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呆気ない幕切れ

王宮に着くと、部屋に通された。

おそらく来賓用の宿泊部屋で、メイドも付けてもらえた。とはいえ、メイド兼見張りだろうが。


「サインする気になったらメイドに声をかけたまえ。水は自由に飲んでもいい。食べ物はないがな!」

高笑いを残して王太子は去っていった。

なるほど、兵糧攻めをする気らしい。

とても疲れていたが、この部屋では眠るのも躊躇われる。寝込みを襲われるのは絶対に嫌だ。

なんとかして出なければ。

しかしメイドの目もある。


ひとまず部屋をくまなく見てみることにした。

窓には鉄格子。

トイレとお風呂は備え付けられている。

ドアにはメイドが1人微動だにせず立っている。

どうにも抜け出せそうにはない。


数日我慢するしかないのか。

きっとお父様が抗議しに来るに違いない。

それまでの辛抱だ。

フェリシアは、ひどく眠たい瞳を必死に瞑らないように努力した。


そうして、おそらく、半日ほど経っただろうか。



バタン!

扉が強く開けられる。

一瞬、助けか?と思ったが、入ってきたのは王太子だった。


「フェリシア!結婚するぞ!」


「っ…?!私はまだサインする気なんかありません!」


「そんなの必要なくなった…なぜなら、僕が王だからだ!すべて僕が決める!」

「王様がそんなこと許されるはずが…」

「王は死んだ、たった今な!」


王太子は狂気の表情で叫んだ。

その手は、よくよく見ると真っ赤に染まっている。


「ひっ…?! まさか、まさか…」


「母上も賛成してくれたんだ!あのジジィがさっさと王位を譲らないから…」

血まみれの手で、王太子が距離を詰めてくる。


「いやっ!近づかないで!」


じりじりと部屋の隅に追い詰められた。


「ホラ…こっちに来い…」


王太子が下卑た笑いを浮かべ、近づいてくる。

フェリシアはぎゅっと目をつぶった。

その時。



バタン!

と激しくドアの開く音がした。


「王太子殿下!大変です!」

誰かが部屋に入ってきたようだ。どうやら王太子付きの兵士のようだった。


「なんだ!僕は忙しい!それに、王太子ではなく王だ!」


「隣国の…ゼファー皇国の兵が…城を取り囲んでおります!」

「なんだと!?」

「夜闇にまぎれて、国内に侵入していたようです…」

「嘘だろ・・・なんでこんな時にっ」


「教えてやろうか?」

聞き覚えのある声がした。

靴のカツカツという音を立てて、軍服に身を包んだ男が現れる。


やわらかな茶色の髪、紫の瞳。

アイザックだった。


その軍服は、見慣れない色だった。

「その色は…!貴様…スパイだったのかっ」

「スパイではありません。少し他国にパイプがあるだけの商人ですよ。…捕らえろ」

アイザックが手を挙げると、アイザックと同じ色の軍服を着た兵士が部屋に雪崩れ込んできた。

王太子が後ろ手にされ、縄をかけられる。

どこかで「私は次期王妃よ!無礼な!」という声が聞こえたので、きっとアリアも捕まっているんだろう。


「ジェミール・フェン・アースグラヴィア。国王エドガー・アースグラヴィア殺害ならびに反逆の罪で逮捕する」

兵士の1人が逮捕状を読み上げる。


「王?!国王は俺だぞ!前王は死んだ!」

「前王が死んだからと言って、教会で洗礼を受けずに王になれるはずがないだろう。そんなことも知らんとは、本当にボンクラだったんだな」

アイザックが呆れ顔で王太子の顔を眺める。


「ま、待て!…そうだ!その逮捕状は偽物だろう?!こんな短時間で用意できるはずが…」


アイザックが逮捕状を、王太子に見えるようにひっくり返す。

そこには確かに、皇帝のサインがあった。

「ゼファー…皇帝…だと…」

王太子から力が抜け、膝から崩れ落ちた。




王太子や側近たちが部屋から連行され、部屋の中にはアイザックとフェリシアだけになっていた。

さきほどの喧騒が嘘のようで、痛いくらい静かだ。


「…フェリシア」

覚悟を決めたように、難しい顔をしてアイザックが近づいてくる。

フェリシアは反射的に頭を下げた。


「ごめ…ごめんなさい…」


結局、また迷惑をかけた。一人で勝手に判断して、行動して。


一歩間違えれば、王太子の手にかかって死んでいたかもしれない。

アイザックの顔を見るのも、声を聞くのも、怖かった。

すぅ、とアイザックが息を飲む音が聞こえた。



「よく頑張ったな」

いつものように、頭をぽんぽんとなでられた。

アイザックはなぜこんなに優しくしてくれるんだろう。

どうしようもない自分に。


「あんたのおかげで、反乱分子を掃除できたよ」

「反乱分子って…」

「王太子のことだよ。王太子が、アリアと組んでクーデターを起こす準備をしているという報告が上がってたんだ。まさかそのトリガーがフェリシアになるとは思っていなかったけどな」


アイザックは、いつものようににやりと笑った。


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