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襲来

アイザックと顔を合わせる気になれず、今日は用事があるからとフェリシアは早めに帰宅することにした。

アイザックは図書室で商会の残務処理をするので、ちょうどいいと言っていた。


ミーアと二人きりの馬車は、なんだかいつもより広く感じる。いつの間にか、アイザックのいる日々にすっかり慣れてしまっていた自分に気づく。


まだまだ一緒にいたいと言ったら、アイザックはどんな顔をするんだろうか。

笑顔で延長料金を請求するだろうか。それとも、あんたみたいな女とはこれ以上一緒にいたくない、と冷たい目で見られるだろうか。どちらも想像するだけで少し憂鬱だ。


そうするうちに、馬車の車輪がゆっくりと止まった。馬車の外で数人の男の声がする。


「フェリシアはどこだ!フェリシアを出せ!」


自分の名前が聞こえ、何事か…と思い馬車の窓から、そっと外を覗き見た。

侯爵家の屋敷の前に人だかりができていた。自宅の衛兵と、なにやら黒と赤でできた制服を着た男たちが揉めている。

「お約束もないのに、お屋敷に入れるわけには参りません!」

執事が応戦しているようだ。

「貴様!王家の人間の言うことが聞けぬか!」


…王家?

嫌な予感がして、目を凝らしてみる。

制服を着た男たちの先頭に、波打つ金髪の頭が見えた。あ、あれは…。


「我は王太子であるぞ!」


やっぱり!!!!

御者が気を利かせたのか、馬車が迂回しようと向きを変えた、が、遅かった。


「王太子殿下! あそこに侯爵家の馬車がございます!」

「なに! あれにフェリシアが乗っておるのでは?」


馬が方向転換しようとするうちに、複数の足跡に囲まれてしまった。

「困ります! おやめください!」

御者の静止も聞かず、ドアノブが乱暴にガチャガチャと鳴る。


「うるさい! フェリシア! 出てこい!」

王太子ががなる声が聞こえ続けている。さすがにこの中を出ていく勇気はない。


「ミーア…どうしましょう…」

「お父上が戻られるまで待つしかないのでは…とにかく、開けたら最後な気がします」


しかし父が戻るまであと数時間はあるだろう。王太子が諦めるまでの根比べだ。

だれか…!

祈るような気持ちで手をくんだ、その時。




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