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10、油断


由衣の笑みを見て確信した。


敵だ、と。


でも彩乃は由衣のことを随分信頼してしまっていた。


今も由衣と共にでていってしまった。


早めに気付いていれは、由衣に対する態度も違っていたのだろう。


シンはとりあえず、彩乃達の後をつけることにした。



……………………………



彩乃達は庭に来ていた。


「由衣、大丈夫?」


顔色の悪い由衣を心配する彩乃。


「は、はい。」


「ごめんね、シンが‥」


「…正直、あんな乱暴な方だと思っていませんでした、、」


くすん、と由衣が鼻声をあげる。


本当に、どうしたというのだろう。

あんなナンパなヤツが女の子を虐めるなんて。


…………………


「シン様、そんなところでどうなさったんです?」


窓から覗き込むように彩乃達を見張っていると、

通りすがりの女官に声をかけられる。


「そんなに由衣のことが気になるんですか?」


不服そうな声をあげる。


「今日も朝からお聞きになっていたし、、あんな子の、どこがいいんですかぁー?」


「いいってわけじゃねーよ」


のろけですか、と女官はふん、と鼻息をならしてシンを置いてその場を去った。



そう、シンは由衣のことを聞き出していたのだ。

けしてナンパなどではなく、、


聞き出せたことは


・茶道を習いに2ヶ月程前からお茶の先生に弟子入りしていること、


・薬味を習ってたらしいということ


・気が弱いということ


だった。


気が弱いというのは多分彩乃に取り込むための演技だろう。


弟子として入ったのが2ヵ月前。ごく最近のことのようだ。


2ヶ月前でも微々の手を回っていると考えても打倒だろう。




とにかく彩乃と二人きりにさせとくのはマズイ。


なんとか彩乃を連れ出さねば。



…………


夜。

彩乃が部屋に一人で戻ってきた。


「あんな奴となかよくしてんじゃねーよ」


部屋に入った途端、そんなことをいわれ、彩乃はかちんときて反抗する。


「なんで由衣のことを悪く言うのよ!」


シンは言葉に詰まる。


まさか敵ともいえない。

でもいずればれることなら今言っておいた方がいいんだろうか、、


一拍間を置いて、言い放つ。


「お前のことを、思ってだよ…!」


(なんてキザな事をいうやつなんだ…!)


彩乃は目を見開き、背ける。


「…………っ」



自分の友や信頼している人を悪く言うのは許せない。



今は、シンにいわれている。


―…私はシンを信頼していないわけじゃないけれど、、、



つまりは

由衣かシン、どちらをとるか、という問題だった。



「私を思って、なんて。

…シンが由衣を悪くいう理由がわからないの。

由衣は大切な友なのに。由衣が私に危害を加えるっていう、の…?」


そこまでいって彩乃はハッと気づく。


シンがいいたい事に。


「由衣が、、敵だっていうの…?!」


「‥可能性はあるんだ」


そんな、と彩乃は驚きの声をもらす。


本当は敵だと確信していたが、彩乃のショックを和らげるためにいう。


「だから、賭けをしてくれないか?あいつが敵だとの確信を得るために。」


相手の本性をおびき出したところで打ち負かす。



彩乃は由衣を信じたくて、

シンのいう通りに賭けをすることにした。




…………………………



「あ、彩乃様…ぉはようございます‥」


彩乃と出会うと、深々と頭を下げる。


「おはよう」


なるべくいつも道りに接するように心掛ける。


「今日も、お茶、頼めるかしら?」


「はい、よろこんで!」


由衣は微笑む。

その笑みをみて、

由衣を騙そうとしている事に胸が痛む。



シンの作戦は、

今日のお茶会で由衣を呼びだし、シンは隠れて、彩乃を襲わないか様子を伺う事だった。


そして、一つだけ。

出された抹茶には口をつけるな、と言われた。



……………………………




「あれ、シン様は‥?」


「あー。うん、なんか調べたい事あるとかで」


そんなのは嘘だった。


だけど由衣はそれに反応する。


「調べたいこと、、?

もしかして、私の事‥ですか?」


まさか、そんな言葉が出てくるとは思わなかったから彩乃は目を丸くする。


「え、どうして由衣の事になるのよ」


自分のことだと思うということは、何かしら自覚があるからなのだろうか。


「あの、私、シン様が私の事を尋ねているのを聞いてしまって、、」


そういい俯く由衣。



「私、何か疑われてるんですか、、?」


「………いや、違うよ」


本当は、

疑いたくなんてないの。。


かちゃかちゃとお茶を点てる音が静まった部屋の中に響く。


「彩乃様は、私のこと、その、、信じて下さいますよね…」


いつものように、由衣は器に抹茶をよそって彩乃に手渡す。


まるで、飲めと促されているようで、、



「…いただきます」


シンには飲むな、といわれていた。

が、

由衣の悲しそうな顔をみたら、、


彩乃は器を一度回し、口をつける、、


「飲むなっつっただろうがー!」


刀で襖を突き破ってシンは声を荒げ、でてきた。


手裏剣を由衣に投げつける。


(はー!?何してんのよ!)


彩乃はいきなりのことに手裏剣の行方を目で追うことしか出来なかった。


その手裏剣は由衣の元に確実に向かっていく。


危ない、と思ったが、由衣は動じずに手で受け止めた。


「…!!」

その動作があまりにも滑らかで、、


「危ないじゃない。」


に、と微笑んで由衣はそんな事をいう。


「姫、離れろ!」


そういい、シンは駆けだし、間合いを詰めて由衣に刀を振り下ろす。

由衣はシンの刀をひょい、と避ける。


「いつかは彩乃様を手にかけなければ、と思っていたけれど、、

まさか、こんな素晴らしい場を用意していただけるとは、ね」



かすり傷一つしていない様子。



「やっと本性表しやがったな!!」


にやり、と笑う由衣。


「あなたも、敬語はどうしたんです?」


いつものおどおどした感じはなく、凜とした姿でそこに立っている由衣はまるで別人のように思った。



「本当は貴方を倒すなと微々様からいわれているんですけど、、」

すら、と腰に付けていた刀を持ち、構える。


「私の邪魔をするのでしたら、しょうがないですよね」



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