15、悪魔の企み
寺神 未子、、
外見年齢9歳・実年齢との差7歳、の
巫女です。
人にみえないものが時々見えちゃったりします☆
そんなわたくし、
この度・・
悪魔に人質に、されてしまいました。。
あーあーあー。。
なんて馬鹿なんでしょうねー。
彩乃にはいえないくらいにー
巫女のくせに、悪魔に呪文かけられて、、
彩乃が、命を狙われてることは知らなかったけど。
‥あぁ、だから守役なんてつけてたんだ。
教えてくれればよかったのに。
親友なんだから、、
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
未子にかけられた呪文は悪魔の力を使わなければ解けなさそうだった。
かけられた呪文は『一定の範囲でしか動けなくなる』というもの。
一定の範囲、というのはこの城と街。
まさに鳥かごに閉じ込められた小鳥のよう。
微々は、未子に邪魔されないようにとかけたのだろう。
そして同時に人質として利用するために。
簡単なものだが、シンは悪魔の力を使うことはできない。
使ってしまったら、、
闇に飲まれてしまう。
(呪文をかけたれたのが、彩乃だったら、、
使っちまってたかもな。)
自分の弱さに苦笑してしまう。
そう、
それだけ弱いのだ、彩乃には。
過去に犯した罪の深さと、
彩乃に対する想いがあるから。
………………………………
まるで何かに誘われるように
いかなきゃいけないと思った。
どうしてだろう、、
「彩乃、街にいきたい」
「街!」
久しぶりの響きに彩乃は目を輝かせる。
「だよね!お土産とか、あ、新しい服とか、見せたいものもあるし!!」
彩乃は息もつかせぬ勢いで言葉を紡ぐ。
「シーン!お願い!!行きたいよーっ」
彩乃の縋るような視線にうろたえる。
そりゃ、いつまでも城にいるのは退屈だ。
でも、身を案じるなら動くのはよくない。
得に街など死角が沢山ある。
それに、当主から外出禁止というお触れもでているのだ。
「だめだ」
だが、、
…いつまで、続くんだろう、この闘いは。
微々が満足するまで?
それは、オレが、、
「シーン!」
彩乃がシンの顔を覗き込む。
「いや…‥わかった、当主に聞いてみる。」
絶対無理だろうと思ったが、意外にも許可は軽々と下りた。
なんだか、おかしい…
罠、か?
微々なら人を操ることもたやすいのだろう。
当主を操ったのかもしれない、、
だとしたら、微々はなにかを仕掛けて来るつもりなのだろう。
停戦のままでも事は進まない。
だから、
相手をおびき出すのもいいかもしれないな…
部屋に帰り、彩乃に許可がおりたことを告げる。
「護身のために刀は持ってけよ」
「うん!未子、準備してこよう」
ぱっと表情を明るくして彩乃は未子を連れ、着替えをしに、部屋をでた。
……………………………
「久しぶりだぁー!」
パタパタと未子と手を繋いで走る彩乃。
「彩乃ー!あれ、あれ食べたい!」
「きゃー、おいしそう!」
きゃはきゃはとはしゃぐ二人の後をついていくシン。
はぐれないように、そして周囲に気を向けながら歩くのは大変だ。。
いきなり、目眩が襲ってきた。
ぐらり、と揺らいだと思ったらぐい、と腕を引かれた。
視界の端にみえたのは、はしゃぎながら走っていく彩乃と未子だった。
「未子、あれ見に行こ!」
彩乃たちはシンがいないのに気付かずに前へ進んでしまう。
彩乃に手を引かれ、屋台に目を惹かれ前を向いていなかったら、
だん、と壁にぶつかった。
「ーっ!?」
なんだ、なんだ、と前をみてみるが、なにもない。
「??」
手をあててみると何かにはじかれる。まるで見えない壁にぶつかったようだった。
「これが呪…?」
微々にかけられた呪文。シンがどんなものかは教えてくれたが、解いてはくれなかった。
行動範囲を制限される呪文だったようで、、
未子はこれ以上には進めない。
それに、ずっと手をつないでいたはずなのに、いつのまにか彩乃の手を離していた。
「ー!?」
彩乃の手を繋ぐ自分がいた。
(はぁあああ!?)
なんで、自分が!?
そんな変な分身とか能力持ってませんけど!!
驚いて、名を呼ぶ。
「彩乃!!!」
呼び戻さなきゃ!!
「いっちゃだめーー!」
(ふふ、ごめんねぇ、未子ちゃん)
微々とかいう悪魔の声が聞こえ、振り向くがどこにもいない。
(街まで来てくれてありがと。
…邪魔、しないでね☆)
なんとなく来たいと思って、口にしてしまった。
街にきたい、と。
どうしてきてしまったんだろう、、
「ぅ、」
利用されたことに、
「ぅわーん、、!!」
未子は鳥かごの中の鳥のように泣く。
………………………………
ふ、と手が離れるのがわかった。
「え、どこいったの?」
未子、シン、と名を呼びつつ振り向く。
と、
建物の隅で、
シンがツインテールの女の子を抱いているのがみえた。
しかも女の子の着物は、はだけている。
どんな着方だよ、とつっこみたくなるほどに。
そして女の子はシンに腕をからめるようにして、、
つま先だちをしてキスをしていた。
つまり、キスシーンを目撃してしまった…!
