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11、敵



由衣が、敵だった。


その事実は

彩乃にとっては衝撃的なものだった。



ガチャンガチャンと刃物同士がぶつかり合う音がひびく。


まるで、あの刺客が現れたときのように、、



シンと由衣が刀を交えあう。


由衣は刺客なんかより全然早い。

シンと互角のような機敏な動き、、


由衣は一瞬切っ先を反らした。


シンはその動きに惑わされ、由衣の刀を腹に受けてしまう。


「ぅ…」


シンはそのまま倒れ込む。


「口ほどにもないじゃないですか」


シンが倒れている畳みは真っ赤な血で染まる。


「い、やああああああ!!!」


その光景に彩乃は絶叫する。



「シン、シン、しぃんんーー!!」


シンはぴくりと動いて

「逃げろ…」

と振り絞るように声をだした。


それでも彩乃は動かない。


逃げ出したらいけないように思ったから。


「逃げないんですか」


叫ぶ彩乃を見下ろすように由衣はいう。


からん、と刀を彩乃に放ってよこす。


「では戦いましょう?」

にこりと挑戦的に笑う由衣。


「…っ」


刀を拾いあげるが、重い。

人を切る罪の重さと、人を守る重さを兼ね備えているような、、



「‥あなたに、できるんですか?」



ふっ、と失笑を漏らして由衣は問う。


「友達だと信頼していた私を殺せるんですか?」


そう、由衣とは一瞬だとしても、同じ時間を過ごし、笑いあった。


「‥殺せないでしょう?お姫様ぁあ?」


由衣は嫌らしく、くすくすと笑う。



「―見くびらないで!!!!!」


その笑いをとめるように彩乃は高く叫んだ。

重い刀の切っ先を向ける。



「私は、宮都坂 彩乃よ!」




そう、私は一国の姫。

守るべき街の人達がいて、幸せにする義務がある。


だから、強くなくてはいけないの!



だから、、

大切な物を守るためなら、立ち塞がる相手に刃を向けられる。



だから、戦うの…!



「‥手、震えているようですけど?」


くすり、と笑う由衣。


そんな由衣に睨むように目を向ける。



ぐっ、と刀を構える。


手が震えるのをごまかすように。


す、と彩乃は動き出す。


「やぁ!」

掛け声と共に攻める。


一瞬の間もあたえず、相手の虚をつく技を繰り出す。


そして、バランスを崩した相手を、つく!


「な…っ!」


上手く技をだせたと思ったのに、由衣はよけた。


「そんな技、通用しないのです」


由衣はそういいつつ、彩乃に刀を振り下ろす。


由衣のそんな行動を読めていなかった彩乃は目をつむる事しかできなかった、、


カキン!


と、由衣の振り下ろした刀を何かが受け止める音がした。


目を開けてみると、シンが由衣の刀を受け止めていた。


「シン…!!」


さっきまでそこで倒れていたはずのシンが

こんなひどい怪我をしてまで守ってくれたシン。


「バカヤロー、無茶してんじゃねーよ」


震えている彩乃の手を握り、刀を握り直させる。


無茶しているのはシンの方。


立っているのもやっとの状態なのに、シンは彩乃を守るように立つ。


「どうして、、?」


私はあなたを信用できなかったのに。


そんな彩乃の疑問にも笑って答える。


「オレはお前の守り役だからな」


そういって由衣のほうに向き直る。


「さっきはよくもやってくれたなぁ」


じゃき、と刀を由衣に向ける。


「3倍返しでくれてやる」


そういい、シンは由衣に刀をつきだし、容赦なく切り付けた。


が、由衣も甘くない。


シンが怪我を負っているところをわざと狙ってくる。



やはりシンの方が不利かと思われた。

が、突然、

由衣が動かなくなる。


「な‥っ!」


まるで足を床に縫い付けたかのように、その場で止まってしまっていた。


「闇に帰れ!」


シンが叫ぶと

かっ、と由衣の足下に描いてあった赤い印が光る。


「ひ、やぁああぁあ!」


由衣は叫ぶ。



「微々に伝えとけ!オレはお前の思い通りにはならねえ、って」


ふ、と由衣の叫び声が聞こえなくなり、姿と共に印が消えていた。




「…彩乃、大丈夫か?」


「…っ」


彩乃は俯いたまま声を漏らした。

相手は殺す気でやってきたのだ。


致命傷ではなかったものの、もし数センチでもずれていたら、、


死んでたかもしれない



怖い、、怖くてたまらない…




「え、彩乃…??」


シンは俯いた彩乃がぽろぼろと泣いているのに気付いた。


そんな彩乃の姿ににわたわたと慌てるシン。


「っ、馬鹿!!」


彩乃は、シンを睨みつけて怒鳴った。


「わ、私、がぁ、どれだけ心配したと、思ってんのよ、ぉ…!」


「ぇ、その、ごめん…?」


なだめようと肩を抱こうとするシン。

が、


ばちんっ


と彩乃はシンの手を叩き落とす。


「ふざけないでよっ、馬鹿ぁあ!

馴れ馴れしく触って来ないでよ、ばかぁ!


わた、私のせいで、シンが、、死ぬのかと思った!!

怖かった!

死んだら、ゃ、だよぉお…っ」



人が死ぬのは怖い。


もう二度と会えなくなってしまうということなのだから。


博は、

私の大好きな博は、

行方不明なだけで、、

また会えるのだと信じているけど、、




私のためなんかに誰も、血を流して欲しくなんかない…

誰も、死なないでよ…!



「ごめん…」


シンは彩乃の言葉にそう応える。



―…苦しかった。


信じていた由衣に裏切られ、

敵だと告げられたときよりも、

とても。。



シンが死ぬかと思ったときのほうが、余程苦しかった……




「生きてて、よかった…」


彩乃はシンが今ここにいる温もりを確かめるかのように、

シンに手をのばし、しがみついた。





本当は戦いなんてしたくない。

でも、私は命を狙わている身。


シンは初めに来た刺客のときもしっているようなそぶりを見せていた。


顔を変えたとかなんとか話していたし、由衣の事も知っているみたいだった。



シンは何かを知っているのだろうか、、


「シン、私はどうして狙われてるの?」



シンは驚いた顔をした。


「………」


少しでも、

何でもいいから、答えてよ、、




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