16、仕向けられた再会
「彩乃ちゃん、会えたみたいよ」
ふ、と微笑む微々。
「10年ぶりの再会、、よかったわね」
「引き離したのはオレ達のようなもんだろ!?」
そう、
あの日、、
彩乃と博はあの桜の木の下にいた。
ある、目的の儀式が行われる場に、二人はいたのだ。
「儀式は上手くいかなかった。―…その、代償でしょ?」
微々は呆れたように言う。
「…儀式なんてしなけりゃよかったって思ってる。人を犠牲にしてまで、オレは王になりたくない!」
「そんなの、構わないわ!あなたがいなければだめなの、あのコの力が必要なの!!」
微々は叫ぶ。
「だから…その時の儀式を、もう一度、あたし達のためにするの!」
それは、シンのためにもなることなんだよ、、
……………………………
待って、博…!!
あれは博だった。
私が博の事を見間違えるはずない。
「…博」
博を追って、人気のない山の中の洞窟まで入ってきてしまっていた。
どこにいるのだろうか、と目を凝らしながら奥へと進んでいく。
ひやり、と足に冷たい感覚がし足を上げると、
履物が洞窟に溜まった冷えた水で濡れていた。
「冷た…」
後ろに飛びのくと、チャキ、と刃物を構える音がした。
驚いて振り向くと、それは彩乃の想い人、、博だった。
「博…?」
そう呼び掛けるが、
博は虚空を見つめるような灰色の瞳でただ彩乃を見つめ返すだけ。
そして手には刀を持ち、先端を彩乃に向けている。
「博、私だよ!彩乃、だよ?!」
そう叫ぶが博は動じない。
「…ごめん」
やっと漏らした一言はそんな言葉で、、
にわかに信じられなかったが、彩乃は悟る。
「私、を殺す、の…?」
そう問う彩乃の目には悲しみが溢れていた。
……………………………
「シン。」
微々はまるで恋人に言うように、優しく名を呼ぶ。
「あなたが守りたいのは私達の世界?それともあの子なの?」
手鏡の中に映っているのは彩乃と、
彩乃が想っていた博とかいう奴なのだろう。
‥どうして微々の仲間になっているのかはシンにもよくわからなかったが。
「俺は、誰かを不幸にすることで得られる幸せなんていらない」
そういわれ、微々はシンに詰め寄る。
「っ、どうして!?」
微々は動揺し、鏡を手から落としてしまう。
「あたしは、、シンしか要らないのに!!」
シンに、
幸せを掴んで欲しいだけなのに!
鏡は水の中に落ち、水しぶきが舞った。
ゆらりゆらりと鏡は底に舞落ち、2人の姿は見えなくなった。
…………………………
からんっ、
と糸が切れたように博は持っていた刀を落とした。
「博?!」
彩乃は自分の刀を放り投げ、博に駆け寄る。
「‥大丈夫?」
彩乃は博の顔を心配そうに覗き込む。
どうして?僕は君に、刀を向けたのに。
博は手をのばしてそのまま
彩乃を抱きしめる。
「‥っ!?」
彩乃は一瞬硬直したが、やがて博の腰に手を回し、抱き合った。
抱きしめられたぬくもりや暖かさでわかる。
この人は博なんだって。
私が、幼いときから会いたかった人。。
「博、好き…っ!」
今でも、博へのあの頃の想いは消えていない。
ずっと会いたくてたまらなかったのだ。
そういうと博は、一瞬苦しそうに彩乃を見、
しかし、直ぐに淡くほほ笑んで彩乃の額にキスを落とす。
首元や着物がはだけた胸元にも触れられるが、
それを彩乃は受け入れる。
月日が経っても同じ気持ちでいられたんだ、と信じて。
博に身体を預けてしまう。
…それが間違いだともしらないで。
「っやぁ!!」
ちくり、
と胸元に針の痛みのようなものを感じ、彩乃は声を上げる。
「いぁ…っ!」
胸元に付けられた、いや、刺されたような痛みが走る。
ドクドクと鼓動が早まると共に体中が痺れていき感覚を失う。
なに?
私、何をされたの?
…博、、
博の腕からずり落ちながら博に助けを求める手を伸ばしたが、
その手は何も掴むこともなく、空をきる。
博が鋭い針を手に持っているのが見えた。
ずるずると倒れ込み、彩乃は冷たい水溜まりに落ちる。
朦朧とする意識の中で彩乃は名を呼んだ。
無意識に、
”シン”、と。
…………………………
「あなたの大切な彩乃ちゃん、壊してあげる」
ふふっと口元をゆるめて微々は不気味に笑う。
あなたがあたしを選ばないというのなら…
どんな悪魔にでもなれるわ
だってあたしは、悪魔だもの。
次は、6日くらいにアップします。早めに上げれるようがんばります




