息をつく。
「博の意思よ」
なんで、、!
彩乃が博を想い続けていたように
博もそうじゃなかったのか!?
「彩乃、、!」
シンは彩乃のもとに駆け出そうとする。
それをとめるように微々は言葉を投げかける。
「博はあたしと同じ意見を持ってるの」
そのことばにシン振り返らずに、走る。
「彩乃の力は毒よ」
微々は手鏡に目線をむける。
「あなたにとってもあたしにとっても、毒なのよ」
そう、使い方次第で毒になる。
だけど、その力は必要なの。
あたし達にとって。
…………………………………
「…っ」
水が冷たい、、
体がだるいよ、、
彩乃ははあはあと肩で息を切らす。
博は彩乃を見下ろし、落とした刀を拾う。
「彩乃…」
彩乃は、大きな、力を持ちすぎてるんだ。
だから、悪魔に命を狙われる。
悪魔に殺されるくらいなら、僕が楽にしてあげる。
その力を奪われて、よくない事に使われるくらいなら、、
片膝をついて水に濡れることも気にしずに、彩乃の顔を覗く博。
幼い頃の面影がある顔立ち。
人にすぐな気を許してしまうことも、あの頃と変わっていない。
そんな彩乃が、、好きだった。
だけど、、
「彩乃!!」
シンの声が遠くから聞こえた。
「どこにいるんだ!!」
洞窟内を駆けてくる足音。
シン…!
ここにいるよ、、!
声を出そうとしても、喉が痺れていて声が出せない。
…シン、か。
あいつには、渡したくない。
彩乃をあいつに渡すくらいなら、、
「彩乃、ごめんね…」
そういって博は彩乃の頭をなで、離れていく足音がきこえた。
「は、く…、」
なんでこんな…?
だけど、、
ごめん、って?
「彩乃!!」
倒れ込んでいる彩乃に駆け寄って、抱き抱えるシン。
「…っ」
彩乃の状態をみて顔を歪める。
この毒は、、
「その毒は、あたしにしか解せないわ。」
洞窟内に微々の声が響く。
現れたのは、幼そうな顔だちの女の子。
黒髪のツインテールに見覚えがある。。
(あの子、、)
シンとキスしてた子だ…
さっきは、はだけている着物だった。
今は
黒い水着のような薄着。胸の谷間がよくみえるような水着。
そして、、
背中に生える、、漆黒の、翼?
「微々…」
この子が微々!?
シンは、私の力を微々って子が狙ってるっていってた、、
私の力ってなに?
奪われたらだめなの?
だから、シンは守ってくれてるの?
「取引をしましょう?」
その言葉にシンは身構える。
「何を、だ」
「そのコの毒を抜く代わりに、、シン、あたしの元に来て?一緒に生きてよ」
そして、闇を作るの。
共に生きてゆける闇を、、
「お前といたら、きっともう二度と彩乃に会えなくなるだろう…?」
微々側にいたら、
彩乃を傷つけることになってしまうのだろう。
…博と同じように。
彩乃はひゅーひゅーと息を切らして何かいおうとしていた。
が、聞き取れない。
だけど、
もし、いかないでほしいなどとう言葉を聞いてしまったら、、
揺らいでしまう。
微々と共に行くことを、、
視点も定まっておらず、危険な状況。
死なせたくない。
だから、、
彩乃が、生きていてくれるならそれでいい。
そしたらもう彩乃に会えなくなるけれど。
闇の世界に戻ったら、もう二度と…
「一緒に、きて?」
苦渋の決断を迫られたが、、
「…わかった」
決めた答えは一つだった。
………………………
守役として出会ったあの日。
「父様、外出禁止ってなんでですかー!」
すぱーん、と襖を開けて部屋に入ってきた彩乃。
オレにも気付かないでスタスタと当主のもとへと向かっていく姿をみて、
変わってないな、と思った。
あの時、儀式のときに見た彩乃と。
「ネ、外出くらいしたっていーですよね?」
今にも父を張り倒しそうな勢いで襲っている、、
「姫、当主の言う通りに外出はお控えください」
オレは父親に詰寄る彩乃をとめに入る。
「ちょっと、どきなさいよ…!!」
その強くて、優しさの宿る瞳が、やっとオレを捕らえる。
異国からやってきたような身なりのオレをまじまじと見て、
「‥誰?」
と尋ねる彩乃。
「オレは、今日から姫サマ専属の守役をするシンです。よろしく姫サマ」
にこり、と笑う。
だけど彩乃はふて腐れたような顔しかしなくて。
「守役なんていらないわ」
なんてぼそりと呟く。
彩乃に近づくことは、オレ達、悪魔には悪影響。
実際に、体力が消耗していくのがわかる。
つらいけど、
それでもいいと思ったんだ。
ただ、オレが彩乃を守りたいと思って、この道を選んだんだから。