「っ、なにっや、やってんのよ、あんたはー!」
なんでそういう事ができるんだ。
彩乃はその場から逃げるように駆けていく。
ここは沢山知っている人がいる街だから、安心してた。
だから、シンから離れてしまった、
契約であったとしても、私にキスしたくせにーーっ、、!
契約のキスさえも軽々しいものだったのー!?
走りながら、
そんな風に思ってしまう。
そりゃ、なんの意味もない契約のためのキスだったかもしれないけれど、、
―っ、
って、私!!
何をむきになってるのー!?
だ、
大体、私は博の事が、好きなのに…
10年も、博の事を思い続けてたの。
あの日、、
うっすらとしか思いだせないが、あの桜の木の下でシンと私は別れを告げたのだ。
理由はなんでか思い出せないけど、、
それからは音信不通。
だからどこにいるのか何してるかもわからない。
だから、待ち続けるの。
ふ、と視界の隅に何かを捕らえる。
あれは、、博?!
銀髪の髪、青い瞳、あの後ろ姿、、
私が覚えているのは10年も前の博だけど、
成長して
背が伸びたって、
声が変わったって、
見間違えるはずがないんだ。
「待って、博!!」
角を曲がる博を追い掛ける。
姫が命を狙われていることも、
危ない橋を渡ろうとしていることも、
何もしらない
街の人は今日も姫は元気だな、と駆けていく姫を暖かい目で見送った。
安心は、逆手になって現れた
…………………………
「なんだよ、お前…!」
シンは彩乃が駆けていくのを目で追う事しかできなくて、、
シンは寄り掛かってきていた少女を突き放す。
キス、なんてしてなかった。寸止めである。
大体、シンはよろけて転びそうになっていた少女を支えようと手を伸ばしただけなのだ。
だが少女は、そのままシンに抱き着き、そして、キスまでもしようとした。
「久しぶりだね、シン」
少女はシンの名を呼んで、笑う。
その声に聞き覚えのあるシンは身構える。
「っ、微々…!」
ふふ、と微々は微笑みを向ける。
「どうしてシンはいつも…逃げるの?」
強い眼差しをむけてくる微々。
シンは、その眼差しから逃れられなくなる。
ちゃんと向き合わなくちゃいけないような気にさせられる瞳だから。
「逃げないでよ〜っ!シンはあたしが幸せにしてあげるから…」
「やっぱり、彩乃に手だしてるのはお前か」
「あは★当たり前よぉ」
いたずらっ子のように、に、と笑う。
「あのコの力、あたし達にとって必要でしょ?」
「オレは要らない!」
シンは、間髪いれず答える。
「あいつを死なせてまで、力が欲しいと思わないっ!だから護る!力なんていらないから、あいつに生きて欲しいから、オレは…っ」
「…黙ってよ」
微々はシンを黙らすために、口を塞ごうと顔を近づけた。
が、シンはふい、と顔をそらす。
「…契約のキス、したでしょ?
‥なんで、あの子とはするくせに、あたしとはしないの?」
たかがキスなのに、、
と呟く。
「契約のキスだろうが普通のキスだろうが、キスは好きなヤツとするもんだ」
微々の目が潤む。
「シンは、あたしのこと、好きじゃないの?」
あたしはこんなにもシンの事が好きなのに。
こんなに、愛してるといっているのに
一瞬目を伏せた微々だが、口元をニヤリと緩めた。
だけど、貴方はあたしを好きになる。
これは悪魔である貴方の定めなの。
だから、もう、逃がさない。
もう二度とあたしから逃がさないわ。
逃げるなんて、、
そんなこと絶対許さない。
だから、
「博は、あたしのとこにいるよ
」
切り札をだそう。
とっておきのカードを。
「‥っ」
それは知っている。
あの悪夢のような現場にいたのだから。
そして、あの二人を引き離した当事者でも有り得るのだから、、
「彩乃、街に行きたい」
未子がいっていた言葉を微々は復唱した。
「未子ちゃんにお願いしたの、街に出るようにって」
「‥未子を?!」
お願い、というより呪で操ったのだろう。
…利用された。
彩乃の親友さえも‥
シンは、ぐ、と下唇を噛む。
微々は無表情でその様子を見つめていた。
パタパタとコウモリのような黒い紙が降ってきて、微々の手の平に落ちる。
「彩乃ちゃん、会えたみたいよ?」
誰に、
と聞くまでもない。
博に決まっている‥。
悪魔が、微笑んだ。




